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Red Bull Music Academy Weekender Tokyo Opening Party

Red Bull Music Academy精神の本質を唱えながら独自の視点でキュレートし、そのエッセンスを詰め込んだコンサート、トークセッション、クラブイベント、そして文化交流を体験することを目的とした"創造性を刺激する"音楽カルチャーの祭典「Red Bull Music Academy Weekender」が、ここ日本でも11月文化の日を含む週末に国内外のアーティストを迎え都内数箇所で同時開催された。そして、オープンングパーティーとなったこの日は、日本のエレクトロニックミュージックの歴史の中で最も稀有なパーティーなものだった。

Text : yanma (clubberia)
(C) Pere Masramon/Red Bull Content Pool
   
オープニングパーティーの詳細が発表され、ニュースで紹介すると同時に瞬く間にSNSを通じ広がった。人々の興味を引いたこのパーティーは、ハウスシーンにおいて現在、最も高い人気を誇るアーティストと言えるHenrik Schwarzの代表曲を日本の若手交響楽団(27人編成)が演奏するというもの。これだけでも十分なトピックスなのだが、そのパフォーマンスを行うのが日本を代表する寺院"築地本願寺"の本堂というのには驚きだ。コンピューターミュージック世代の音楽家が挑む、まったく新しいオーケストラコンサートとなる。
会場となった"築地本願寺"は当日に幻想的なマッピング映像が投影されており、寺院という高貴なものから全くの異空間を作り出しており、これから始まることへの期待をよりいっそう高められた。
 
 
コンサートは本堂で行われた。線香の香りが漂い背筋が伸びる空間の中、黄金に輝く仏壇の前に組まれたステージ。コンサート中は携帯電話の電源を切るようアナウンスされ、最初にオーケストラが、そしてコンダクターとHenrik Schwarzが入場してきた。Henrik Schwarzの挨拶が終わり、彼がステージを離れるといよいよ演奏がスタートしていった。

この日、演奏された曲目は、下記の7曲。

01. Wark Music
02. Marvin
03. Leave My Head Alone Brain
04. In Bjorndal
05. Clouds Are Gone
06. Walk A Mile
07. I Exist Becaucse Of You

そして27人のオーケスト編成は、下記のようになっている。

Conductor:1人
Violin 1:5人
Violin 2:4人
Viola:4人
Cello:3人
Contrabass:1人
Flute、Bass Flute & Alt Flute:2人
Oboe D'Amore & Englischholn:2人
Basset Horn & Bass Clarinet:2人
Bassoon:2人
Marimbaphone、Vibraphone、Xylophone、Castanet、Timpani、Bass Drum & Snare Drum:2人

   
エレクトロニックミュージックをオーケストで再表現するということに対してどのようなものを提示してくれるのだろう。オーケストラの演奏というと、どうしても壮大でハーモニー豊かなものを想像してしまう。彼の提示したものは、まったくその逆だと私は感じた。それは悪い意味ではなく、エレクトロニックミュージックのミニマルという要素のように思えた。ダイナミックなストリングスを作り出すのではなく、各楽器の音色を素材と捉え視覚的にいうとシーケンスに組まれるMIDI記号とでも言うべきだろうか。ビートだけあれば踊れるようなエレクトロニックミュージック、それを各楽器がビート/リズムの役割を担い、音楽を音楽として表現するのではなくサウンドとして捉えているようにも思えた。特に「Clouds Are Gone」「Walk A Mile」は、オリジナルが好きだというのもあるが、オリジナルとのバランスもよく、鳥肌がたつほど美しかった。また、音が小さかったという声も終わってから聞こえてきたが、もともと彼の音楽は、ボリュームを必要としない音楽のようにも思える。クラブの大音量で浴びるというより、ベッドルームで聞いても成り立つ音楽だと思うので、私自身意図的にやっているように思えた。そして、視覚的なことを挙げるとすれば、オーケストラの無駄のない統率された動きは、電気信号のように正確で美しかったのは印象的だった。
 
 
約1時間に及ぶパフォーマンスが終了し、たくさんの拍手の中「Red Bull Music Academy Weekender Tokyo」は幕を開けた。本堂を出て振り返るとマッピングされた幻想的な築地本願寺の大きな扉から続々人が出てくる。その光景は、この世とあの世を繋ぐとまでは言うつもりはないが、まるで別次元の空間から、この人たちは戻ってきているように見えた。そして、これから夢のような3日間が始まった。