aSymMedley (ALTZMUSICA)
ボアダムスへの参加(1997 年から2002 年)、日本の実験音楽のパイオニア的存在、
小杉武久のサウンド・パフォーマンスへの参加、 竹村延和とのコラヴォレーションはじめ、音楽、音響のみならず、絵画、彫刻やCG, 映像など多岐に渡り活動しているマルチプロデューサー、和泉希洋志によるニュープロジェクトがaSmMedley (アシンメドレー)。
和泉希洋志の音源は当時のダンスミュージック界に大きな衝撃を与えた97年のREPHLEXからのシングルリリースをはじめ、2000 年Childisc から「OrangeSunshine」、2004 年にPEACE RECORDS から「Protocol A」と2枚のソロ・アルバムがある。
そして2011年4月、ALTZMUSICAより初のaSmMedley名義の作品として12インチアナログ、"Akashic Rain"(AM003)をリリースし、緻密な数理的マジックで構築する唯一無二のサウンドによって6年ぶりにその存在をシーンに示した。
[トラックリスト]
01. Mirror IN...
02. CHORD ANARCHY
03. TWotiNo
04. CuBewaNo
05. Helio Sphere
06. ARE Cibo
07. Suzy Mix
08. UR Sky
09. Marimba Extract Mix
10. FNC (Heatstring Mix)
11. Ocean Grid
12. WAVE S P Y #
[インタビュー]
―まずは今までの経歴を教えていただけますか?
出発点は香川県で、1982年、14歳のときに友達からSex Pistolsのレコードを借りて聴いてたんですが、回転数をまちがえて聴いていて、これがニューウェーブかと興奮してたんです。その勢いでバンドを結成してライブ活動と、SOME PRODUCTというカセットマガジンを作ったりしてて、すべては間違いから始まったという感じです。
その後大阪に移ってボアダムスのATRとCaptain BeefheartとKing Crimsonを足して爆発させたようなバンドをやろうと「Ribbon The Lunch」というバンドを結成して活動してたんですが、のちにメンバーが変わって「Universal Errors」になってアルバムが1枚出ています。その後ソロになるまでアシッドジャズやアブストラクトヒップホップのバンドに参加したり、テクノや実験音楽のユニットで活動したりしていました。
バンド畑出身なのでクラブミュージックには最初はかなり抵抗があったのですが、The KLFの馬鹿馬鹿しいゲリラ的な活動やUR、Warp Recordsのインテリジェントテクノなんかで一気にのめり込んで、サンプラーを購入してカセットテープにオーバーダビングしてトラックを作って遊んでたりしてたところ、知人からRolandのMC303を譲り受けることになって、初めてプログラミングして作ったトラックが、イギリスの"Rephlex Records"からリリースされてから、本格的にソロでの活動に移行していき、今回で3枚目のアルバムになります。
ミュージシャンの方から声をかけてもらえることが多くて、今までのリリースもすべてミュージシャンのレーベルからで、展覧会を見に来ていただいた小杉武久さんからパフォーマーとしてコンサートに誘っていただいたり、
ボアダムスのサポートとして電子音を担当させてもらったり、いろいろと貴重な体験をさせてもらっています。
―今回はすべてライブとのことですが、使用された機材を教えてください。
今回の使用機材はMac Book Pro、AKAI APC40、Vestax VAI-80です。MacではAbleton LIVEを動かしてます。
基本のトラックとピースがいくつかあって、ミックスしながら時間が流れていくような……。
―このライブ中に演奏されているのは、すべてアルバムの楽曲ですか?ほかの楽曲もあれば教えてください。
このライブ音源にはアルバムの曲は入ってなくて、アルバム制作後のライブのために書き下ろした曲がほとんどです。
基本的にライブはできるだけ毎回違う感じでジャンルやスタイルを横断しながらも、統一したイメージをキープできたらと思っていて、ビートレスのアンビエントセットやBPM90位のロービートのときもあります。ライブではハプニングを大事にしているところもあって、当然失敗するときもあるのですが、あまり気にせずに緊張感を保っていけるように心がけています。
―なるほど、そうなんですね。これだけのことをすべてライブでやるのはすごいと思います。アルバムジャケットのような光景が眼に浮かぶような、雄大な内容になっていますが、何をイメージされているのでしょう?
小さいときから言語表現が苦手で、会話なんかがうまくできなかったりコンプレックスになってて、最近読んだ発達障害の本で分かったのですが、視覚優位と聴覚優位の人があって視覚優位の所を読んでいると自分にすごくあてはまるところが多くて、常に物事をビジュアルとして認知して考えるところがあり、表現にも大きく関係していると思います.
