日本人には「大空フェスティバル?」と勘違いされることが多いが、オゾラとはハンガリーにある村の名前。その土地に根を張り、今年で17年目を数える世界屈指のサイケデリック・トライバル・ギャザリングであり、フェスティバルである。
1999年の皆既日食のパーティー「Solipse」を発端としてスタートしたこのフェスティバルは、日本でも2015年、2016年と2回にわたり新木場ageHaで東京版のプロモーションイベントを開催しているので認知度は上がってきているのではないかと思われる。
筆者はageHaでのイベントを主催しているメンバーの一人であり、ageHaを中心にサイケデリック、トランスミュージックのイベントプロデュースをしている。そこで、私たちが愛するOZORAフェスティバルの魅力を、より深い形で皆さんに知ってもらい、願わくは、より多くの日本人に本国のフェスティバルに参加してほしいと考え、現地取材を行い記事にした。
Text&Photo&Movie:小張正暁(DANCE ON THE PLANET/ageHa/DFY inc.)
今回、私は妻と友人のカップルとの4人で参加。 2013年、2015年、2016年と3回目の参加だ。私たちにとって「約束の場所」となったオゾラ。昨年の時点で参加を決めていた私たちは3月末には航空券をゲットした。搭乗まで1ヶ月を切ると13〜15万円ほどしてしまうハンガリー行きの航空券も、3〜4ヶ月前に予約すれば6万円台。行くと決めたら早めの予約が絶対にオススメである。
フェスのチケットは150ユーロほど。日本では毎年Grasshopper Recordsがウェブサイトでチケットを取り扱っているので、英語に自信がない人でも安心してチケットを購入できる。
http://grasshopper-records.com/events/2885.html
空港からのシャトルバスは往復で60ユーロほど。ハンガリーは物価が安い。オゾラの会場内では飲食がとても安く、特にオフィシャルのフードショップでは山盛りの野菜入りピラフが1ユーロ。一人では食べきれない半身の大きなチキンが3ユーロ。ビールもロング缶が2ユーロ。と日本のコンビニ感覚の値段。仮に1日の生活費を20ユーロとして、プレパーティーから9日間滞在しても180ユーロ。 日本では絶対買えない物が集まるマーケットもオゾラの魅力のひとつなので、買い物も楽しんだとしても空港から直行直帰の弾丸ツアーなら、一人15万円でお釣りがきてしまう。 経済的な意味でも、海外フェス初心者にもオススメできる魅力に溢れたフェスティバルである。初めて参加した人は、考え方、そして人生が変わってしまうと口を揃える。まさに楽園だ。
私たちはこの取材で撮影機材やパソコンを持ち込むためレンタカーを借りて参加してきた。オゾラに参加するヨーロピアンの多くはオートキャンプのスタイルで参加している。もちろん、バックパッカースタイルで、バスや電車、ヒッチハイクで参加する人も多いが、日本からテントを持ち込むことを考えると、スーツケースで空港からレンタカーを使うのは非常に楽だ。日本から事前にネットで予約しておけば10日間のレンタルで2万円台からステーションワゴンが借りられるので4人で割ればとてもリーズナブル。国際運転免許も2,160円で即日発行なので、海外での運転は決して高いハードルではない。ただし注意点は、ハンガリーをはじめヨーロッパはマニュアルの車がほとんどだということ。慣れない左ハンドルのマニュアル車で市街地を走るのは生きた心地がしないので、レンタカーは空港で借りて、駐車場の中で肩慣らししてから外に出るのがオススメである。
前置きが長くなったが、今年のオゾラは、本祭の前2日間にわたりプレパーティーが開催され、伝説のDJ、GOA GILが24時間セットを披露した。本祭は8月1日から8月7日の7日間であるが、プレパーティーが7月30日から7月31日。そして、最終日翌日の8月8日に帰ったので、10日間もオゾラに滞在していたことになる。もはや「オゾラに住みたい」と私の妻は口癖のように言っている。
■7月30日
そんなオゾララバーな私たちはオゾラを満喫するため、7月28日にブタペスト入り。7月29日に買い物などを済ませ、プレパーティー初日7月30日の朝に会場に向かった。会場のあるO.Z.O.R.A村へはハンガリーの首都・ブタペストから150kmほどの距離で、道中の露店でスイカを買ったりしつつも、空港から2時間も走れば到着する。
Googleマップリンク
https://goo.gl/maps/64fGafkft4m
日本では見たこともないような、トウモロコシとヒマワリの畑が延々と続く平野の果てに目指すO.Z.O.R.A村の看板が現れる。そしてエントランスには「WELCOME TO PARADISE」のゲートが!!
