ーーLA渡米後、90年代後半にDJキャリアをスタートされたとのことですが、当時のLAのダンスミュージックシーンはどのような状況でしたか? また、DJを始めるきっかけとなった出来事など教えてください
高校卒業後、東京一極集中の流れに疑問を感じていた時、仲の良い友達がロサンゼルスに行きたいと言い出して。それなら俺も行ってみようかなと。ロサンゼルスかニューヨークで迷ったんですが、九州の感じと暖かいところが好きだったので、ロサンゼルスを選びました。当時、1998年から2003年初めまでの約5年間をLAで過ごしました。僕の世代はヒップホップカルチャーや昔のディスコカルチャーが多くてダンスミュージックのシーンはあまりなかったんです。周りの友達はヒップホップのラッパーやDJをやっていて、僕も遊びに行っていたんですが、DJをするところまではいかなかったんです。それがアメリカに行って一変しました。90年代終わりのLAはレイヴカルチャーがすごくて、毎週何万人というパーティーがどこかしらで開催されていた。でも僕はまだ18、19歳でクラブに入れなかったんです。それでイリーガルなレイヴに行って、そこでダンスミュージックの洗礼を受けました。「これだったらDJやってみたい」と思って、周りの友達と一緒に始めたんです。当時のシーンは、今でいうフェスみたいな感じで、ブースが5個、6個あって。メインがトランス、テクノ、ハウス、ドラムンベースとジャンルが分かれていて、僕はテクノのところでよく遊んでいました。毎週そこにハマっていって、ずっと音楽ばっかり聴いていましたね。

ーー2007年にパーティー「4 to the place」を立ち上げられました。当時の大分のクラブシーンはどのような状況で、どのような想いでこのイベントをスタートされたのでしょうか?
当時の大分はヒップホップが盛んでダンスミュージックのシーンは少しあったんですが、なんか自分のやりたい事とは違うなと思ってました。 オールジャンルのパーティーで一度テクノをかけたらドン引きされちゃって(笑)。これはいかんなと思って、ハウスを勉強しながらしばらくハウスでやっていきました。 当時「CLUB BOYCE」という箱があって、そこで10年近くやったんです。そこでハウスから少しずつテクノに移行していきました。きっかけはDJ NOBUさんの影響が大きかったですね。 BOYCEが終わってからは、アットホールという小劇場みたいなライブハウスで完全DIY。スピーカーを毎回持ち込んで、バーカウンターから作って、それを2、3年続けました。そこでクラブのありがたみがわかったんです。何もなしでパッと始められる場所がなかったので、だったら作ろうと思いました。 それで地元のレコード屋「RA'S DEN RECORDS」の隣でDJバーを始めたんです。元々そのレコード屋さんがやっていたスペースで、彼がレコード屋だけをやるということでそこが空いたので、僕に声をかけてくれました。僕もそういう経験がなかったので、小規模で一度やってみようと。その経験が今の店を作るのにすごく役立っています。 DJバーはラウンジみたいな感じで、テクノはあまりやらず、リスニングっぽいものやハウスをかけていました。完全にバーに特化していましたね。
ーーDJバーを経てクラブをオープンされるまでに、大きな転機があったと伺いました。テクノへの完全移行、そして現在の九州シーンについて、どのような変化を感じていますか?
DJバーを2年ぐらいやった後、病気になってしまって。死にかけるぐらいの病気だったんですが、せっかくもらった命だから、やりたいことをやろうと思って、一気に加速してクラブ「AZUL」を作りました。 BOYCEの時から続けていたパーティーを「AT HALL」に移して、それをここAZULに持ってきた感じです。DJ NOBUさんが来てくれるようになってから毎月やるようになって、徐々にテクノに完全移行していきました。 昔と違って今は、SNSやYouTubeで音楽の露出が多くなったおかげで、若い人がどんどん増えています。昔はディープなことをするとついてこなかったんですが、今はお客さんもついてきてくれる。やりたいことができるようになったと感じています。 あと、昔は九州内でも大分、福岡、熊本と分かれていたんですが、今は若い世代を中心に横のつながりがすごくある。みんながいろんな場所を行き来しているんです。人口は東京や大阪より少ないけど、その分横がつながって、各地が盛り上がりつつあると感じますね。 ただ、テクノっていきなりやっても無理なので、少しずつやってきたからこうなったのかなと思います。
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ー2016年のSOUND BAR AZULから2018年のAZULへ、そして現在に至るまでの道のりについて聞かせてください。特に、サウンドシステムへのこだわりと、それが空間やフロアにもたらす体験についてどのようにお考えですか?
僕自身がDJなので、DJ目線で箱を作りました。地方のクラブはホットペッパーに載せて宣伝するわけにもいかないので、アーティストに「ここにまた来たい」と言ってもらえる箱を作りたかったんです。それでDJ目線で考えると、やっぱり音がいいところがいい。テクノは空間系の音楽なので、特に音は大事なんです。それを突き詰めていくうちに、いろんな方の知恵を借りて、大阪のよりさんとか、すごい人たちがいろんなことを教えてくれました。少しずつ改善していって、今に至っています。この箱は元々倉庫で何もなかったんですが、設計は全部自分でやりました。暇な時にこういう風にしたいなと考えて、距離を測ったりして。前のDJバーが苦情がすごかったので、防音はちゃんとしようと思いました。ビル外には音が漏れないように設計しています。



