ありがとう。個人的にはアルバム「Wuz」を2ndアルバムとしてとらえているから、これは個人的な視点からすると3枚目なんだ。もちろん作り終えてとてもうれしく思っているし、とくに店頭で商品を見たときにはホントに作り終えたんだ!と実感したよ。でも今、実際別の仕事がはじまろうとしているんだよね。音楽制作は仕事でもあり喜びでもあるけど、そのあとには宣伝とかアートワークの制作やPV制作など、僕があまり得意としない他の仕事があるんだよね。
アルバム「Wuz」のあと、僕はサンプリングに飽きてしまったんだ。サンプルをつなげるだけでなく、音楽を作曲する別の方法を見つけたいと思った。だからベースを出してきて、ピアノ「Yamaha CP70」とアコギを買って、歌という視点から音楽について考えてみた。知っていると思うけど、僕はもともとAIR(エール)のNicolas Godin(ニコラ・ゴダン)とJ.B. Dubnckel(ジャン=ブノワ・ダンケル)と一緒にOrange(オレンジ)というバンドでベースを弾いていたから、こういった種類の音楽の制作は僕にとって近寄りがたいものではなかった。だからすぐに歌詞とメロディーが浮かびはじめたんだ。ヴォコーダーを使っているけれども、1stアルバムの中の「With you, Ralph & Kathy」という曲でも歌っているしね。当初はシンガーを雇って歌ってもらおうと思っていたけれど、デモを作っているうちに歌うことが楽しくなって、自分で歌って完成させようと思うようになっていったんだ。
何かいいタイトルを考えようとして思いついたのは「Mutations」だけだった。でもこれだとBeckのアルバムのタイトルだから……。そこで本盤を共作したエティエンヌ・ドゥ・クレシーがこのアイディアをくれた。シンガーとしては1stアルバムになるし、これまで以上に自分らしい作品に思えたから、これがいいタイトルだと思ったんだ。
僕はProtoolsを使っているんだけど、コンピューターのハードディスクにファイルを最初に保存したのは2003年のこと。だからかなり長い時間をかけたと思うよ。まぁその間に他のことを同時にやってたけどね。DJとしてツアーをしたり、エティエンヌ・ドゥ・クレシーと一緒に「Super discount 2」のライブツアーもした。それにほかのアーティストに提供するリミックスや、BTKやKitsune、PIASからリリースした12インチへの新曲提供、Darkelのアルバムのマスタリング、自分のレーベル「Go 4music」の設立なんかもあったし。その中であとでお気に入りの曲を選曲できるよう本盤のために多くの曲を作った。だからアルバムが完成したのは2005年後半で、そのあとレーベルの契約先を探すのに時間をかけたんだ。
一番気に入っている曲はシングルカットした「Brain Leech」。これは発売日からたった数週間前、僕のステージ・ギタリストの25 Hours A Dayによってプロデュースされたもので、最後に作った曲だから今でもとても新鮮に思えるんだ。レコーディング中の思い出深い出来事は、エティエンヌ・ドゥ・クレシーと一緒に「Nasty Wish」の歌い方を見つけた時かな。あらゆる歌い方を模索したけれど、いいものが見つからなかった。そこで僕がエティエンヌに「声のなかの何かを打ち破れるようなシャウトをしてみるよ。その後でまた別のテイクをしてみよう。」と言ったら、彼は「違うよアレックス。曲をシャウトするのではなく、歌詞に合わせて!」と言った。その3分後、僕は自分流の歌い方を理解することが出来たけど、それは想像していたよりもはるかに高い音程だった。エティエンヌは「そうだよ、やっとつかんだな!デヴィッド・バーンがマイクの後ろに立っているのかと思ったよ!」と言った。ちなみにこのおかげで、ほとんどの曲のインストを取り直す作業が後で待っていたんだけどね。この歌い方に合う高音での取り直し。それが歌手としての「アレックス・ゴファー」の誕生だったんだ。
あらゆるスタイルのあらゆるアーティストから影響を受けたよ。George ClintonからKraftwerk、New OrderからSly StoneとTalking Heads。最近気に入っているのはBECKとCornelius。BECKとCorneliusに関していえば、スタイルやジャンルを考えることなく自由に音楽を作っていて、1番大切なのはただいい曲を作ることだけと考えている。僕はそういう風にひたすらクリエイティブになっている彼らが好きだね。
マーケティングの重要性が、今まで以上に高まっている事実に驚いているよ。昔は才能には成功がついてまわったものだよね。でも今の時代は、スーパースターを生み出したかったらマーケティングに頼るしかないんだ。Prince、David Bowie、Jimi Hendrix、The Beatlesはもう輩出されない。実際そういった才能は存在するけれど、メジャーからのサポートは受けず、インディーアーティストとして存在するしかない。天才にだって制作費、ミュージシャン代、その他いろいろ必要だ。だからこういった事実を僕は残念に思っている。今メジャー会社がサポートしているのはブリトニー・スピアーズとシャキーラ。だから今後の音楽シーンは、インディーにあると僕は考えているし、活動の場所は「My space」のようなところだと思う。
日本には本物の音楽文化があるし、あらゆる趣向性が存在する。僕はCorneliusとFantastic Plastic Machineの大ファンだし、彼らは音楽を新しい次元に導くクリエイティブなアーティストだと思っている。
2度しか来日したことなかったし、東京と札幌しか行ったことがないけれど、クレイジーな建築物と生命の躍動感のつまった東京には魅了されてるよ。今回の来日には妻も同伴したいと思っていたところなんだ。恋人たちのための街はパリだけじゃない!日本人の好きなところは、日本人が何かをすると必ず上手く作るし、やるとなったらとことんまでやるところ!
つい最近Freelance HellraiserとTocadiscoのためにリミックスを作り終わったところで、今は新しいシングル「The Game」と「Camilla」の2枚のリリース準備をしながら、アルバムの宣伝のためにツアー中だよ。そのあとは次の「Super discount 3」の制作をエティエンヌと始めようと思っているところなんだ。
最新アルバム「Alex Gopher」よろしく!!
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