会場に着くと、エントランスには既に列ができていたが、リストバンドを巻いてもらう受付テントが今年は木造で口数も増えており非常にスムーズに入場できて驚く。毎年、着実に進化するフェスティバルの姿に感銘を受ける。私たちはDragon Nestというライブ中心のステージ近く、丘の上のエリアにテントを張った。オープン前の人気の少ないオゾラを愉しむ。
そこかしこで感動的な再会のシーンに出会えることもフェスにオープン前から参加する醍醐味。
初めてメインステージを見たそのスケール感と喜びに、呆然とする青年。どんな旅をしてここにたどり着いたのだろう?と想像すると熱い気持ちがこみ上げる。
定番のオゾラメシ(チキン半身、パン、サラダで合計5ユーロ)を食べてのんびりしていると、、、最初に音が出たのは、ローカルのDJとテクノの国際的DJが出演するサブフロアのPUMPUIステージ。
最初の音が出た瞬間にフロアから歓声が上がったのに驚き駆けつけると、PUMPUIステージのトップバッターDJはReti。全くノーチェックだったが、待ってましたと言わんばかりのオーディエンスのテンションに度肝を抜かれる。
■Reti @Pumpui Stage / O.Z.O.R.A. Festival 2016 [July 30th]
GOA GILも始まっていたが、この日は朝から活動していたので早めに就寝。2日目に備える。
■7月31日 プレパーティー2日目。
朝起きると隣にテントを張った友人が何やら騒いでいる。どうも、私たちのテントの下に先客がいたらしい…。その先客とは…野ネズミ。地下で繋がった巣穴のあっちから顔を出したり、こっちから顔を出したりチーズをあげても見向きもしないが、その小さな隣人にほっこりして朝を過ごす。
■"The neighbor" Another stories of O.Z.O.R.A. Festival 2016
この日私たちは、電車でやってくる参加者を待ち構えるため、最寄りのシモントーヤ駅へと向かった。
超ローカルな駅に押し寄せる大量の若者達。オフィシャルのシャトルバスを横に、ここぞとばかりに稼ごうと集まるタクシーの運転手。私たちも熱気に当てられてテンションが上がる。
ハンガリーの片田舎において、オゾラの経済効果は非常に大きいに違いない。
■"just arrived" Another stories of O.Z.O.R.A. Festival 2016
駅で出会った日本人・ユッキー。彼とはこの後に控えたポルトガルのBOOMでも再会することになる。
そしてチルアウトドームのGOA GIL 24時間セットがこの日のメイン。ageHaでも2015年末に来日したGOA GIL。ヨーロッパではダークかつ高速BPMのトランスも根強い人気があり、非常に盛り上がっていた。また、ドームの内側に波打つLEDの装飾が入っていたことも美しく印象的だった。この夜は私たちが参加した中では初めて、大降りの雨が降り雷も鳴った。しかし、夜だけの雨だったので苦にもならず、この日も早めに就寝した。
■8月1日
3日目にして、いよいよオープニングセレモニーのある初日。昼ぐらいからみるみる人が増え出して、会場の熱気が高まっていくことがわかる。日本人の参加者は昨年一気に増えた。今年も100人近い日本人が参加していたのではないかと思われる。
夏のハンガリーは日没が20時過ぎ。19時ぐらいからメインステージ周辺に人々が集まり始め、その数は万単位になっていく。
そして日がいよいよ沈む頃、セレモニーのダンスに続いて、騎馬隊が丘を駆け下り、フロア中心の薪に火を放つと、待ちきれないオーディエンスがフロアに雪崩れ込む!!!
■Opening Ceremony @O.Z.O.R.A. Festival 2016 [August 1st]
ひとたびオゾラに参加した人々は自らのことを、自信と愛着をこめて自らを「OZORIAN (オゾリアン)」と呼ぶ。この瞬間、OZORIAN達の新年が明けるのだ。
「Happy New Year!!!」
OZORIANにとってオゾラと共に一年が始まり、また来年ここに戻ることを心に誓う。
盛大なオープニングセレモニーの後は、これまた今年の5月にageHaに来日した大人気の人力トランスバンドHILIGHT TRIBEの登場だ!!
■"The Last Song" Hilight Tribe @Main Stage / O.Z.O.R.A. Festival 2016 [August 1st]
太鼓とディジュリドゥ、そして焚き火の灯りがフロアを照らし、一気にピークタイミが押し寄せる。太古の昔から続く、人間の根源的な衝動、欲求、活動がそのままの形で現代のフェスティバルとして実現されていることに圧倒される。
■"Fireplace" Another stories of O.Z.O.R.A. Festival 2016
日付を跨ぐ頃、Dragon Nestステージにはなんと、今年の夏、フジロックにも来日したLEE SCRATCH PERRYが登場。今年のオゾラはライブステージ、チルアウトステージを中心にレゲエ・ダブとトランスとのクロースオーバーが強く感じられたことは特筆すべきことであり、その傾向はヨーロッパのトランスシーン全体で進んでいる。前日のGOA GIL 65歳。リー・ペーリー80歳。オゾラの音楽的な懐の深さをまじまじと感じつつ寝床に入った。
さあ、いよいよ明日から本格的に踊り倒す毎日が始まる。
>>>>レポートの続きは後半へ続く。。。