今作の制作に当り“バレアリック・エレクトロニック・レコード”を目指したというKENNETH BAGER。それは、“素晴らしいシンガーと素晴らしいミュージシャンそのもの”であると考えていたという。そんなレコーディングの実現のために、今までに50以上ものアーティストと一緒に仕事をして来たという彼の経験を生かし、まずジャズを中心としたミュージシャンを中心に最初のテイクを取り、その後にエレクトロニック・ミュージックのプロデューサーによるアイディアを加える、というスタイルで本作は制作された。収録された楽曲達には自分の実際の生活においての経験、そこで彼が感じた家族/友人/音楽などへの愛情を込めたという。インスピレーションを受けたアーティストとして、映画音楽ではYANN TIETSEN、MICHAEL NYMAN等、ロック方面ではNICK DRAKE、PINK FLOYD、エレクトニック/ダンス方面はARTHUR RUSSEL、MANUEL GOTTSCHING、KRAFTWERK、ジャズではMILES DAVIS、HERBIE HANCOCKらが挙げられており、その顔ぶれからも、ジャズ/サントラ的で尚かつ先進的なエレクトロニック・サウンドでもあり、それにプラスして、アコースティックで美しいメロディーにもこだわっているということが伺い知ることが出来る。RY COODER「Paris Texas」をイメージしたというドブロ・ギターも印象的な「Walter&Viola」で聴ける哀愁のアコーディオンや、全編を通じて耳に触れ記憶に残るアコースティック・ギターは、この作品のテイストを良く表していると言えるだろう。4HEROも取り上げた、 MINNIE RIPERTON「Les Fleur」のカヴァーでは『Twin Peaks』をはじめとするDAVID LINCH作品で知られるJULEE CRUISEをフィーチャー。KENNETHが共演を熱望した世界的に有名なジャズ・ヴァイオリニストJEAN LUC PONTYが参加した「Love Won?t Leave Me Alone」ではKRAFTWERKを、「On The Floor」ではTHE CLASHを感じさせるビートを使用する等、彼のDJならではのセンスを聴く事ができる。アルバムからのファースト・シングル「…And I Kept Hearing」のヴィデオ・クリップを制作した世界的な女性写真家ELLEN VON UNWERTHによるジャケット写真もこの作品をトータルアートとして高めており、彼女の作品のセクシーながらもユーモアがあり楽しんでカジュアルに撮っている様でいて計算されているという面はKENNETHや<Music For Dreams>にも通じるところがあるかもしれない。 常にメロディが綺麗でオリジナリティのあるものであれば、音楽的な境界線を作らず、どんな音楽でも扱うという<Music For Dreams>。その幅の広さ、KENNETHのDJ/プロデューサーとしての豊かな経験が生かされている、いわゆる普通のラウンジ物とは一線を画すアルバムに仕上がっている。
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