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electraglide 2013

冬の一大フェスティバル「electraglide」が、昨年と同会場である幕張メッセで開催された。今年は出演アーティストを絞られ、ワンフロアで構成されたことが昨年と大きく違う点だった。巨大な空間に向かい合うように組まれたステージ。アーティストは、交互にパフォーマンスをしていくわけだが、これが実際によかったと思う。昨年は、別件でエレグラへ参加できなかったので、比べることはできないが、出演アーティストが多く、ついつい欲張り、いろいろ見ようとするとどうしても純度が薄くなってしまう気がする。「○○を見た」「かっこよかった」という、よくありがちな体験談になってしまっているように思う。今回のエレグラはフェスにしては、出演者は少なかったが、フロアが1つしかないので自然と純度が高められる環境だったと思う。

Photo : Masanori Naruse, Tadamasa Iguchi, TEPPEI, 宙大使☆スター 
Text : yanma (clubberia)
今回、私はオープニングアクトのNosaj ThingからTheo ParrishがBlue Mitchellの「I didnt Ask to be」をラストにかけるまで、ほぼ全てのパフォーマンスを通して見ていた。
20:30から始まったNosaj Thingと真鍋大度×堀井哲史×比嘉 了のパフォーマンスは、どういったものになるか大変興味深かった。エレグラのオフィシャルサイトで紹介されていたような動画の演出ではなく、Nosajを3台くらいのカメラで取り囲み撮影しながらその映像を素材にし加工しながらVJとしてスクリーンに映し出していた。パフォーマンス後のRed Bull Music Academyでレクチャーを行った真鍋氏は、今日のパフォーマンスに関して、映像は二手に分かれて片方がVJ、片方はリアルタイムにプログラミングと、それを交互行っていたそうだ。そしてNosajが何をしているのか?というのを可視化させてあげたかったと語っていた。
 
ステージが向かい合うということは、片方がパフォーマンス中に片方は準備が行える。Nosajのパフォーマンスが終わり、一息ついたと思ったらFactory Floorのライブが始まった。個人的には、裏ベストアクトだったと思う。(ちなみにベストアクトは、次にパフォーマンスを行ったMachinedrum)。アシッディーなシンセにドラムが入りノイジーなギターが重なる。人力エレクトロニックノイズトランスとでも形容できそうだ。バックに流れている映像もファミコンがバグったような画がずっと写しだされ、よりドラッギーな印象を強めていた。
 
そして、ベストアクトだったと思うMachinedrum。最初、ビート感は抑えめに浮遊感のある美しいメロディーのトラックを集中させてから、徐々に力強いダブ/レゲエ的なビートへ。そしてダブステップなどの現行ビートミュージックへと移行していくわけだが、ビートミュージック系のアーティストのパフォーマンスを聞いていてよく思うのが、ビートが複雑過ぎたりし、ダンスミュージックとしてのグルーヴが壊れているように感じる。ただ、Machinedrumのビートは非常にスマートだ。違和感を与えない、歪みを生まないそのビートには、自然と体が揺らされる。普段メインストリームのヒップホップ、レゲエを好んで聞いている人も揺らしてしまうそうだと思えるほどだ。
   
これから、眞鍋氏のレクチャーを約1時間ほど受けに行っていたので、Adrian Sherwood & Pinchのパフォーマンスは見ることができなかったのは残念ではあったが、ここからJAMES BLAKE、2manydjsと今年のエレグラのヘッドライナーが続いた。10年代を代表するJAMES BLAKE、00年代を代表する2manydjsと音楽性は全く違えど1つのシーン、ムーブメントを作った両者。JAMES BLAKEの霞の向こうへ連れて行ってくれるような美しい歌声に耳をすましとフロアに静寂が訪れる。人気曲である「The Wilhelm Scream」、「Limit To Your Love」も披露し、来場者の期待に応えてくれたパフォーマンスだったように思う。一方、この日1番エレグラを盛り上げたのは2manydjsをおいて他にいない。音楽的要素もそうだが、音楽とシンクロする映像に釘付けになりながらも、みんな踊っていた。CDのジャケットのデザインを使用したりし、エレクトロ特有のラフさとストリート感、そしてユーモラス溢れる映像が続いた。彼らのプレイはもちろん健在で、Frankie Goes To Hollywood「Relax」、Metronomy「The Bay」、Afrojack「Pacha on acid」、MGMT「Kids」、D.I.M. & TAI「ION」、BOYSNOIZE「XTC」、Giorgio Moroder「Chase」、そして最後には、YMO「Rydeen」がかかると同時に会場に紙吹雪が舞い散り、多くの人が両手を上げた。

 
もはや祭の後のようになってしまった雰囲気もあるが、ここから、!!!、Modeselektor、そしてTheo Parrishへと続く。!!!は、ボーカルのニック・オファーが踊りまくりオーディエンスを盛り上げる。ファンクなグルーヴで踊れるライブ。ボーカルが入らない時のループ感は心地よかった。そして、横ノリから今度はModeselektorが縦ノリのダンスミュージックでがっつり躍らせる。静かめに始まったはいいものの、MCを入れながら徐々にBPMを上げ、Jeff Mills「The Bells」をプレイし、そのままテンションを上げ続けたプレイだった。
 

明け方5時。普段なら始発が動きだし、じゃあそろそろ帰るか。。。となるところ、Theo Parrishのプレイがスタートする。フロアからステージを見る限りセッティングは、ターンテーブル2台に、恐らくUREIのロータリーミキサーとアイソレーター。彼のプレイ/音楽性は、あの巨大な会場では栄えないだろうと思っていたが、案の定、序盤にジャズやファンクなどをかけるも、あまり反応がなかったように思う。ただ、そこから早いうちに歌モノのハウスへと切り替え、ほどよいテンションと心地良さで人々が踊りだし終盤まで引っ張っていった。予定より1時間も延びたTheoのプレイ。ラスト1時間くらいは、楽しくなり過ぎたのか感情がこもり過ぎたか、音を出し過ぎ割れていたが、なぜかTheoだから許せる部分もあるし、彼の感情を表した音だったように思う。そして最後にBlue Mitchellの伸びのあるトランペットが2013年のエレグラの幕を静かに下ろした。

土曜日の朝7時半。外へ出ると清々しいほどの快晴。12時間会場にいた疲れも、最後Theoで癒され岐路に着いた。今年のエレグラは、タイムテーブルが素晴らしかったと思う。Nosajが芸術的なオープニングを飾り、Factory Floorの刺激的な音で覚醒され、Machinedrumで心地よく踊らされ、真鍋大度氏の作品に関してレクチャーを受け、James Blake静寂を取り戻し、2manyに振り回され、!!!の横揺れのグルーブで落ち着き、Modeselektorで目が覚まされ、Theoで浄化された。時間にして約12時間みっちり音楽と向き合っていたが、心地よい疲れと満足感が残っていた。