11月23日(金)に幕張メッセで開催された「electraglide 2012」。エレグラは2000年に初開催し、2009年<WARP>の2周年をかねて開催されて依頼、3年ぶりに復活を果した。
3年ぶりに復活ということで、開催発表直後から多くの音楽ファンやメディアの間で話題となり、追加発表があるたびにSNS上がエレグラの話題で埋め尽くされていた。今までの歴史とイベントのブランディングはやはりすごい。さすがエレグラ!と思いながら、私も刺激され絶対に遊びに行こうと決めていたし、Amon Tobin、Squarepusher、Flying Lotus、Four Tet、Andrew Weatherallなど、まさに全てがヘッドライナーと言っていいラインナップだっただけに開催を待ち望んでいた。
Text : Tamotsu Sasaki, Takaaki Shimofuri
Photo: Masanori Naruse, Teppei, Tadamasa Iguchi
22時頃会場に到着すると、すでに多くの来場者が列を連ねていた、ちょうど今回の注目株AMON TOBIN ISAM LIVEを目当てに来場のピークが始まった頃だったのだろう。入場し1番始めに思ったのは、会場内が暗いということ。演出が凝ったアーティストが多いため、極力光量を控えているのかと思いながら会場内をぐるりと回る。まず目の前に大きく映し出されていた Rhizomatiks + Enlightmentによるインスタレーション、細かい来場者の写真をパネル化し、モーションダイブの様な動きをするリアルタイムと芸術が重なった作品だった。隣りのホールでは幾方向にも飛び交うムービングレーザーなど、エレグラらしい斬新な会場デザインが施されていた。
そして今回特に気になったのが、飲食ブースをWOMBやeleven、UNITなどのクラブが出店していたところだ。各ブース共に従来のお客さんや、その他大勢の来場者で賑わっていた。それぞれがプロモーションを兼ねたアイディアを持ち込んでいて良い結果が出ていたと感じた。エレグラならではのアーティストのグッズやどこのブースもコンサート並みに人が連なっていて、他のフェスにはでは、なかなか感じられる事ができない音楽+αの部分を多く感じる事ができた。
とはいえ、会場が大きいので移動が大変だ。しかも出演者は全員見たいとなれば、あっち行ったりこっち来たりで忙しいといえば忙しかった。その点、翌日"ATCホール"で開催された大阪公演は、2ステージ構成だがプレイ時間が交互にプレイしていくスタイルだったので、ある意味大阪公演の方が全体通して楽しめる点ではうらやましかった。
さて、「electraglide 2012」@幕張メッセのタイムテーブルが以下の構成。
HALL 9
21:30-22:40 Kode9
22:45-23:55 Amon Tobin ISAM
00:00-01:00 DJ Krush
01:05-02:15 Squarepusher
02:25-03:15 TNGHT (Hudson Mohawke x Lunice)
03:30-04:40 Flying Lotus
04:45-06:05 Mark Pritchard B2B Tom Middleton
HALL 11
21:00-22:00 Takagi Masakatsu
22:05-23:05 Nathan Fake
23:10-00:10 DJ Kentaro
00:15-01:15 Denki Groove
01:20-02:30 Four Tet
02:35-03:45 Orbital
03:50-05:20 Andrew Weatherall
1番始めに見たアーティストはNathan Fake、彼らしい突き抜ける様なシンセ音とうねる様なベース、そして幅広いジャンルが垣間見える展開で早くも会場は熱気に包まれていた。ちょっとしたところでAMON TOBIN ISAM LIVEを見に行こうとHALL 9へ移動するとKODE 9がブレイクビーツの様でいて不規則なダブステップで良い感じにビルドアップし、終盤には多くの人が会場を埋め尽くしていた。転換時には大掛かりなプロジェクションマッピングの設置を前にして緊張感が漂っていた。
Amon Tobinのステージは、プロジェクションマッピングで音と映像を完全にシンクロさせ、静と動、光と闇、生と死、混沌と美しさが同居する圧倒的世界観を見事に消化させた「ISAM Live」というセットの日本初公開ということで、このセットを目当てに来場した方も多いのでは。間近で体験した「ISAM Live」は、写真のように箱型のキューブが積み重なり、そこに個別に映像を投影して音と映像がシンクロしていて、視覚的に圧倒された。音楽を楽しむというよりは演出を楽しむようなステージで、Amon Tobinのガツガツのビートミュージックも聞きたかったが、これはこれで完成された素晴らしいセットだったし、あまり見れないレアな体験ができたと思う。とにかく見ていて1番圧倒されたのは間違いなくAmon Tobinだった。
少し間をあけて、HALL 9で大好きなDJ Krushのプレイが始まった。DJ KrushのDJは何度聴いても飽きないし、聴く度に新しいセットを堪能させてくれる。DJは会場や規模、雰囲気によってセットを変えるけれど、彼はそのセンスがスバ抜けている。やはりDJは、技術も大事だけれどセンスなんだなっていつも感じさせてくれる。今回は、ブレイクビーツ~ダブステップで引っぱりまくって、バッチバチのドラムンベースで会場をロックしていた。個人的に今回のエレグラで1番はめてくれたのはDJ Krush。見事でした!
