INTERVIEWS

SUGIURUMN

僕はもともとバンドやってたんだけど、実はそのころからDJもしてたんだよね。ただ、ロックのパーティーがメインだったんでロックばっかかけてたし、お客さんも「パーティー」として楽しんでるんじゃなくて、単に「知っている曲がかかったから盛り上がる」って感じだったんだよね。で、正直それに少し飽きてきちゃってたころに、友人のヤマちゃん(DJ DUCK ROCK)のパーティーに遊びに行ったら、彼がビックビートとかをかけていて、そのバカな部分というか、お祭りっぽい感じがおもしろくてさぁ。それで彼とパーティーを始めたんだよ。それからはダンスミュージックの方に流れたね。

バンドのほうはちょうど結成10年目ぐらいだったし、そろそろバンドとしてできることはひととおりやったかなって想いもあったしね。なんでもそうだと思うけど、同じことを10年も続けるとそこから先に行くのか、あるいはもう一度同じことをやるのかってことに悩むと思うんだよ。そこで僕はグループとしてではなく、自分のやりたいことがしたいって思ったんだよね。バンドだと、失敗しても成功してもメンバーでそれを分ける安心感があるけど、僕はそれよりも失敗したリスクも1人で背負ったうえで、自分自身のやりたいことで勝負したいと思ったんだ。

Livedoorのホリエモン(堀江社長)がすごくいいこと言ってたんだよね。「日本の社会って、権力は欲しいが責任は取りたくないって人が多いから“黒幕”は多いけど、自分で責任を取るリーダーはいない。それで、どんどんつまんなくなっていく。何で新しい挑戦を恐がるんだ? 別に失敗してもマイナスになるわけじゃない。ただ、ゼロになるだけだ」って。ホントそうだと思うよ! 誰でも最初は挑戦していたと思うんだよ。でも、ある程度まで行ったらそれを失いたくないわけ。でも、金やモノはなくなっても、経験はなくならないんだよね。要は本人の気持ち次第だからさ。僕もやっぱ音作ったり、DJしたりするのでもさ、そういうふうに常に挑戦していきたいんだよね。 いまの僕の音楽やDJにもっとも大きな影響を与えているものの1つに「イビサ」があるね。ほんとにあそこはスペシャルだよ! DJ、クラブ、遊びに来てる人たち! どれをとっても一流。それに人がすごくあったかいよね。クリーニング屋とか、カフェとかにもパーティーのポスターが、ガンガン張ってあってさぁ、つぶれそうなパン屋さんとかですら、パーティーを応援してる感じがする(笑)。。。島全体がパーティーと一体化してるような、あの感じはほんとイビザじゃないと味わえないと思うよ。よくイビサは観光地化したとか、終わったとかいう人もいるけど、それって単に慣れちゃっただけなんじゃないかな? たしかに観光地化というか、商業的な面はあるけど、一夜のパーティーに日本ではピンで千人以上集まりそうなスーパースターDJが何人もプレイするんだよ! 仕方ないって部分もあるよ。そのかわりに「最高のエンターテインメント」として完成されているって良さもあるしね。

僕が初めてイビサに行ったのは、ちょうど「MUSIC IS THE KEY OF LIFE」というアルバムを作っていた時だったんだけど、アルバムに入れる曲はほぼ決まってたのに、すごく何かが足りない感じがしたのね。なんかこうアルバム全体でイマイチ、リアリティーに欠けてたんだよね。それで、思いついたようにイビザに行って、そのハッピーな空気というか、実際のパーティーに触れてみたら「これだ!」って感じで欠けていた何かが見つかったんだよね(笑)。それ以来毎年行ってるよ。 DJをしてる時は自分がお客だったら、どんな曲を聴きたいのかなぁってことを考えるよね。踊ってる自分を想像して、自分だったら次どの曲を聴きたいかってこと考えながらやってるから、別に古いダサい曲でもいいわけ。それがカッコよく聴こえちゃうのがクラブの魔法だし、DJの腕の見せどころだと思うんだよね。

この間も渋谷のLA FABRIQUEでDJした時にCISCOとDMRの人が来てて、イベント終わったあとに電話がかかってきて「今日、杉浦君がかけてた『Electrify My Love』(feat.曽我部恵一の自作曲)って、まだ手に入るかなぁ?」って言われた時は最高だったよね(笑)。自分がかけることによって、知っているはずの曲が特別な聴こえ方をして、聴いてる人が「この曲って、こんなによかったの!?」って思ってもらえたら本当にうれしいよね。それがDJの醍醐味じゃないかな。

あとは、単純に僕のDJを聞いて「明日からもがんばろう!」ていう気持ちになってくれたら一番かな(笑)。人それぞれ難しいことはあると思うけど、人って笑ったぶんだけ、つらいことも我慢できると思うんだよね。もし毎日の生活に笑いがなかったら、つらいことに対して、ものすごく頭に来ると思う。イビザとかもそうだけど、あれだけ楽しい思いをしたら「一生懸命働かなくちゃ!」って気持ちになるよ。そういうパワーを人にもあげられたら最高だよね!

日本のクラブシーンについては、自分が遊びに行きたいパーティーがいっぱい増えて頭を悩ますようになってもらいたいね。「気付いたらオレ、毎日クラブにいるよ!」みたいな(笑)。 DJとしても何枚かリリースしてるけど、アルバムを作るって、本当にこれ以上ないってくらい大変なんだよね。子供1人産むみたいなさぁ。これって、つまりはどういうふうに前のアルバムから次のアルバムまでの間を生きたかってことなんだよね。その間にあまり感動がなかったとしたら、いい作品はできない。フィクションの要素が強い“理想”のことばかりやってもグッとこないんだよね。自分や自分の音楽に正直じゃなくなったら、活動している意味ないからさぁ。

自分も成長しているわけだから、自分自身がびっくりするようなものじゃないとみんなもびっくりしないし、だからこそ大変なことなんだよね。ふと、気付くと「流れ」で曲作りしてる時もある。そういう曲は1000%ボツ。でも、あるフレーズを入れた途端に今までのフレーズが突然花咲く森みたいに輝きだす時もあるから不思議なんだよね。

前回のアルバムに収録されている「STAR BABY」って曲もそうだった。最初、うわものを生の楽器のサンプルだけで作ってたんだけど全然よくなくて、それを全部自分でシンセを弾いて置き換えてみたらメチャクチャよくなったんだよね。

ちなみに今は次のアルバム制作に取り掛かっていて、ちょうど半分くらいでき上がったところなんだけど、かなりいい感じで進んでるよ。今までと同じような曲を作っててもおもしろくないから、どんどん新しいチャレンジをしていくつもり。まだ、みんなが聴いたことないような新しい感じの曲になると思うから期待しててよ。
アルバムが出るのは、夏頃になると思うけど、とりあえず4月27日には、シングルCD「SWEET AMAZING」のリリースが決まってる。この曲にはCOLDFEETのLORI FINEが参加してくれたんだけど、かなりおもしろいできになってるよ。6月ぐらいにも、もう1枚シングルが出るかな。

あ、最後にひとこと!僕がDJ YODAさんと代官山UNITでやってる「HORIZON」っていうパーティーはすごく楽しいから、ぜひ一度遊びに来て下さい!