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2015年 :Amsterdam dance event レポート第1弾

 
 例年のごとく秋のアムステルダムはイエローのフラグで飾られた。毎年、10月の中旬にアムステルダムで行われるクラブフェスティバルイベント「Amsterdam Dance Event」(以下、ADE)は、今年で節目となる「20Years of ADE」を迎えた。ADEの開始は1996年。当初はアムステルダム市内の13ヶ所のクラブで12,000人の集客からのスタートであった。コンセプトは“electronic music world”であり、2015年の現在でもこのコンセプトが脈々と息づいている。そして今や世界でもっとも大きいクラブフェスティバルへと変貌を遂げた。2015年のADEの公式発表によると、このフェスティバルを目的に85カ国から365,000人が集まり、2014年と比較すると15,000人の増員を記録している。イベント数は1000件を超え、世界中から集まったジャーナリストの数は500人とされ、この数字からも各国のADEへの注目度の高さがうかがえる。このADEのプログラムは、アムステルダム市内で5日間のパーティーと共に、アーティスト、音楽関係者が行うカンファレンス、音楽機材等のデモンストレーションや体験、アートの展示などが行われる。今回は、オープニングセレモニーとカンファレンスの模様をレポートしていきたい。

Photo,Text:Atsushi Harada(http://salon.io/atsushi-harada-photography)
Coordinate:Wakyo from Amsterdam

   
 このADEはオーガナイザーの「ade」とオランダの音楽著作権協会の「buma(http://www.bumacultuur.nl/en/buma-cultuur/mission/)」が中心となり行っている。パートナー企業は79社、日本からは音響機器メーカーpioneer社とRoland社が協力している。
 私はこのADEの体験をするのは3回目である。過去にお客やフォトグラファーとしての参加経験はあったが、今年はよりADEを知るためにも、イベント以外のプログラムに参加をした。まず1日目に行われたADEのオープニングセレモニーについてお伝えしたい。
 
 
 オランダのダム広場付近にある会場スペースの1階で行われ、100人前後の人たちが集まり、ADEのスタートを祝う会であった。そこはセレモニーと共に情報収集、関係者とのコネクション、次に繋がる商談の機会の意味もある。私もこのセレモニー内で、オランダの野外イベントオーガナイザー、ブッキング担当の方々と話す機会を頂いた。その際に共通して感じたのは日本の音楽シーンへの関心の高さであった。「Ultra Japan」、そして今秋のオランダのID&Tレーベルが主催するWhite(白)をコンセプトにした「sensation Japan(http://www.sensation.com/ja/japan-2015/)」の成功がその理由だ。オランダ人の視点からは日本は経済大国、音楽の土壌もあると認識をされている。だが、ビジネス面、文化面も含めて興味はあるが言語の問題、情報量がハードルになっていると話してくれた。私の気持ちとしては日蘭の音楽や文化的な交流が活性化してほしいと考えており、今後ハードルを低くするためにも「情報の提供」「言語的な部分(英語翻訳)」の必要性を強く感じた。
 
 
 また興味深かったカンファレンスについても触れさせて頂きたい。プログラムの内容は「Music Pro」。スピーカーは音楽のストリーミングビジネス「Beatport(https://www.beatport.com/)」、音楽業界の情報を発信する「CLOUD9music(http://www.cloud9music.nl/)」、オランダの新しい才能のDJ発掘/ヘッドライナーのブッキングを行う「HEADLINER ENTERTAIMENT(http://www.headliner-entertainment.com/)」の三社。
 議論の内容は「リスナー、ファン層へのマーケティングキャンペーンの重要性」「ヘッドライナーのブッキング」「CDのリリースが減少しているなかで将来的に音楽のストリーミングがマーケット的にどこまで伸びていくのか」であった。SNSを活用して、顧客への情報アプローチ数の増加、Youtubeへの展開、ストリーミングサービスの利用社の拡大、イベントへの来場へどう繋げていくかということを三社三様で議論をしていた。フェスティバルが世界中で行われていくなかで、どのようにプロセスを踏み「アーティストブッキング→広告宣伝→集客→音楽ストリーミング」を組み合わせてフェスティバルと自社サービスをリンクさせていくかということ。一社単体で動くのではなく、各会社ごとの得意分野を生かしてのマネージメント、スケジューリング、パートナーシップの重要性に関しても言及していた。またトップDJとランクされるアーティストはスケジュールは確定をしていても、「トラブルはつきものだ…」と三社ともに笑顔で話していた。
 現在、世界中のフェスティバル・アーティストの情報は、SNSやYoutubeが発達した今日では情報収集が容易い状況ではあるが、その分音楽業界の関係者は、その膨大な量のコンテンツをどう使いこなして音楽ビジネスに対して戦略をもって臨んでいるのかが、この会議をもって勉強をさせて頂いた。
 
 
 今回、オープニングセレモニーやカンファレンスに参加をして、時代の流れに伴う音楽ビジネスに触れることができたことは素晴らしい経験となった。また5日間のADEを通して強く感じたのは、ADEフェスティバルのオーディエンス、音楽関係者に対してのいきわたった対応であった。プレス関係者には、バッグ、ADEのパンフレット、雑誌、注目するイベント、イヤホンが支給される。またプレス関係者のリストバンドには、入場履歴も管理することができて、どのイベントに世界が注目しているか、取材が多いかなどの統計を行っている。ADE公式ホームページ、アプリは各イベント状況、ニュースがリアルタイムで配信され、参加するイベント情報、好きなアーティストの関連するジャンルのイベント、会場マップ、カンファレンスプログラムを簡単に検索することができる。多くの国からADEを目当てに訪れるADEだからこそ、そのようなシステムになったのだと私は感じた。
 私がお伝えした内容は、ADEが行うサービスの一部である。20年間で世界最大のクラブフェスティバルを作り上げたADEはパーティーだけではない、素晴らしい取り組みを多く行っていた。ADEのレポート第2弾としては、このADEの5日間で行われた私が取材をした、注目イベントに焦点を当ててご紹介をさせていただきたい。