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ISAM

AMON TOBIN
ISAM

UKの老舗レーベル<NINJA TUNE>に所属し、これまで世界のエレクトロニック・ミュージック・シーンに大きな影響を及ぼしてきたブラジル出身の音楽家/ビートメイカー、アモン・トビン。近年では映画音楽の製作や世界的バレエダンサー/振付師のピナ・バウシュ(2009年死去)の舞台作品「フルムーン」で楽曲が使用され、クリエイター三宅純が選曲をプロデュースする形でリリースされた同舞台のサウンドトラックにも4曲収録されるなど、エレクトロニック・ミュージックの枠を飛び越え、現代音楽の世界へもその名を広げつつある。
静と動、光と闇、生と死、混沌と美しさが同居する圧倒的世界観。4年振りにリリースされるニュー・アルバム『ISAM』は、フィールド・レコーディングという手法を駆使し自然の中から生まれた音を完璧にコントロールし、新たなサウンドとビートを構築、アモン・トビンのキャリアの集大成とも言える大作となった。生命の誕生を連想させるエモーショナルな楽曲や、ビートが地を這うように不気味にうごめくトラック、エレクトロニカ的なサウンドに接近したアンビエントなトラックまでをも収録。またアモン・トビン自身も初のヴォーカルを披露している。今作では、フィールド・レコーディングからスタートし、そこで得た様々なサウンドを合成させて、演奏可能な楽器を作り上げることから制作プロセスが始まったという。そうして複数の楽器を作り上げ、アルバムを完成した。「自然から生まれた音をコントロールするというのは、これまで音楽を追究してきた中でも、圧倒的にエキサイティングな進化だった」とアモン・トビンは語る。
創作者の溢れ出る興奮と絶対的な進化が伴って完成させた新作『ISAM』は、過去作品に比べて、知的にも、感情的にも、音楽的にも厚みと深みを増している。また本作は才能溢れる、新進気鋭の若手アーティスト、テッサ・ファーマーとのコラボレーション・アルバムでもある。ロンドンでは<ISAM: Control Over Nature with Amon Tobin>という2人のエキシヴィジョンも行われる予定だ。アートワークを担当した彼女の作品は、植物の根や葉、昆虫などのオーガニックなマテリアルを駆使し、僅か1cmの極小の彫刻作品を創作する。その作品から放たれる生と死の感触が、アルバムの世界観をより強く印象づける。一度聴いただけで、聴く者の細胞が、サウンドの中を漂う美しさと恐怖、回想、臆測といった要素と反応して音を立てているかのようだ。混沌としながらも美しく、神秘的で躍動感溢れるその音楽世界はこれまでに類を見ない傑作となっている。なにより、アモン・トビンの"サウンド"に対する理解能力の高さが際立っている。『ISAM』を一度聴けば、これが説明不要の作品だということがわかるだろう。アモン・トビンが再びエレクトロニック・ミュージックの頂点に君臨し、シーンに新しい可能性をもたらす事を確信させられる傑作が誕生した。