INTERVIEWS

ageHa 17周年パーティ スペシャルインタビューvol.2 -KEN ISHII-

  ageHaがこの年末に17周年を迎える。記念すべきこのパーティに向けて、ageHaのプロデューサーである小張氏が出演アーティストと対談形式のインタビュー行う3回シリーズの第2弾。
 今回はオーガナイザー「天竺」によるテクノフロアのゲストであり、11月27日に13年ぶりとなるオリジナルアルバム『Möbius Strip(メビウス・ストリップ)』の発売を控えたKEN ISHII氏へのインタビューをお届けします。
これまでパーティー以外では話をする機会がほぼなかったという両氏であるが、この対談を通して、お互いのバックグラウンドについて振り返り、今のシーンの現状、パーティメイクについて、DJ/アーティスト、そしてオーガナイザーのそれぞれの立場で語り合った。


小張 : 僕のバックグラウンド、そして、今回のゲストAlpha Protalと世界的なサイトランスのシーンについてはざっとお伝えできたと思うんですが、KENさん自身の音楽的な初期衝動はどの辺にあったのか?教えてもらえますか?
 
KEN ISHII : 札幌で生まれたんだけど、育ったのは横浜で、中学校から東京の学校に通うようになって。小いさい頃に好きだった音楽はYMOとか、テクノポップとかで、それがだんだんヨーロッパとかアメリカのニューウェーブに行って、更に過去に遡っていく形でインダストリアルとかヘビーなものや、ロックに根ざしたエレクトロミュージックみたいなものを聞いていたよ。
それが高校生とか大学生になるぐらいの時に、所謂ハウスとかテクノというのが出てきて、自分的には「ついに後追いじゃなくて、同時代の音楽が出てきたな」っていう感じだったんだよね。しかも「ダンス」とか「クラブ」とか、それ自体が新しい要素だったから・・・。
それまでの音楽って一方的に与えられて、お客として観て「オー!!」ってなるぐらいのものだったのが、「自分も参加できる感じ」というのがともかく良いなと思って。「これだったら自分でもできるんじゃないか?」と思ったんだよね。例えばYMOとかクラフトワークだったら真似できないと思うけど、ジョイ・ベルトラムだったら真似できそうな気がする。みたいなね(笑)。ほんと、そういう感覚だった(笑)。
 そこからまずは自分で機材を買って、曲作りもそうだし、DJの練習もクラブ行き始めたのもほぼ同時。高校生の終わりぐらいから、本格的に始めたのは大学生になってからだけどね。ちょうど80年代の終わりから、90年にかけての頃だね。
 
小張 : 自分の原点は代々木公園のゲリラレイヴだったわけなんですが、KENさんはやっぱりクラブですか?
 
KEN ISHII : そうだね、クラブ。 一番よく行ってた箱で言えばCAVE。聞いたことあるだろうけど。 それこそ今回のアニバーサリーに出るKUDOさんがレジデントで、テクノを中心として、トランスもかけていたし、デトロイトテクノをかければ、ハウスもかけるみたいな。一晩で全部紹介してくれる。みたいな感じだったんだよね。だからもう、本当に毎週のように行ってたかも。
 ダンスミュージックの特徴的なところは、大きな音で体で体感できることだと思うから、とても家では聴けない。聴けるようなボリュームじゃない音で聴ける。それが面白くて、一気にスコーン!!って入っていったんだよね。
 元々がエレクトロニックな音楽が好きで、尚且つ新しいものが出てきてカルチャーとして体験できる、ってところが全て一緒になったっていう感じで、特にデトロイトテクノっていうものが一番ピンときたんだよね。


 
小張 : ちょうど今、「RAINBOW 2000」の動画流れてますけど、これKENさんじゃないですかね?96年ですよ。
 
KEN ISHII : 96年? そうだね、デビューして3年とか。。。 あー。観たくないな(笑)。
 
小張 : 止めます?? (笑)
 
マネージャー・藤井 : いや、俺が観たい。 「テクノインタビュー」ってすごいね(笑)。

KEN ISHII :全然こういうの行ったことなかったから。 そもそもフェスティバル文化自体がなかったからね。
 
小張 : 日本初と言っていい規模でしたからね。
 
KEN ISHII : この時も、山登りにきているのに、音楽もあって楽しいな。みたいな。完全に新しい体験として行っている。そもそもフェスティバル文化自体がなかったからね。
 
小張 : KENさんにとっても新しかったですか?
 
