REPORTS

Red Bull Thre3style Japan 東北予選

世界中のDJが技やクリエイティビティを競い合い、世界No.1 Party Rock DJを決めるDJバトル「Red Bull Thre3style」。その世界大会の出場権をかけた地方予選が、昨年の全国5都市から、今年は規模を拡大して全国7都市で行われる。今回、clubberiaでは、この「Red Bull Thre3Style」の東日本で開催される予選に同行し、各地の熱いバトルをご紹介していく。

Text : yanma (clubberia)
 
まずは、地方予選のスタートを飾った東北予選が6月8日(金)に仙台"NeoBrotherZ"で行われた。東北予選は、今年より行われ初めての開催となる。東北予選にエントリーしたのは、DJ SONIC、DJ WEED、DJTARRKEY、DJ TAZAWA、DJ MAMBOW、DJ SCAR、DJ OLD KING、DJ K-SUKEの8名。審査員は、これまでにミックスCDを通算40作品リリースし全国展開するDJ ASARI、クリエイター集団"EIGHT TRACK"よりDJ MARZ、そしてツアージャッジのDJ KOYAが務めた。そして、MCに仙台を拠点に活動するラッパー59が、スタートを待つオーディエンスをじらしながらフロアをMCで温めて、バトルがスタートしていった。

この「Red Bull Thre3Style」のルールは、1人15分の持ち時間の中で、3ジャンル以上の音楽をプレイし、「創造性」「選曲」「スキル」「ステージ映え」「フロアの盛り上がり」の5項目を審査員が採点。最終ディスカッションによりNo.1を決定する。簡単に言い換えれば、誰が1番オーディエンスを盛り上げたDJかを決めるコンテストだ。この日は、ちょうどワールドカップ予選の日本戦があり、人の入りが遅く1番手のDJ SONICは、特に難しい状況でのパフォーマンスだったかもしれない  
9、8、7…とカウントダウンから「Are you ready?」とボイスサンプリング。スターターとして、始まりの期待感を持たせながら、そこからハウス、エレクトロと気分が高揚する4つ打ちトラックで展開。Party Rock AnthemやMr Sexobeatといったアンセムをプレイし盛り上げていく。そして、ダブステップからヒップホップへ移行。持ち前のスクラッチと2枚使いのスキルを徐々に出していき、ビートを下げながらもオーディエンスをロックする。そのまま、Jump Around、Strongerへとつなぎ最後は、スクラッチの応酬でパフォーマンスを終えた。
2番手のOLD KINGは、ロック調のヒップホップで攻撃的にスタートし、即座にI Love Rock N' Rollをミックス。このロック調の選曲でオーディエンスの気持ちを掴み、California Dreamin'やLivin' On A Prayerといったロックの名曲をヒップホップ、R&Bの間に入れていくプレイだった。  
ユニークなオープニングだったのが3番手SCAR。「本日は、ご多忙中にも関わらず、ようこそおいで下さいました。このような形でお会いでき、感激の極みでございます。お待たせ致しました開演です」と声ネタからスタートし会場の笑いを誘った。その後は、スローなヒップホップでゆっくり自分のペースに持っていき、ファンク、ソウル、ディスコを経由してヒップホップへ戻り正統派なプレイを見せつけた。
4番手のDJ TAZAWAは、Hellow my name is…ネタに、自身のDJ TAZAWAのボイスサンプリングを被せてスタート。後半は、Hi-StandardやThe Blue Hearts、Madonna、Michael Jacksonをかけブースを離れ、オーディエンスの前まで来て煽りフロアを盛り上げた。  
他の出演者がラップトップを使用していた中、唯一ヴァイナルのみを使用していた5番手のDJ K-SUKE。今まで誰も使用してこなかったジャジーヒップホップでゆっくりスタートし、雰囲気をがらりと変えた。GAGLEやJAZZY SPORTSを連想する私が思う、仙台の音楽イメージのようなプレイだ。ルーティーン、スクラッチを随所に披露し、オーディエンスの反応もいい。Yusef Lateefの曲をかけるなど終始メロウなセットだった。
6番手のDJTARRKEYは、DJ K-SUKEと対称的にShinichi Osawa feat. Boaや、LMFAOといったアッパーなハウス、エレクトロハウスで応酬した。中盤からダブステップ、ロック、ヒップホップとロービートでありながら攻撃的な選曲へ移行し、終盤のOasisのエディットは、オーディエンスを驚かせた。  
7番手のDJ WEEDは、"掛け声番長"Lil Jonのダミ声と自身のスクラッチで煽り、そのままParty Rock Anthemをミックスするが、次の曲を早めに乗せることにより他の出演者とはひと味違う演出。その後も、ダンスホールレゲエをかけたと思ったらエレクトロハウス、さらにはスイングジャズへと柔軟にミックスしていく。腰で踊るどっしりとしたグルーヴを多めに、オーソドックスなクラブDJスタイルの上に成り立ったプレイだった。
そして、いよいよ最後のDJ MAMBOW。N.O.R.E.、Zapp & Roger、House of Pain、Jackson 5、Beastie Boys、DJ KOOL、The Breaksといった、クラブに行ったことがある人ならば、1度は聞いたことがあるであろうヒップホップ、ソウル、ロックのアンセムを矢継ぎ早に繋いでいく。次の曲は?次の曲は?と徐々にオーディエンスの期待値も高くなり、ミックスされた瞬間に毎回歓声があがっていく。そして、15分ぴったりに終わる最終バッターらしい終わり方に大きな歓声があがった。  
そしてこれから審査があるのだが、そちらにも同行させてもらった。別室で行われた審査は、想像以上に緊迫した雰囲気があった。「創造性」「選曲」「スキル」「ステージ映え」「フロアの盛り上がり」の各項目には、点数を振ることになっているのだが、この点数はあくまで指標の1つ。ここからは3人の審査員同士のディスカッションで1人を選出したのだが、審査時間のいっぱいまで真剣なディスカッションは続いていた。

そして約30分にも及んだ審査が終わり、東北地方代表の座を勝ち取ったのは、DJ SONICだった。DJ SONICがステージに上がり「嬉しいです。本当にありがとうございました」と嬉しそうな笑顔を浮かべながら謙虚に答えると、大きな拍手が彼に降り注いだ。「1番手ということには、正直不安があった。でも普段やっていることや、練習したことをしっかり出したかった。みんな巧かったんで、全力を尽くすことに集中した。決勝の大阪では、その場その場にあった選曲をして、お客さんとの対話を楽しめるようにしたい」とは結果発表後のSONICのコメント。また、ツアージャッジのDJ KOYAはDJ SONICの勝因について、「実力も均衡していて甲乙をつけるのが難しかったが、彼は選曲も良く、パーティーのコンセプトである"NO.1 PARTY ROCKER"だった」と話した。

こうして、Red Bull Thre3styleの東北予選は終わった。イベント終了後にラウンジでいろいろな人に握手する時の屈託の無い笑顔を見ると、約1ヶ月後に行われる大阪"JOULE"での決勝戦までには、もう一回り成長していることだろう。