日本でも一大ブームを巻き起こしているEDM発祥の地オランダで、ダンス・ミュージックの祭典Amsterdam Dance Event (以下 ADE) が10月15日から19日までの5日間に渡って開催された。ADE開催中のアムステルダムの街は、あちこちにADEのロゴが記された旗や巨大モニュメント、特設会場が設置されており、年に1度のお祭りを歓迎していた。
Text by Mayako
Photos by Atsushi Harada, Carlos Yabuki
Coordinate by Wakyo Amsterdam
1996年に3ヶ所の小さなクラブで産声をあげたADEが、今年は過去最高の85カ国から35万人を動員。学生の秋休みも重なり、この5日間は昼夜問わず多くの人で賑わっていた。これだけの動員を記録できるのも、国策として長い時間をかけてダンス・ミュージックをサポートしてきた体制の賜物だろう。
ADE は昼と夜で違う顔を持つ稀有なフェスティバルとして有名で、昼は世界中の音楽業界が一堂に集まるカンファレンス・イベント、夜は400ものイベント数に2224名のアーティストが参加する世界最大級のクラブ・フェスティバルである。今回のレポートでは、昼間のカンファレンス会場で特に印象に残ったことを記していきたい。
ADEカンファレンスでは世界中のレーベル、プロモーター、メディア、ディストリビューター、プロデューサー、パブリッシャー、クラブ及びフェスティバルオーガナイザーなどクラブミュージックに携わる業界関係者が世界中から押し寄せ、ビジネス・ミーティングや各国のトレンド、最先端の情報交換を行っている。カンファレンス会場のひとつであるFelix Meritisの前にはADEパスを首から下げた人達が大勢集まり、お互いが久しぶりの再会を楽しみ、談笑している姿をよく見かけた。「ADEに来れば普段は顔を合わせることなく仕事をしている多くのクライアントと直接会うことができる。こうやって直接会うことで、新しいビジネスの話や今後の関係を向上することができるんだ。」と、オランダの音楽流通企業Astral Musicのスタッフは語る。
今年のカンファレンスはPlaygroundと呼ばれるワークショップが特に充実していた。ダム広場の近くに新しく設立されたカンファレンス会場De Brakke Groundでは、Pioneer DJやNative Instruments、Ableton Live、Novationの音楽機材を自由に触れることができるワークショップが15日から18日まで終日開かれており、会場内はDJやプロデューサーを志す若者で溢れ返っていた。また、Sander van Doorn、Nicky Romero、Junkie XL、Chris Liebing等の有名 DJやアーティストを招いての音楽機材に関するトークイベント、Q&Aなどのプログラムが用意されており、シーンの拡大と育成を支援。特に、Chris Liebingが作曲時に使用しているMaschine (Native Instruments)を目の前で実演、解説するプログラムは入場規制がかかるほどの人気ぶりだった。
彼の一語一句を聞き逃さんとばかりに熱心にメモを取っている若者の姿が印象的であった。シーンの第一線で活躍するアーティストの生の声を聞く機会は滅多にない。参加した人にとってこれほどモチベーションにつながるプログラムはないだろう。
長い年月を経てついに風営法が改正される日本だが、今後の課題は山積みだ。その課題の一つに日本人アーティストの育成、底上げが挙げられる。20代のDJがプライベートジェットで世界を駆け巡り、大金を稼ぐこのご時世、ダンス・ミュージックには大きな夢と希望がある。世界での活躍を目指すDJ/プロデューサーやクラブ・シーンを支える人々にとって、ADEは世界のダンス・ミュージックの現状を良く把握することができる貴重なプラットホームだ。ADEには多くの発見とチャンスが転がっている。
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