イメージをして物を作るのではなく、自然に常にイメージで物事を考えているというか、説明するのはむずかしいのですが、福岡正信の粘土団子農法(※)みたいに曲の断片、つまり種をたくさん作っておいて、気まぐれで何となくフレーズを足したり違うイメージとミックスしてみたりの繰り返しで、毎日違う曲を少しづつ手を加えて行きます。日々成長するように、曲も表情を変えながら複雑なイメージになったりシンプルになったり、そのときの気分で大きく変わって行きます。食物によって成長のスピードが違うように、直ぐに完成する曲もあるし、ゆっくりと時間をかけて完成する曲もあるし、完成せずに終わる曲もあります。
曲を作ることは特別なことではなく日常の生活の一部なので、人は普段の生活から影響を受けて成長していくように、曲にも生活の中から受けたイメージが色濃く反映しているのだと思います。それが今は都会に住んでいながら大地的で楽観的なイメージが湧いてきているのですが、それはアルバム1曲目のタイトル「Artificial Tour」のように人工的なんです。
(※粘土団子農法=さまざまな植物や野菜の種を団子状にまとめ自然環境に撒いて放置すると、自然の状態を種が察して、より適応しやすい時期に発芽するというもの)
―「種をたくさん作っておいて」とありますが、ということは楽曲のストックもたくさんあるのでしょうか? また完成させずに終わり、いわゆるボツになってしまった楽曲は、またピースごとに分解して新たな楽曲になる可能性はありますか?
はい、昔はアルバム1枚作るとHDがいっぱいになっていたのですが、今はMac Bookに1.75TBのHDを積んでいるので整理せずに作りっぱなし状態で、自分でも把握できない位、未完成の楽曲やビジュアルの断片はあります。曲を作るより整理する方が大変な状況で……、宝くじを当てるみたいに、良い断片が見つかればすぐにでも完成するのですが……。
―「常に物事をビジュアルとして認知する」というのは、そういった感性を意識していても、一般的な感覚からしたらむずかしいことだと思います。この回答を聞くと、いただいた絵を見て「なるほど」と感じる部分があるのですが、こういった絵の技術などを習得するために専門学校等に通われたんでしょうか?
中学生のときに結成したパンクバンドのレコードジャケットを作りたくて、高校はデザインやアート系の学校を選びました、陶芸や家具の制作、製図にグラフィックと幅広く学んで、高校の3年間で学んだことが今の表現の基礎になっていると思います。その後、芸大でコンテンポラリーアートを学びました。絵画は幼稚園のころ、隣に住んでいた元軍人のお爺さんに教わってました。
―普段スタジオで制作に利用されている機材は何ですか?
スタジオではMac Book ProでLOGICをメインに使っています。ヘッドフォンがSONY MDR-7506、モニターがHHB CIRCLE 5だけで鍵盤類もありません。一時はソフトもハードもいろいろ試していたのですが、あまりにもソフトやハードに依存した音楽の表現にはウンザリしてきたのですべて処分しました。
絵画なんかでは鉛筆一本で巨大で色彩を感じさせる作品を作るアーティストがいるように、何を使うかではなくどう使うかが大切で、コンピューターも便利箱ではなく鉛筆と同じ位意識せずに使えるツールになればいいと思います。今はLOGICもTape Deleyだけあればあとはいらないくらいで、GarageBandでも十分だと思ってます。
―Dommuneに出演された際、鳥のかぶりもので話題となっていたようですが、どのようなものだったのでしょうか?
僕のコラージュ作品で禿鷹がスタッズのたくさんついた革ジャンを着てる作品があって、それをアー写に使っていたのですが、せっかくのレコ発なので実写でやってみたらおもしろいんじゃないかとレーベルから提案があって。昔はオブジェを使ったパフォーマンス的なライブをやっていたので、久しぶりにやってみようと思い、急遽制作しました。基本のマスクに鳥の羽や毛を貼付けてあります。
―ではその「オブジェを使ったパフォーマンス的なライブ」とはどういうものですか?
地球をプリントしたパラソルの中に、プラネタリウムを投影したオブジェの中で、星を見ながら演奏したり、揺り椅子状のゴムボートに乗ってオールを漕ぐと音が鳴ったりするような作品に、機材を積み込んだりしてました。
http://www.youtube.com/watch?v=iyWM5cn7wi0
―今回のマスクの制作もご自分でやられたのですか?
はい、高校生のころパフォーマンス的な表現もバンドに取り入れていて、マスクや衣装なども作っていたので、何でも自分で作るD.I.Y.スピリットが基本にあります。
―アーティスト写真は、バッファロー(?)がエスキモーが着るようなファーのついたフードをかぶっているものでした。そもそも動物が好きなんでしょうか?
ビジュアルの作品でも人間が出てくることはほとんどないですね、動物でもとくに家畜をテーマにしていた時期もあって、ピンクフロイドの原子心母やTHE KLFのチルアウトのイメージから受けた影響は大きいと思います。あの人工的な自然のイメージは、今回のアルバムの質感にも反映されています。
―ありがとうございました。