アルバム冒頭を飾るスペース・アシッド・ブレイクビーツ「Baby! You Sure Like To」で爆発するロッキン特大スクリーム。ディスコ・パンクにレイヴやア
シッドを盛り込んだ「Hardcore You Know」で難波章浩( Hi-Standard x Ultrabrain)をフィーチャーする他、「Thrown Shoes」では盟友である
SHIGEO とマイ・ブラッディ・ヴァレンタインを現代的にアップデイトしたような曲を披露。盛り上がるフリースタイル・シーンの一番星、環ROY を招いた
エレクトロ・ヒップハウス「プライマル」。「Tant Pis」はフランスのクリエイター、ブリュー・ストーカーのヴォーカルを採用した憂いのあるミニマル・アシッド。
レゲエ/ダブが色濃くマッドチェスターまでもの影響が伺える「Backbeat」。TRENTEMOLLER を彷彿させるミニマル・ファンクな「MELT POINT」。ブ
ライアン・バートンルイスのMC ではじまるオルタナ風味満載の レイヴ・ミーツ・フィジェット・ハウス「After This, 〜」。JOHN DOE との「Flow
Yourself Away」ではアブストラクトで硬質なファンクと浮遊感で聴き手を振り回す。そしてアルバムは「Thrown Shoes」のアンセミックなインスト
「Throw In Shoes」で高揚感たっぷりに幕を閉じていく。
お家芸とも言える交通事故を思わせるショッキングなブレイクとスペーシーなシークエンスがふんだんに盛り込まれたことによる統一感。The Samos
を通過することで培ったバンド的なアンサンブル。iTunes 世代と共振する「食い散らかしの精神」に根ざしたエクレクティックでエキセントリックな内容で
ありながら、連綿と続くダンス・カルチャーの歴史を受け継ぐエキサイティングな内容。その二面性は彼ならではの特性と言える。
★★★★
iTunes やネットワークの発達によって爆発的に起きたシーンの新陳代謝、新世代の台頭。それはいつでもどこでも欲しい音楽が手に入るという環境
の変化がもたらしたことにより、歴史というハンディが軽減されたことでもたらされた現象でもある。NEWDEAL はメインストリームの脇道で黙々と血肉
化してきた自らのキャリアを捨てることもなく、それらを新世代のフレッシュな感性でミックスし、ポップなアルバムを完成させた。そう、『GRIMY』とは、
パイオニアと新世代に挟まれた世代だからこそ生むことのできた「メソテースな怪作」なのだ。
Text by 佐藤譲
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