今春に新国王即位の式典でDJArmin van Buurenがトランスをプレイした事が世界中で話題になったダンスミュージック大国オランダのアムステルダムにて、世界最大のダンスミュージックの祭典「Amsterdam Dance Event」(ADE)が10月16から20日の5日間に渡って開催された。
ここ数年は国の支援を受けながら徐々に規模も大きくなっていき、今年は政府からの金銭的な支援が無く各イベントの入場料を値上げせざるを得ないという向かい風の中、過去最高の75カ国から30万人以上が参加するという盛り上がりを見せた。
Photo&Text : Kotaro Manabe (WAKYO)
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会期中、連日大小115カ所の会場で行われるクラブイベントはイビザのサマーシーズンさながら、平日の夜でも満員御礼の盛況ぶりで前売券が完売し、当日の入場が出来ないイベントも少なくない。イベント数は300以上におよび、出演アーティストの数2,156名と圧倒的な規模になる。また、ADEが他のイベントと異なるのは、5日間クラブイベントだけではなく、ダンスミュージックに焦点を充てた会議やパネルディスカッション、ワークショップなども開催される為、フェス目的のツーリストだけではなく、世界中からダンスミュージック業界の要人たちが一同に集ってくる。夜のクラブクルーズリポートは、これに限らずどれも「誰々がプレイした」とか「盛り上がっていた…」などといったありきたりな物になりがちなので、クラブの模様は最下部のフォトギャラリーでヴィジュアル的に紹介するとして、今回のリポートはカンファレンスにスポットをあて紹介させて頂こうと思う。
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カンファレンスはADE PRO/ ADE GREEN / ADE BEAMLAB / ADE UNIVERSITYと、大きく4つのカテゴリーに分けられ、ダンスミュージックシーンでのビジネス発展に役立つ国際会議的な内容の堅いものから、有名DJやアーティストを招いてのトークイベント、直接アーティストに質問が出来るQ&A、今後音楽業界に身を投じようと考えている学生向けのカンファレンスなど多種多様に150を超えるプログラムが用意されており、人気アーティストが登壇するプログラムには、入場制限がかかるほどの注目を集めていた。
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そんな中、最も印象的だったプログラムが『Focus on Eastern Asia』だ。日韓中台4カ国のクラブシーンの現状が語られたこのカンファレンスにて、司会進行のオランダ人ホストから開口一番の質問が『ダンス禁止問題』だった。オランダ政府が発行する観光案内にも紹介され、国策としてダンスミュージックを推奨する姿勢は、日本の置かれている現状とは真逆。日本の風営法はワールドスタンダードを無視した非常識な悪法という様相にうつり、世界の人々の失笑を買うこととなった。
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そして日本同様に政府の締め付けの中、シーン拡大に奮闘してるのが中国マーケット。人口も多く、年々コマーシャルなシーンは大きくなる一方、クラブは毎年のようにつぶされている状況だという。シーン自体は都市によってさまざまではあるが、上海のクラブは白人の姿ばかりが目立つ一方、北京では若い中国人たちがクラブに出入りするシーンが育ってきている。そんな中、中国でのクラブシーンの未来について訊かれると「YouTubeもFacebookも政府の規制で閲覧出来ない検閲の状況が変わらない限り大きな発展を期待する事は出来ない」と憤る。
一方、台湾の政府はダンスミュージックシーンに寛容で、台湾政府がシーンをサポートする動きも見られるという。
韓国は映像を持ち込んでの現状報告を行っていたが、ロックシーンからの流れを組んだEDM的なオーバーグラウンドなダンスミュージックがムーヴメントを引率している趣があり、東アジアの中では最も勢いがあるようにも映った。特に今年のADEのオフィシャルスポンサーはSUMSUNGと言う事も追い風になっているのかもしれない…。近隣諸国のクラブシーンの状況を語り合えるとても貴重で有意義な機会となった。
前途したように世界75カ国から30万人以上が集う中、日本からオフィシャルプログラムへの参加をしていたのは、カンファレンスのパネリストとしてavexのNObbyuNO氏。また、唯一の日本人オーガナイザーとしてWAKYO&Vastが最終日のオフィシャルイベント「Sunday Sunset Sushi Session」なる音楽だけに留まらず、日本の食文化をフィーチャリングしたイベントを開催し、用意された寿司100人前は大好評につき完売、新しいスタイルのダンスミュージックと食のコラボレーションが話題となった。
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7年後の東京オリンピックに向け、日本でのダンスミュージックへの規制や締め付けはさらに厳しくなると言う意見もあるが、そのような流れはこれから活躍して日本を支えてゆく若者の新しい視点と発想を育む文化的活動の芽をつぶしてしまう事にもなりかねない。ダンスミュージックシーンでチャンスを掴もうとする若い才能は海外に目を向け、日本を捨てるであろう。それは単に観光収入など経済効果面や目先の課題以上のマイナスになるという事を真剣に考えるべきである。昨今では「クールジャパン」などというキャッチコピーを掲げているが、ダンスミュージックシーンに対して政府がとっている対応は全く持ってクールでは無い。
そんな日本の状況を少しでも良くするためにも、ADEのようなイベントに足を運び、情報交換や外部からのインスパイアを受けたアイディアを持ち帰ってくる事は、日本の現状を少しでも良い方向に進める糸口になるのではないだろうか?
日本からの参加はもちろんのこと、東アジアからの参加者もまだまだ少ないという感じもするが、少ない分圧倒的にアジア人は目立つので、チャンスは大きいとも考えられる。
カンファレンスルームにはいくつものミーティングエリアも設けられており、
ビジネスミーティングも盛んに行われている。
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DJやアーティストがレーベルやオーガナイザーに売り込むのもよし、日本のプロダクトを海外マーケットに売り込むもよし、単に連夜のイベントを体験するだけもよし。さまざまな立場から多様な楽しみ方と活用方法が見出せるADE。2014年の開催時には是非参加してみてはいかがだろう!?
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