ーー大阪在住のPA、Yori氏が何度もチューニングをしに来ているみたいですね。
Yoriさんとの出会いは、コロナ禍の時にDJのHarukaくんと一緒にやっていた「PROTECTION」というパーティーでした。そのHarukaくんがPAの人を紹介したいと言って、Yoriさんを紹介してくれたんです。
それまでも音に関しては協力してくれる人がいたんですが、ちょっとDIYな部分が残っていて。それ以上先に行くには、よりプロの専門的な人じゃないと無理だなと感じていました。そこでよりさんと出会って、またさらにレベルが上がったという感じです。相当時間はかかりましたけど、段階を積んでいろいろ改善してきました。

ーー国内外のトップDJを招聘し、「エッジの効いたアーティストのブッキング」で知られるAZULですが、アーティストを選ぶ際の基準や、大分という地方都市から世界の最前線とつながる意義について教えてください。
基本的には僕がブッキングする時は、必ず一度見るようにしています。東京に行った時にすごくいいなと思った人をブッキングしたり。海外のアーティストはわからないことも多いので、本当に信用している人からの紹介で「やりませんか?」と来た時に受けています。
知っていたり好きだったりする人はもちろん呼びますが、知らなくても「すごくいいから」と信用できる人から紹介された時はやります。あと、ミックスを聴いて自分のパーティーに合いそうだったらブッキングする。逆に合わなくても面白い人だったらブッキングすることもあります。テクノに特化しているわけではなく、近いものがあれば化学反応を試してみたいんです。
ただ、知らない人からパッと連絡が来て「こういうのやってくれ」というのは、ちょっとお断りしています。
あと、一回じゃなくて、せっかく来てくれるんだから長く付き合っていけるような人とやりたい。そういう人を呼んでいますね。
有名な人を呼んでも経費的な問題もあるので、これからの人だったり、まだすごくいいけどそこまで知られていないような人は積極的に呼びたいと思っています。


2025/12/6 AZUL 7th Anniversary Party ; DJ NOBU / Ne:Re:A
Photo by Taisei Matsumoto (@_taisei.matsumoto_)
ーーブース環境について伺います。DJミキサーはAllen & HeathのXONE96を使用されてきたとのことですが、Allen & Heathのミキサーを選ばれた理由と、XONE96での使用感について教えてください。そして今回、XONE92 mk2をテストされた印象はいかがでしたか? 96との違いや、mk2ならではの特徴、ご自身のDJスタイルとの相性について率直な感想をお聞かせください。
元々、XONE92の音がすごく好きだったんです。XONE92はすごくいいミキサーだなと思っていて、買おうかなと思っていた時に、ちょうどうちをオープンした頃にXONE96が出たんです。 当時、XONE92のシルバーのモデルはイギリスで全部作られていて、黒のモデルは中国製で音が全然違うという話も聞いていました。それならXONE96が出るからXONE96を買おうと思って。当時テクノにはチャンネル数が多い方がいいと思って、XONE96を購入しました。 最初はXONE92の方がいいかなと思っていたんですが、XONE96を使っていくうちに、現行のテクノの音には再生の解像度やレンジの広さがXONE96の方が合っていると感じるようになりました。 XONE96はシンプルで無駄なものがあまりない。すごく使いやすくて、ストレスがないんです。位置とかもそうだし、DJユースに特化した作りだと思います。 ただ、XONE96で唯一気になっていたのが、縦フェーダーのカーブ。90%から100%に行くところで一気にグンと上がるんです。フェーダーを切りながらミックスする人には、ちょっとやりにくい部分でした。 今回XONE92 mk2をテストした時、そこの部分が全くなくて、綺麗にカーブが描けるようになっていました。そのストレスがなくなったのはすごくいい点ですね。 フィルターもいいですね。僕はあんまり使用しないのですが、なんならあれだけでもミックスできるなっていうのがあります。他のミキサーよりすごく使いやすいフィルターだと思いますよ。 それと、Allen & Heathでミックスした時のローの交わり方が独特なんです。Ureiのように綺麗に混ざる。ローの部分が当たらなくて塊になっていく感じ。Allen & Heath独特のミックス感があるんです。 あと解像度というか、透明感がある。それもすごく感じますね。 XONE92 mk2は、XONE96と比べて音がウォーミーでボトムが低い。小箱にもすごくテクノができるようなミキサーだと思いました。ラウンジとかでテクノをするなら、XONE96よりXONE92 mk2の方が絶対いい。温かくてすごくいいと思います。 操作性もシンプルで完璧です。変なボタンがありすぎて気づかないうちに押しちゃうこともないし、前の人が何かやっててミキサーの設定がおかしくなることもない。 価格も、この時代において30万ぐらいするミキサーが20万代で買えるのは驚きました。若い人でも頑張れば買えるイメージですよね。 XONE92 mk2は、僕がやってるようなディープなテクノや音数が少ない音楽にすごく合うと思います。ある程度、最初からチューニングされている感じなので。


ーー最後にAZULと共に進化を続けるTabascoさんですが、今後のビジョンや挑戦したいことがあれば教えてください。また、地方のクラブシーンやダンスミュージックカルチャーの未来について、どのような展望をお持ちですか?
今、本当に若い子が多いので、若い子がもっとどんどん増えて、パーティーも増えて、日本全国とつながっていければいいなと思っています。草の根運動じゃないですけど、テクノやハウス、ミニマル、いろんな音楽がある中で、そういう遊び方を地方の人もここで知って、広がっていけばいいなと。あと、観光地化すればいいなとも思っています。クラブ好きな人って県外に行ったらクラブに行くじゃないですか。だから大分に観光で来た時に、夜ちょっと行ってみようかなと思ってもらえるような。県外の人が来てくれれば、大分県内の人も楽しいと思うんです。知らない人とコミュニケーションが取れるのも面白いですし。でもそれをやるにはコンテンツも大事なので、クオリティはみんなで高めていきたいですね。

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