KEN ISHII :新しかった。でもこれが96年だとしたら、95年にJelly Tonesっていうアルバムが出て、96年は春ぐらいからずーっとツアーやっていて、フェスティバルとか大っきいのは一通り顔見せ的な感じでバーっとやって、その流れだったような気がする。だから、ちょっとは慣れているんだと思う。気分的には。
 
小張 : 海外を経験してきたという意味で。
 
KEN ISHII : そうそう。日本ではこれが最初の大きな野外だったけどね。

小張 : 最近で言えば、2017年に出演したTomorrowlandはKENさん的にどうでしたか?
 
【Tomorrowland記事】
https://clubberia.com/ja/news/10110-Tomorrowland-Ken-Ishii/

 

KEN ISHII : あはれもう20個ぐらいステージがあるからね。。。いわゆるメインステージはあんな感じで、メインストリーム、EDMって感じだけど、結構ステージごとに面白いことをやっていて、でも最終的に自分がプレイとは別に一番長く居たのはベルギーのアーティストがメインのテントみたいなステージだったね。小さめとは言っても500〜1000ぐらいの間でお客さんが居て。自分がたまたまベルギーのレーベルからデビューしているからスタッフとか知り合いが多かったりするんで、音楽はもちろんなんだけど仲間がいると楽しいんだよね。

小張 : やっぱり「仲間がいる」って、そこは大事ですよね。お客さんに対してもそういう空間やムードが作れていたらより楽しんでもらえるんだろうなと思ってます。
 
KEN ISHII : そうだね。パーティーが閉鎖的じゃなくて、1人で行っても隣で踊っている人と仲良くなれるような、そういう感じがいいよね、やっぱり。世の中、みんながみんなパーティー好きってわけじゃないし、でも「本当は行きたいんだけどな〜。一緒に行く友達居ないしな〜。」って足踏みしている人って結構いると思うんだけど、来てみると意外とみんなすぐ仲良くなれたりして、そういうムードって重要だよね。一時期のテクノとか、テクノ知らないと入って行きづらい。みたいな空気感があったかもしないけど、今はもうそんなこともないし、今は世界的に若い子がダンスミュージックのシーンに最初に入るのがテクノになってきたりもしているから、そういう意味では入って行きやすい環境は整ってきていると思う。特にサイトランスとかみんなニコニコしてて、ピースな感じがあるのがいいなと思うんだよね。
 
 小張 : そうですね。と同時に、パーティーを作る上では実際の内容でお客さんの期待をいかに越えていくのか?ということも大切だと思うんです。その意味で、そこに向かっていく意識やアイディアをオーガナイザーと、DJ、アーティストの間でもっと共有して創っていかないとダメだなと思っていて、だからこそ今回こういった対談をセッティングさせてもらったんです。
 
KEN ISHII : すごくいいと思う。こういうインタビューや記事を通して、創っていっている人間やアーティストの言葉で期待を上げていく。その期待値ってフロアのワクワク感に繋がるから、それによってお客さんが楽しくなって、やっている側も相乗効果でより楽しくなる。どこまでいってもこれが一番シンプルな部分。最初からワクワクしている感じがあれば、伝わってくるし、やる方としても気持ちの入り方が違うから、ワクワクを大きくしていくってことはとても重要なことだと思う。
 クラブをやっている側からしたら、毎週それをやるのが正直難しいのもわかるんだけど、期待があってこそ普段とは違うワクワクがあるわけで、、、ま、今回はアニバーサリーってことで特別なパーティーだから、普段よりガッツリプロモーションもできるし、ともかく楽しみだよね。
 
小張 :今回、プレイの中でアルバムの中からも何曲かはかけてもらえるんですよね?
 
KEN ISHII : 時間どのぐらいもらえるかにもよるけど、もちろん何曲かはかけると思う。
自分がプレイしたい曲をね。この曲は自分のセットの中でこの辺には必ず入ってくるだろう。とかそういうのはあります。
 
小張 : どんなタイミングで、どの曲がかかるのかが楽しみです。
 
KEN ISHII : ageHaのアニバーサリーは1周年の最初の年からずっとやらせてもらっているから、とにかく楽しみにしてますよ!!




取材後記 
対談全体は1時間30分近くにもなり、記事上では分量的にほとんどの部分をカットせざるを得ないほど充実した話ができました。
KENさんからは、初期衝動の話から、パーティー観の話についてまで、色々な話を聞くことができました。
アーティストをリサーチして、ブッキングするだけではオーガナイザーの役目は十分ではないと思っています。目的意識や到達地点。つまりパーティーのゴールをどこに設定するのか?それをDJやアーティストとも共有し、一緒に目指していくこと。改めてその重要性に気づかされる対談になりました。