前回のADEのレポートではオープニングパーティー、カンファレンスのご紹介をさせて頂いた。今回の第2弾では、ダンスフェスティバルの醍醐味ともいえるパーティーをご紹介させて頂きたい。5日間で合計1000のパーティーが街中で行われるADEは、どのイベントに参加するかも大きな楽しみのひとつだ。私自身、5日間で室内イベント、野外パーティー、ウェアハウスパーティーを含めて合計11のパーティーに参加をした。また参加したイベントごとに音楽ジャンル、オーディエンス、踊り方もさまざまであった。そのなかで私が印象に強く残った3つのパーティーを紹介したい。
Photo & Text:Atsushi Harada(http://salon.io/atsushi-harada-photography)
Coordinate:Wakyo from Amsterdam
最初にご紹介をさせて頂くのは「DGTL」というイベントである。アムステルダムの北に位置する元造船所の廃倉庫を使ったハコで行われ、外はグラフィティにあふれアンダーグランドな雰囲気を醸し出す場所であった。出演者はKölsch、Michael Mayer、Barnt、Hunter/Game、Weval、Coma、Patrice Bäumel、Fangoというラインナップ。メインステージは観るものを世界に引き込んでいく独特の大型ビジュアルが設置されており、DJの音に合わせて生き物のように変化していた。私はいつも異なる音楽ジャンルを中心に参加をしており、ハウスのパーティーに参加することに慣れていなかったが、今回スペシャルゲストとしてライブをおこなったKölschのDJを目の当たりにして感動を覚えた。彼がプレイを始めた途端、会場全体が優しい雰囲気に包まれていき世界が変わっていったのである。その瞬間、はち切れんばかりの歓声と口笛が会場の奥底から聞こえてくる。「音に包まれる」という初めての感覚をKölschのプレイで体験することができた。DGTLは2016年3月25日、26日、27日の3日間にわたって開催されることが決定している(https://dgtl.nl/)。是非、ラインナップを含めてウェブをチェックしてほしい。
次は同日に行われた「Dockyard Festival」である。約1万人以上が集まった全5ステージの野外イベント。秋のオランダは非常に寒いが、ブースのテント内は汗がしたたる程の熱気で満ち溢れており、外との気温差にまず驚いた。「Dockyard Festival」にはイベント終盤に参加したが、見逃せないアクトがあった。それはSurgeon+Lady Starlightのライブセッションだ。「XT3 presents Droid」ステージにてトリでプレイを行っていたが、ステージの緊張感やSurgeonがプレイ中に眼鏡をずらしながら特大の機材を精密機械を扱うがごとくつまみをいじる姿に、只々唾を飲み込んだ。音と音が重なっていく度に、会場のボルテージがヒートアップしていく様子は忘れがたい経験であった。またイタリアのハウス界のトップDJ/プロデューサーのStefano Noferiniも別ブースのトリとしてプレイを行った。彼の姿を収めるべくスピーカー前の最前線に行ったが、彼の静かなDJの佇まいから繰り出される選曲とサウンドに酔いしれるオーディエンス。彼のライブセットが終わった途端、素晴らしい時間を共有した喜びで、多くの見知らぬ人同士がハグをしていた。私も大柄な男たちに「カメラボーイ! アリガトウ!」とハグをされまくった。喜んで良いのか分からぬが、ダンスミュージックが持つ一体感に触れた時間であった。
最後にご紹介させて頂くのは、アムステルダムの名門レーベルRush Hour Recordsが企画する「OTO301」で行ったパーティー。アムステルダムに拠点を置くレーベルWakyoも本イベントに特設の寿司ブースを出店し、音楽と寿司のコラボレーションを行った。Rush Hourはゲストとして日本からDJ Nobuを招いていた。彼はポーランドでプレイを行った後、Rush Hour企画のADEへの参加であった。ミラーボールが輝くフロアに、ソウルチューンをベースにしたダンスミュージックで耳の肥えたRush Hourフリークたちを、ダンスの渦に巻き込んでいった。またリハーサル前に彼とお話しする時間を頂いたが、初対面の私にも気さくに話してくれ、その温かい人柄に感銘を受けた。国を越えて多くの人を魅了するDJは音楽だけではないと、私は強く感じた。またRush Hour Recordsは12月20日(日)に神戸のtroop cafe、12月22日(火)に東京の代官山AIRでツアーを開催。オランダからはHunee、日本のオーディエンスを愛していると話してくれたAntal、そして日本からは「ADE2015」でもライブアクトを務めたSoichi Teradaがブッキングされている。また、代官山AIRのステージには、本夏にアムステルダムから東京に拠点を移した「Sound Of Vast」のknockもメインフロアでプレイ。アムステルダムのみならず、ヨーロッパ中を魅了するRush Hour RecordsのDJプレイを日本で目にすることができる貴重なチャンスである。是非ともこの日を逃さないで頂きたい。
■12月20日(日)@神戸troop cafe
http://www.clubberia.com/ja/events/244646-RUSH-HOUR-LABEL-NIGHT/
■12月22日(火)@代官山AIR
http://www.clubberia.com/ja/events/245351-RUSH-HOUR-LABEL-NIGHT/
私が紹介できるADEはほんの一部に過ぎない。私としてはもっと多くの方々に「ダンスミュージック文化」、「人種を超える音楽の力」、そしてなにより「好きな音楽で踊ることの楽しさ」を体験してもらいたいと感じた。また記事を書いているなかで、DJ Nobu、Soichi TeradaのADEへの参加、Rush Hourの日本ツアーも含めて日蘭のダンスミュージックの距離が近づいていると感じている。私はもっと日蘭の交流が今後盛んになっていくと思っている。なぜなら両国の架け橋になる人が、実現に向けて動いているからである。またオランダにDJをしにくる素晴らしい日本人プレイヤーが増えることを心待ちにしている。このADEレポート1弾、2弾を通して読んで頂いた方に1つでも「発見」があれば嬉しい限りだ。
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