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「音楽に魅せられた人生」から生まれたレーベル On Board - Laura BCR インタビュー

 フリーパーティでDJに目覚めた Laura BCR。10年以上の歳月をかけて育んできたレーベル<On Board>の歩みと、アーティスト・プロデューサーとしての情熱を語る。日本のテクノシーンへの深い愛着と、2025年の新たな展開にも迫った独占インタビュー。
 
Interview: YUTA (Liquid Drop Groove)
 

ーー <On Board>の成り立ち、ネーミングの由来、レーベルとエージェントを掛け合わせたキッカケなど、教えてください。

 <On Board>は10年前(ほぼ11年が経ちます)にブッキングエージェンシーとして設立され、その後パーティオーガナイザーとレーベルになりました。このアイデアは、私がベルリンで<Bass Cadet Record Store(BCRの由来)>というアパレルとレコードストアを共同経営していた時に思いつきました、Autechreの悪名高いトラックから来ています。まずは友人や当時知っていた過小評価されていたアーティスト数名の世話をするためだったのですが、<On Board>の名前は自分でも覚えていないくらいとてもくだらない形で思いついたんです。



ーーレーベル運営、アーティスト活動、2025年はそれぞれどのような動きをされる予定ですか?

2025年は、<On Board>からいくつかのリリースを予定しています。その中には、所属アーティストを集めたコンピレーションも1つあるのですが、これは私たちにとって大きな節目であり、これをリリースできることをとても誇りに思っています。リマスタープロジェクトもあるし、私がこの1年よくプレイしてきた大好きなプロデューサーたちとの新しいデジタルコンピレーションもあります。
現在、Laura BCRとしてはアンビエント&怪奇な志向のEPに取り組んでいて、ダブテクノプロジェクトもまだ最終調整中です。DJについては、今年は自分の時間や家で過ごす時間がもっと欲しいし、エージェンシーは多くのエネルギーを必要とするのですが、それが私の主な仕事だからツアーに出ることは少し減ります。昨年は特に忙しかったので、2025年はゆっくりしたいと思っています。

ーーあなたはどのような音楽のバックグラウンドをお持ちですか?DJを始めたキッカケは?

私は8歳のときからピアノ、ベース、パーカッション、いつも音楽に囲まれていた幼少期で父はオルガンを弾いていました。家ではいつも音楽が流れていたし、コンサートなどにもよく行き踊っていました。
小さい頃から森の中で開催されていたフリーパーティに出かけていて、それがきっかけでDJを始めました。初めてターンテーブルとミキサーを買ったのはまだ高校生の時、実際にオーディエンスの前でプレイするようになったのはそれからかなりの年数が経ってからで、12年前にレコードストアを通じてでした。


ーー<Live at Robert Johnson>からのリリースは大きな話題を呼んだと思いますが、影響を受けたアーティスト、使用していた機材など、是非お話をお伺いさせてください。

この曲はパンデミックの時に作りました。当時はあまり機材を持っていなくて、DigitoneとmicroKORGの他に、友達が持っていたSix Trakというシンセを少しの間借りて作ったんだけど、それがすごく多様なトリッピーなサウンドでクレイジーなブリップ音を生み出してくれたんだ。MASSIVEも大好きでよく使っていました。

ーー日本のテクノシーンについて、どのように見えていますか? 日本ならではの特徴などあれば教えてください。

私は日本のシーンとアーティストに深く惚れ込んでいます、奥深い一面には感銘を受けます。日本からの作品のほとんどをサウンドデザインだと私は考えています、そのエモーショナルな側面はいつも私に語りかけてくる。そこには常に完璧さと鋭さがあります。例えば、私のセットにはDJ Sodeyamaのトラックが入っていないものは 1つもありません。<On Board>からリリースしているHironori Takahashiの大ファンでもあります、ARTSからリリースされた彼の作品には何年も前にすっかり魅了されました。もちろんIORIのトラックもすべてお気に入り。Sapphire Slowsの作品は精度の高いミニマリズムも大好きです。まだまだ話せます。


ーーアジアをツアーした際、廻った国や音楽感などはどんな違いがありましたか?

アジアに行くのはこれで3回目になります。これまで香港、中国、日本、韓国を訪れる機会があり、すべての経験が最高でした!ホストは素晴らしいし、サウンドシステムもクレイジーだった。オーディエンスはとても音楽に集中し、敬意を払ってくれる。DJとしてそこにいる人たちと繋がる事で、より深くプレイすることができたし、オーディエンスが熱狂的で素晴らしかったです。



ーーあなたが拠点としているロッテルダムのシーンはいかがでしょうか?

シーンのポテンシャルは高いと言えますが、特にパンデミック以降、残念ながらアンダーグラウンドに出向くオーディエンスはそれほど多くありません。ユニークな企画を推し進めている素晴らしいイベントやクルーはいくつかありますが、クラブシーンは簡単ではありませんね。巨大なハードテクノのウェアハウスレイブもあります。オランダは全般的にフェスティバルが主流で、アムステルダム以外のクラブシーンは毎週末まだ多くの戦いを強いられています。

ーーヨーロッパの現在について、音楽面はどんな方向に進んでいますか? 今後、テクノシーンはどのような発展を遂げていくと予想しますか?

