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Red Bull Music Academy Weekender Tokyo - EMAF TOKYO 2013 DAY 1 –

想像と現実がかけ離れることは、ある程度経験を重ねてきた大人ならそのギャップは少なくてすむ。だが「EAMF TOKYO 2013」、いわゆるエレクトロニカという音楽は想像と現実のギャップに驚かされたイベントだった。

Text : yanma (clubberia)
 
 
2日間にわたって行われた「EAMF TOKYO 2013」。初日は、電子音響の名門〈raster-noton〉のNo.1、Carsten Nicolaiのレクチャーからスタートした。このレクチャーは、RBMA特有のワークショップの1つ。過去、ミニマルミュージックを代表する作曲家Steve Reich、Jeff Mills、Erykah Baduまた日本でも人気のMoodymannが女性にへアメイクをさせながらレクチャーを行うなど、全世界の音楽家が注目するレクチャーだ。今回は、Carsten Nicolaiということもあり、質問も多岐にわたった。東京について、影響を受けた音楽、周波数、音と脳、坂本龍一、色、などなど、、、さまざなことについてトークが繰り広げられた。特に印象的だったのが、音には、実際全く同じ音だとしてもその場の環境や状況で違う音になると説明していたことだった。それは、同じ音でも気持ちがいい時と嫌な時があり、その差が生じるのは、その時の脳の状態によるというもの。音を聞いた時にふと本当に存在する音なのか、脳が作り出した幻聴なのか気になる時があるから、彼は常に音量測定器を持ち歩いていると言っていた。音量測定器を持ち歩くのはさすがだなと思うが、今まで全く意識をしたことがない音の解釈だった。
 
 
レクチャーが終わり、原宿で行われた「Culture Fair」へ行っていたので暫く会場を離れた。戻ってきた頃、LIQUIDROOMでは、world’s end girlfriend & Another Alchemyがパフォーマンスを行っていた。荒々しく複雑に聴こえるがどこか様式美や規律を感じる日本人の特有の世界観があるパフォーマンスだった。そして、次はμ-Ziq(ミュージック)。静かながら太い低音とシンプルな構成のビートから立ち上がる。ゆっくりとビートを壊し、複雑に組み上げていく。終盤には、メロディアスの要素とビートの疾走感を強調させるかのように、名曲「Hasty Boom Alert」「Brace Yourself Jason」「Lexicon」を立て続けに披露。ここまで作り上げられた世界観と自身の気持ちが同期してくるようだ。約20年以上にも及ぶキャリアの中なせる説得力溢れるパフォーマンス、そしてAphex Twinをはじめとするμ-Ziqのようなアーティストが作るビートに音楽概念を壊された世代には、彼の音楽は懐かしく今も新鮮なままだった。
 
 
そして、Carsten NicolaiことAlva NotoとByetoneことOlaf Benderが結成したユニットDiamond Versionのパフォーマンス。レクチャーの時とは、うって変わって激しいアクションとその動きが示すかのようなヘヴィーなインダストリアルテクノサウンドに、ただただ襲われた。そして中盤から伊東篤弘が登場し、蛍光灯をギターのように操る自作楽器オプトロンでよりいっそう会場を盛り上げた。

音圧で呼吸ができなくなるような感覚になるので、Diamond Versionの途中でフロアから離脱しモニターに映る彼らと、うっすら聞こえてくる音楽を聞いていた。いわゆるエレクトロニカという音楽を聞いてこなかったわけではないが、そういえばきちんと現場で体験したことは少なかった。CDや配信サイトで購入する音楽を、現実から仮想現実へ変換したものと解釈すると、現実(現場で聞く音楽)とのギャップは、おそらくどのジャンルより大きいだろう。知的でいて強暴。ベッドルームミュージックでありフロアミュージック。「やばい、やばい、息ができない」と笑顔で駆け寄ってきた友人の言葉と行動がまったく合っていないように、おもしろい音楽だ。