Abstract Latin Journey

ジュリアス・パップは、サンフランシスコを拠点に西海岸クラブ・カルチャーのトレンドを常にリードしてきた人気DJである。『Abstract Latin Journey』は、そのダンス音楽のディープな部分の魅力を熟知した20年近いDJとしてのキャリアをもつジュリアス・パップによるミックスCD。情熱的なビートと哀愁のメロディによる深みのあるドラマと色彩豊かな情景に彩られた、千夜一夜のミュージカル・ジャーニー。Julius PappによるDJミックスは、基本的に個々の楽曲の最もよい部分を、きっちりとリスナーの耳に届けることに主眼がおかれている。ミキシングという行為自体のエンターテイメント性を前面に押し出すというよりは、作品全体のスムーズな流れを重視している感じだ。中盤に差し挟まれるJulius Papp自身による“Pacific States”を挟んで前半と後半にふたつの大きな山場があり、ラストもまたJulius Papp自身による“A Thousand Years”で手堅く磐石な体勢で締めくくられる。『Abstract Latin Journey』は、Julius Pappによるサンフランシスコのクールなクラブ・サウンドのショー・ケースである。ここには、ただ享楽的なだけの空虚なダンス・ミュージックにはない、音楽的な深みや音によるドラマや彩り豊かな情景がある。Julius Pappは、そうした音楽のディープな部分の魅力をよく知る人物である。間違いない。故に『Abstract Latin Journey』も間違いない。