アシッド・ジャズの伝説Us3の元リード・ヴォーカリストとして知られ、これまでリリースした3枚のソロアルバムや、アナンダ・プロジェクト、キング・ブリット等の海外勢から日本人アーティスト、Kenichiro Nishihara、 Slowly等の作品にゲストヴォーカルとして参加し、ソウルフルでジャジーな歌声が世界中のクリエーター&リスナーを魅了し続けるアリソン・クロケットの4枚目となる新作!
本作はアリソン・クロケット自身の3枚目のソロ・アルバムであり、今までと比べ遥かに、最も野望に燃えている作品だ。2004年に発表した『On Becoming a Woman』は女性としての成人期に成長する過程を探検し、2007年にリリースした『Bare』はアリソン自身のファンに対するラヴレター的な作品でした。本作の『Mommy, What’s A Depression?(ママ、不況って何?)』では、包括的に今の世界情勢の現状を徹底的に物語ろうとしている。アリソン曰く「今は、とても厳しくて、騒然とした時代だ」またこう語る「何人かは、この我々が生き残ろうとしている数年を“大不景気”と呼んでいるが、しかし黒人社会の2割が失業中で、私も含めて2割2部のアメリカの住宅所有者がそれぞれの住宅ローンに支払いが間に合わせていない状況であり、そしてあまりにもアメリカの政治システムの機能が麻痺している中、既に科せられている負債の支払いの行方でさえ政治家間ではどうすべきか決める事に合意出来なく、今本当は不景気よりも不況だとは思う」。
昔のブルースやジャズの歌手(例えば、ベッシー・スミス「Need A Little Sugar In My Bowl」やビリー・ホリデイ「Strange Fruit」を連想して下さい)がより保守的な時代で性や人種差別等の際どい主題を訴えるために隠喩や二重の意味を引用しているのと同様に本作でアリソン自身は、自ら作曲した曲と選別したカヴァー曲の組み合わせで、例えば行き渡る所得不公平さ、政治不信、また戦争、移民政策、気候変動、都市内での(スラム街の再開発による)高級住宅化といった刺激的な主題についての想いを鋭敏かつ力強く物語り、本作に収録されている心を動かされる15曲の中で披露している。 ヴァイナル盤が普通に発表されている時代の名作のコンセプト・アルバムのように、本作は2つの別の区域又は昔言われていたような“面(サイド)”で試聴するように設定されている。サイドAでは、妥協しないソウル/R&Bサウンドがフィーチャーされ、サイドBではアリソン自身がジャズのルーツに復帰し、サンプルやエレクトロニックスの現世に往年のジャズ・サウンドを前進しようと試みている。アリソン曰く「子供の頃、父はいつも夜になると一晩中アルバムを聴き続けていました。父のお気に入りのアルバムの多くは両面を聴いていたが、しかしその中でも一つの面よりも裏面が好きだった時もありました。そんな理由で私の父に因んで、2つのかなり違う個性が存在するアルバムを創造するのが素晴らしいかと思い、そんなアルバムを制作しました」。アリソン・クロケットは、政治的なアウェアネスを呼びかける力強い叫びを本作『Mommy, What’s A Depression?』で唱え、流行を仕掛ける社会の予言者として4年間の休止から音楽シーンに復活を告げる。