WALL FIVE(HEIGO TANI)とのユニット「Co-Fusion」として制作した楽曲を基に、既発曲や未発表曲を問わず一度パーツ単位に解体し、さらに再加工、緻密な編集を徹底して完成したアルバム。これは究極の WADA 的美学の結晶であり、現在進行形のオリジナル・サウンド・コラージュ!まず最初に、この作品を何らかの「集大成」的なものと呼ぶべきではない。これは日本でも最高のミキシングのレベルと長いキャリアを誇るテクノDJ であるDJ WADA が、その自らの築いてきた歴史や地位に決して甘んじることなく、常に自己の音楽的な興味の対象に向かい前進し続けているという、その人生の形そのものをリアルに表すアルバムであり、現時点での最高にフレッシュなレポートである。今作ではDJ WADA は、HEIGO TANI とともにCo-Fusion として制作してきた数々の音源の中から、未発表の音源や、既に発表してきた曲のパーツを音の素材レベルにまで一度解体し、それをPC 上での音源制作ソフトやDJ ミキサーを通して加工、再録音しなおし構築しなおすというプロセスを経て、最終的に約20 分の長尺の実験的なトラックを3 曲作り上げ、約60 分のアルバムとしてこの作品を完成させた。これは形としてはテクノ/クラブ・トラックとしての機能を持っているものの、手法的にはむしろコラージュ的な方法論である。常に時代の最先端を求めることが望まれるディスコ、クラブなどでの現場でDJ としての美学を追及し続ける生活を通して、パトリック・カウリーやニュー・オーダーなどのディスコ/ニューウェイブ、ホルガー・シュ—カイなどのクラウト・ロック、池田亮司に代表されるようなサウンド・コラージュ、「コヤニスカッツィ」(音楽をフィリップ・グラスが担当したドキュメンタリー映画)などにも見ることができるミニマリズム、および現代美術の世界など…実に様々なところからの影響を受け続けつつも、自分の生まれ育ち生活する「東京」というモードの中でそれらを独自に消化、解釈してきたDJ WADA という人物をよりよく知るには格好のアルバムといえるだろう。それほど今作は現時点でのDJ WADA 自身から、リアルにアウトプットされて生まれでた作品である。
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