ドラムンベースで汗だくになった私は、ドリンクを片手にHALL 11のDenki Grooveへ。DENKI GROOVEのLIVEが始まるとダンスミュージックを待っていたかの様にパーティーらしい雰囲気に、大きな会場映えするさすがのLIVEパフォーマンスと、往年のテクノ節に会場は沸いていた。とにかく後ろの後ろまで人で埋め尽くされており、この日1番の満員記録を作ったのはDenki Grooveだったと思う。
さて次は、HALL 9のSquarepusherへ。今回のライブも4月に開催された「SonarSound Tokyo 2012」と同様のLEDシンセサイザーセットを披露。時にノイジーで攻撃的に、時にキラキラした浮遊感たっぷりのサウンドを展開し最後まであきさせない。ニューアルバム「Ufabulum」収録曲が中心だったが、後半にはベースを手にとり、LEDとベースがシンクロする場面も見られ、名曲"Journey to Reedham"も披露し、熱狂的なファンを狂わせていた。もしかしたらSquarepusherことトム・ジェンキンソンはロックスターの域に達したかもしれない。そう感じてしまうほど、あの会場の熱狂っぷりは、すさまじいものがあった。
Squarepusherの終わるちょっと前に、HALL 11のFour Tetへ。人はまだらな感じながらも確実にフロアをロックしていた。ゆっくりとしたビートながらも幻想的で壮大感のある音、今回のラインナップの中でこそ、演出や音の派手さは引けるが居心地の良さに完全にはめられ踊り続ける。中盤以降SQUAREPUSHERも終わり続々と人が押し寄せる、そして次に待ち構えるORBITALへと繋がる良い意味で本当に夜のビルドアップだった。
ヘッドライトをした2人組が現れると会場は歓声に包まれた。ORBITALの中でも名曲、HALCYONで会場のボルテージは最高潮に。いつみてもブレないパフォーマンスでクラウドをロックしていた。ライブが始まる様に間に合わせもう一方のHALLに移動し始めると同じ様に移動する人も多く見かけた。FLYING LOTUSのLIVEでも特に気になっていた3layerという演出、スクリーンが重なったかの様なヴィジュアルに、彼の広いバッグボーンから繰り広げられるライブはとてつもないスケール感で、全てのジャンルという壁を飛び越えたモノだった。超越されたパフォーマンスに圧倒されるも、どこか踊り足りなさを感じていたのでelectraglideといえばANDREW WEATHERALLと急ぎ足でHALL 9へ。
ORBITALの後と言う事もあった興奮冷め上がらないフロアーを察知してか、序盤からバレアリックでアシッド感のあるトラックを連発、フロアーは完全にANDREW WHATHERALLの世界観に飲み込まれる。怪しく、そして高揚感のあるフロアー、時間を忘れさせるDJ of DJなプレイに身を委ねた。
7月は、フジロックの会場で開催の発表を知って4ヶ月。ようやくこの日を味わうことができた。音楽的には、コアなことをやりつつ、これだけの来場者数と満足度があったという事実は、非常に意味深いことだろう。提供と提案。エレグラには、音楽/アーティストを提案し、ストレスレスでおもしろい空間の提供があった。来年もまた開催されるのだろうか?おそらく、あの会場にいた多くの人が、開催を望んでいるに違いない。だから開催の発表を2013年も楽しみに待っています。
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