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Skrillex PREMIUM SHOWCASE

2013年7月にBoys Noizeとのユニット、”Dog Blood”での公演以来、約10ヶ月ぶりにSkrillexが渋谷WOMBに来襲を果たした。

PHOTO BY STRO!ROBO
TEXT BY YUZURU SATO (HIFUMI, INC.)

   
<about Skrillex>
本名Sonny Moore。元々はFrom Fast To Lastというエモコア系ロックバンド(※1)のヴォーカリストとして活躍。声帯を痛めたことでバンドからトラックメーカーに転身を果たす。当時エッジーなダンス・ミュージックとして注目を集めていたダブステップにロックのエッセンスを注入(後にブロステップを呼ばれる)。そのハードでメロディアスなトラックとライヴで鍛えられたパフォーマンスとプロジェクションマッピングなどを駆使したド派手なライヴ演出、Zeddら若手と共に繰り広げた大規模ツアーでオーディエンスの支持をまたたく間に獲得。2012年には『Scary Monsters and Nice Spirits』で、さらに2013年には『Bangarang』でグラミーを受賞し、大ブレイクを果たした。

※1 エモコア系ロックバンド
エモーショナル・ハードコアの略。サウンド的にはパンク/ハードコアを下地にしながらも、歌心溢れるメロディを身上としたロックのサブジャンルのひとつ。Sunny Day Real EstateやJimmy Eat Worldなどが代表的なバンドとして挙げられる。
 
 
<about EDM scene>

「たった3年で人生が変わる」
 これはOne Directionを起用したdocomoのCMのキャッチコピーだったが、近年のEDMシーンでもそのようなミラクルなブレイクスルーが数多く起きるようになった。

 例えば29歳のCalvin Harris。数年前までは地元食料品店でアルバイトしていた彼は、米Rock Nation(※2)と提携したことで、今や年収46億円のスーパースターでF1やサッカー選手並のステイタスを持つに至っている。Calvinだけでない。ここ数年、多くの若手アーティストたちが瞬く間にシーンを駆け上がり、多くのサクセスを手に入れている。18歳で楽曲制作をはじめ、24歳で出したアルバム『True』がビルボード4位を記録。先日16億の自宅を購入したAviciiもその1人だろう。最近の海外の代表的な若手アーティストをリストアップしてみたので是非見ていいただきたい。ちなみに順位は2013年度のTOP ARTIST LIST 100のランキングだ。
 
Hardwell(26歳/オランダ/1位)
Avicii(24歳/スウェーデン/3位)
Afrojack(26歳/オランダ/9位) 
Skrillex(26歳/アメリカ/11位)
Zedd(24歳/ドイツ/24位)
Porter Robinson(21歳/アメリカ/41位)
Arty(24歳/ロシア/57位)
Madeon(19歳/フランス/59位)
Cole Plante(17歳/アメリカ/圏外)
Martin Garrix(17歳/オランダ/40位)

※2 米Rock Nation
Jay Zが設立した音楽レーベルでRita Oraの作品などをリリース。Calvin Harrisが所属するThree Six Zero GroupはRoc Nationと提携し、CalvinとマネジメントしているRihannaのコラボレーションを実現。アメリカでのブレイクの大きなきっかけとなった。

   
 このような若手アクトの台頭を促す基盤となっているのがEDMシーンであることは間違いないだろう。EDMとはElectronic Dance Musicの略で、音楽的にはエレクトロを基盤にトランスやベース・ミュージック、ポップスをミックスしたサウンドを指しているが、もう少し言及すると00年代初頭に台頭してスーパースターを生んだエレクトロニックミュージックシーンを、ライヴ・カルチャーと掛け合わせることで進化させ、巨大化させたシーンと言えるだろう。つまり、EDMは「Electronic Dance Music」であり、「Entertainment Dance Music」でもある。そして、この文化の魅力を発信し、ロック・フィールドにも拡散することに大きな貢献を果たしたアーティストこそがSkrillexであると言えるだろう。

 その動員力と人気の高さからギャラが高騰してしまい、日本では大型フェスくらいでしか呼べないクラスのアーティストだけに、今回のWOMBでのライヴは非常にスペシャルなもの。そのためチケットは僅か数分でソールドアウト。当日は限界を超えた熱狂を体感したいオーディエンスがひしめきあう中、Alvin Riskとの「Try It Out(Neon Mix)」(http://bit.ly/JT2dK1)で爆発的なうねりを作り上げながらプレイがスタートした。

   
 起伏に富んだ楽曲を幅広くセレクトしていくのが彼のプレイスタイルだが、最新作『Recess』が元々彼のルーツにあったレゲエの影響をベース・ミュージックで膨らませたアルバムだったことや、DiploとのユニットJack Uの影響もあってか、今回のセレクションは悪いラガ系のベース・サウンドが多め。最新曲「Stranger」(http://bit.ly/1i3CAPP)やDiploやG-Dragonが参加した「Dirty Vibes」(http://bit.ly/1i3CQOH)、Fatman Scoopが参加した「Recess」(http://bit.ly/1jy9gTR)がプレイされた瞬間には、オーディエンスは大きな歓声を上げ、それに呼応するかのようにブースの上に仁王立ちしたSkrillexはマイク片手に激しいパフォーマンス。身体がちぎれんばかりの煽りに観客の熱気は宙を漂い、フロアは早くも汗だくの状態になった。

 タイトなベース・サウンドが展開されていく中で、自身のクラシック・トラックでもあるメロウ&ハード・チューン「The Devil’s Den」(http://bit.ly/1lFqEcu)や「First Of The Year」(http://bit.ly/Rautvt)「Rock n Roll (Will Take You to the Mountain)」(http://bit.ly/1eKEerE)「Breakn' A Sweat」(http://bit.ly/1rKVb8K)をプレイし、巧みにピークを作り上げていく。その一方で、今大注目のトラックメーカーであるBotnekの「Viking」(http://youtu.be/ecIvEiEVx8Y)やDuck Sauce「NRG」(http://bit.ly/R91YOe)の自身のリミックスやMajor Lazer「Lose Yourself」(http://bit.ly/1hYCe1e)、Beyonce「Drunk Of Love(Diplo Remix)」をかける他、トラックにDaft PunkやChemical Brothersの声ネタや『ライオンキング』ネタを挟み込むなど、各トラックにはエディットが施されており、オーディエンスを飽きさせない工夫が随所に施されていた。

   
 興味深かったのはロンドン出身のデュオ、Disclosure「Latch」(http://bit.ly/1fEunm6)など、ここ最近のヨーロッパでブレイクしつつある、ディープ・ハウス系のアクトのトラックを要所で使っていたことだろう。彼自身が主宰するOwslaからもJack Beatsが「Beatbox」(http://bit.ly/1m5Ddwy)をリリースしているなど、アンダーグラウンドの息遣いをしっかり感じ取りながら進化を果たしているのは非常に興味深く、エンターテイメントとエッジーを絶妙な感覚でミックスしていく彼のプレイが、なぜ30万人クラスのスタジアムを熱狂させながらも非常にコアな魅力を感じさせるのかが理解できるような内容であった。

 最後はカルフォルニアをレペゼンしながら2Pacの「California Love」と70〜80年代に活躍したバンド、TOTO「Africa」(http://bit.ly/1dHRQk4)をかけてフィニッシュ。最後まで新旧幅広い選曲で、音楽愛を披露しながらそのハードなパフォーマンスでフロアをエキサイトさせたSkrillex。この日のプレイは多くの観客にエレクトロニック・ミュージックが今一番エキサイティングなジャンルであることを刻み込んだはずだ。