エイベックス移籍第1弾となる、これまでのMONDO GROSSOという肩書きを
脱ぎ捨てた初のSHINICHI OSAWA本人名義のオリジナル・アルバム、
その名も”THE ONE”。
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ここ数年にわたって、「最も集客力のあるDJ」と呼ばれ、名実ともに国内のダンスミュージックシーンをリードしてきた大沢伸一。その“ジャパニーズ・スーパースターDJ”である大沢が、いよいよ満を持して自身のDJとしての側面にフォーカスしたオリジナルアルバムをリリースする。それが本作『THE ONE』である。ちょうど21世紀に入った頃からだろうか、ダンスミュージックシーンにおいて、世界的にひとつの「傾向」あるいは「気分」が顕著に現れ始めた。細分化した各ジャンルがそれぞれに洗練化を進めていくことにより逆に失ってしまった、音楽が本来的に持つ「エモーション」を取り戻すべく、スタイルやジャンルを超え、既存のカテゴリーには収まらないサウンドをクリエイトしようとするアーティストたちが現れ、彼らによる「無意識の共鳴」とでもいうでも言うべき現象が起こり始めたのだ。このシンクロニシティ的なムーブメントは、「エレクトロクラッシュ」「ディスコダブ」「ディスコパンク」「フレンチエレクトロ」「ニューレイヴ」などと呼ばれつつ地域/国境を超え発生しているものであるが、ここ日本において、そうしたムーブメントをダイレクトにキャッチし、同時にそのことを充分に自覚し、堂々と自身の表現に取り入れている者は大沢伸一をおいて他にいない。そして、そのシンクロニシティが生み出したものとして、THE RAPTURE、LCD SOUNDSYSTEMらが放つ、ダークで内省的ながら直線的なグルーヴ、SOULWAXが完成させ、KITSUNE、ED BANGER、MODULARといったレーベルのコンピレーションの基本フォームとなっている、エレクトリックノイズによるキャッチーなメロディーがもたらす高揚感、KLAXONS、WOLFMOTHER、THE GOSSIPといったロックバンドが本能的な直感によって導き出す圧縮されたエモーション、などを挙げることができるはずだ。もちろん、大沢のニューアルバム『THE ONE』は、これらの要素をすべて内包している。さらに本作『THE ONE』は、こうした世界的ムーブメントに対応するだけでなく、その先を見据えた、世界レベルでのシーンのネクストを射程においたクリエーションをアルバムの随所に感じさせる。端的に言って、収録されたすべての楽曲にポップミュージックとしての高い完成度をも付与しているというのが、大沢によるシーンへの新たな回答と呼べるのではないだろうか。ここに収められて楽曲の多くは、繰り返し聴くことで魅力を増していく一方で、ダンスフロア完全対応のワイルドなトラックとしても完成されていることは特筆すべきだ。ダンストラックにロック的なリフレインとメロディを融合させることによりポップス化を目指す、あるいはロックバンドの楽曲にエッジィなリミックスを施しダンスフロアにおいても最大限に機能させるトラックを作る、といったアプローチはこれまでにもあるが、この2つの方法論によって生み出される効果を正確に見極めたうえで、1枚のアルバムのなかに、ここまで粒の揃った楽曲を書き上げたアーティストは他に類を見ない。また、実験性という面でも、多くのアイディアが盛り込まれており、それが本作に確固としたオリジナリティをもたらしている。いくつか例を挙げれば、収録楽曲すべてに施されている音響的位相の緻密な配置と各種のエディット的手法による効果をはじめ、ファンキーなギターサンプルとロッキンなエレクトロビートの融合、沖縄音階がもたらす独特なチルアウト感、ナイーブな日本語ボーカルのフィーチャーが生むある種の叙情性、そして、ダンスロックのアンセムであるTHE CHEMICAL BROTHERS『STAR GUITAR』にポップミュージックとしてのより高い完成度を与えた軽快なカバーなど、大沢にしかできない様々な試みを随所に聴かせ、シーンの最前線をさらに押し上げている。ところで、なぜ、この『THE ONE』のクレジットはMONDO GROSSOではなく、SHINICHI OSAWAとなっているのであろうか?その意味するところは、ダンスミュージックシーンにおける世界的シンクロニシティを呼び起こした「当事者」として、その「無意識の共鳴空間」に躊躇なく身体ごと飛び込むことで作られたアルバムであるからではないだろうか。世界同時進行中のダンスミュージック革命の中においては、誰もが等しく「生身」であり、肩書きはおろか、匿名性さえ必要とせず、身体的なアイデンティティのみが問われる。それゆえ、この「無意識の共鳴空間」へ向けてメッセージを送り返すこのアルバムにはSHINICHI OSAWAと記されるしか無いのである。そして、今後、MONDO GROSSOとクレジットされた作品が世に送られるとしても、それは大沢が「無意識の共鳴空間」から届くメッセージを受け取った結果となるはずだ。彼には、もう後戻りはできない。
鈴木哲也(honeyee.com編集長)
去年の10月から制作に入った初めての個人名でのアルバムですが、ほぼ10ヶ月かかってようやくアルバムが完成しました。まぁ周りから見ればMondo Grossoも一人でやってる訳で、「どう違うのかよう分からん」とつっこまれるところでしょうが、本人的には結構この名前による縛られ具合は意外とあります。しかし、今思えば当初考えてた内容からはかなり遠いところで落ち着きました。当初はほぼ声要素の入らないトラック主体のアルバムになる予定でしたが、実際は全体の半数くらいは何かしらの「声」が入った、ある意味ポップな内容だと自負しています。ロック/ダンス/エレクトロという微妙な位置、故にポップと言っても「J」の付くそれとはほど遠い内容ですが、、、、僕にとってアルバム制作は旅のようなもので、その都度出会う人や事柄に大きく行き先を左右されつつ、またそれを楽しんでもいます。今回も最初の方に制作を共にした相手とのトラックはついに完成せず、むしろ彼らとの取り組みの中で別のモティヴェイションに変化して、次なるステップへの原動力となった例も複数あります。そんなこんなで収録予定で進行していた曲数はざっと18、僕が自分のアルバムのためにこんなに沢山のアイデアを出したことは過去に例がなく、自分でも驚きです。結果的に形に成らなかったものや完成したけど収録を見合わせた所謂アウトテイクをさし引いて14曲を収録予定。これでも曲の分数からするとかなりのヴォリュームですね。一曲だけかなり以前から構想していた曲があります。実はこれ元々sony music在籍時にavexから依頼された仕事で、ある映画絡みのアルバムへの楽曲提供。結局その当時の契約上その曲を提供することが出来なかったんですが、今回ようやく日の目を見ることに。で、その曲が収録されたアルバムがavexが出るというのも中々面白い展開ですね。このアルバムの原動力にもなった曲なので思い入れも一番。落ち込んだり、泣き言吐いたり、責任転嫁したり、過信したり、ピストでこけたり(二度も)しましたが、ようやく完成です。
大沢伸一(honeyee.comブログより)
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