今年で3年連続での開催となったSonarSound Tokyo。最初は「Sonar」を物珍しく感じていたが、今では春フェスの1つとして定番化してきたように思うし、SonarSound Tokyoの存在は非常に意味深いものだと感じている。このSonarSound Tokyoが、もたらしてくれるものとはいったい何なのだろう?
振り返ってみると、2011年は震災の影響で多くの外国人アーティストが来日不可になり、かなり急ピッチでラインナップが再編成されたので、当初の見え方とは違った開催だったかもしれない。いっぽう昨年は、Squarepusher、Clark、Global Communication、The Cinematic Orchestra、Vincent Gallo、Mount Kimbie、Rustie、Hudson Mohawkeなどが出演し、トピックスが豊富な年だった。そして今年は、新旧対決ではないが、時代の先駆者とこれからを担う若手クリエーターの対比が特に濃く、いままで以上にアドバンスドミュージックを提案した年だったように思う。
その1番顕著な例が、大阪のレーベル"Day Tripper Records"のレーベルショウケースが行われたことではないだろうか。"Day Tripper Records"は、ネットで活動するアーティストの音楽をフィジカルでリリースし、ネットユーザーと一般のリスナーの架け橋となる活動を展開しており、レーベルオーナーのSeihoを筆頭に主に20代で構成されたこれからが楽しみなレーベルだ。バックカタログのクオリティーも高く勢いもあるが、これで土曜日のタイムテーブルの半分を彼らに準備する運営陣の意気込みに感服だ。ただ、彼らのパフォーマンス、特にSeihoの時の盛り上がりを見ると、このSonarSound Tokyoは、"Day Tripper Records"のためにあったのでは?と思ってしまうくらい熱量があの場にはあった。
ここでSonarSound Tokyoのおもしろいのが、"Day Tripper Records"の若いエネルギーを見ながらアリーナへ行くと、90年台初期にブリープハウス(テクノ)を確立したLFOが、懐かしい鳴りのテクノをバチバチのLEDをバッグにパフォーマンスしている。わずか20メートル歩くだけで、約20年の時間を超えれる。それほど高水準のクオリティーで新旧の音が入り混じっている空間が他にあるだろうか?LFOが終われば、イギリスでもっとも先鋭的なレゲエ/ダブを送り出してきたAdrian Sherwoodとブリストル・ダブステップの王者Pinchによる年齢差20歳以上のユニットが轟音を浴びせ、若くしてトップアーティスト/プロデューサーの座に上り詰め、人生の半分の音楽キャリアを誇るBoyz Noiseのプレイを聞くとエレクトロはもう終わったのではなく、進化しているということに気付く。翌日には、私自身馴染みがなかったDarkstarだったが、今年のベストアクトだと思えるパフォーマンスに出会えたり、もっとも注目されていたNicolas Jaarが裸の自分を曝け出すかのようなライブ、そしてデビュー25年目にしてソロアルバムをリリースしたKarl Hydeは、彼ならではの歌声をじっくり聞かせる染み込むパフォーマンスをしてくれた。
フェスやイベントで、いわゆるビッグアーティストの名曲で盛り上がるのも楽しいが、あまりよく知らないけどめちゃくちゃかっこいい音楽を見つけてしまった!と、密かに感動するのも楽しい。SonarSound Tokyoは、特にこの後者のような体験が多いフェスティバルだ。そして他のフェスティバルに比べ新しい音楽を日本に取り入れ、風通しを良くしてくれるフェスティバルでもあると思う。"Day Tripper Records"をピックアップしながら、音楽の歴史の1つであるLFOやAdrian Sherwoodも聞ける。固く言ってしまえば教育になるかもしれないが、これほど今の日本の音楽シーンに音楽を世界的視点で提案してくれるフェスはない。音楽を人生の中で長く楽しむこと。それは、SonarSound Tokyoに出演したようなアーティストの音楽をじっくり聞いてみることなのかなとも思う。
最後に、現時点でフジロックにKarl Hyde、Boys Noize、Darkstarの出演が決定しているので、今回見逃した読者の方は、ぜひ苗場で見てほしい。
Text : yanma (clubberia)
REPORTS