それはとても深い質問で、とても長い答えになると思います。
つまり、私はできる限り前向きでいるように努力していますが、パンデミックで多くのことが変わってから、外に出る人が減っています。アーティストは進化しているし、DJになりたい人も増えていますね。そして、より多くの人が制作ツールやDJにアクセスできるようになっていて、これは悪いことではないと思っています。エレクトロニックシーンはまだ最近のものですが、もちろん段階があり、ある人にとってはより多くの可能性があり、ある人にとっては可能性が少ないこともあります。提案も非常に多様で、アンダーグラウンドはより深くなっていて、さまざまなジャンルが演奏されています。いつかはそれらの幾つかは爆発すると言う人もいるけれど、私はそうは思わない、入れ替わりがあって、やめる人もいれば、始める人もいる、それは自然な流れです。ラインナップの平等性が向上し、これが非常に必要だったので、参加する人が増えたことを嬉しく思います。

ーー今回で二度目の来日ですね。前回WOMB出演時はフロアから多くの反響があったと思いますが、東京パーティの体験談や、LDGとの出会いなどを教えてください。

WOMBでのLDGパーティは素晴らしかった!最高でした!会場は完璧で、フロアにいた人たちはとてもクールだったし、音楽にのめり込んでいた。私のセットを聴きに来てくれる人がいることにいつも驚いているし、これはこれからも変わらないと思う。Liquid Drop Grooveは素晴らしいキュレーションで、今や私の大好きなMari Sakuraiもそこで発見しました。彼女は素晴らしいパフォーマンスを見せていて、「この人は誰?」って感じだったよ。今回も共演予定のアーティストたちとVENTで一緒にプレイするのが待ちきれないです!

ーー今年はヨーロッパでも有名な東京VENT、大阪AREA、白馬Sugarをツアーしますね。どんな楽曲をプレイしたいですか? 最後に、日本のファンに向けてメッセージを是非お願いします。

日本に行くのは間違いなくご褒美です。一年間、一生懸命働いた後のピュアギフトです!
白馬Sugarは取り揃えているウイスキーに恋に落ちてしまい、また行けるのがとても楽しみです。日本のウイスキーが大好きなんです、 居心地も良くてヤバい場所と聞いているAREAで新しい発見や、VENTのサウンドシステムを体験するのも楽しみです。
いつものようにダビーでトリッピーなセットになると思うわ。事前にセットを組まないので実際にどの楽曲をプレイするかはわかりませんが、おそらく<Eshu Records>の楽曲は使うと思います、最近EPをリリースしたのですがとても気に入っているの。もちろん<On Board>も!GiGi FMの楽曲がまもなくリリースされる予定で、私のアンセムになっていますね。日本のオーディエンスもきっと気に入ってくれると思います。

ーー最後に日本のファンへメッセージをお願いします。

早く日本に戻りたい!このユニークな旅を心待ちにしています。琴や三味線(私の一番好きな楽器です)のコンサートをぜひ見てみたいな。皆さんのオススメもぜひ教えてください。
ドウモアリガト x






Liquid Drop Groove "New Year"
日程:
1/18(土曜日)
会場:
VENT

LINE UP:
ROOM1:
Laura BCR (On Board Music)
Newwave Project -LIVE-
Erik Luebs -LIVE-
SAKUMA

VJ Tsujita Naoto

ROOM2:
DJ YAZI
ayaka
YUTA

​【PolygoniaやGiGi FM等、ヨーロッパの最前線で一際輝く超良質なテクノアクトが名を連ねるOn Board Musicの創設者Laura BCR】

名門Robert Johnsonからディープでダビーなリリースが話題となったロッテルダム拠点のフレンチアーティスト。一年前、ダンスフロアから多大な賞賛を得た初来日公演、二度目の来日もLDG主催となる今回の舞台はVENTだ。
ROOM 1は、数多くのミュージシャンとコラボを重ね、直近ではCircle Of Liveに参加したKuniyukiが、ニューウェーブやテクノなどの要素を取り入れた別名義Newwave Projectで登壇。ニューヨークThe Bunker やロッテルダムNous'klaer Audioを始め著名レーベルからのリリース、オランダのフェスDraaimolenでもフロアをロックしたErik Luebsが数年振りにLDGでパフォーマンスを披露する。そして、東京ディープテクノシーンで重要な立ち位置を担うModest主宰、場数が生み出す世界観とフロアリーディング、緻密なミキシング、信頼度の高いSAKUMAがラインナップ。
ROOM2には、Future Terrorのレジデントとなった日本の至宝DJ YAZIが持つ膨大なテクノライブラリーからセレクトされる楽曲がROOM2の環境でどう鳴るのか、想像を超える世界観、常に期待の斜め上をいく氏のセットは必聴である。テクノを主軸にビルドアップで空間をつくりこむプレイが定評のAyaka、LDG初となる彼女は今回のダークホースと言えるだろう。主宰YUTAと、鬼才VJ Tsujita Naoto、LDGチームの前回を凌駕するテーマに沿った表現も堪能いただきたい。