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O.Z.O.R.A. FESTIVAL 2016 - 後編 -

世界屈指のサイケデリック・トライバル・ギャザリング。ハンガリーのオゾラフェスティバルレポート後編。

>>>>レポートの前編はこちら。。。

Text&Photo&Movie:小張正暁(DANCE ON THE PLANET/ageHa/DFY inc.)



■8月2日
 さあ、いよいよこの日から本格的に踊り倒す毎日が始まる。朝イチ、メインステージには日本からGrasshopper RecordsのDJ TulioによるソロプロジェクトGrooveboxが登場。前日夜から踊りっぱなしのオーディエンスから、朝起きぬけのオーディエンスまでグルーヴィーなトランスで朝の時間を温めていた。
 
 午後は個人的に所縁の深いアーティトが立て続けにメインステージに登場。まずは13:30からのPerfect Stranger。来る10月15日にageHaで開催するイベント「DANCE ON THE PLANET presents PARADISE」での来日が決定しているアーティストだ。
 サイケデリックシーンのなかでも、テクノ色が強く、と同時にメロディックでストーリー性を兼ね備えた独自の世界観が魅力のアーティストである。

■「DANCE ON THE PLANET presents PARADISE」イベントページ
http://www.clubberia.com/ja/events/258257-DANCE-ON-THE-PLANET-presents-PARADISE/


■Perfect Stranger @Main Stage / O.Z.O.R.A. Festival 2016 [August 2nd]
 
 17:00からはLoud。彼ら2人は昨年11月に東京3夜連続公演というハードなツアーを共に過ごし、今年5月の「Matsuri Tribe Festival」でも来日した、もはや戦友と言ってもいい友人である。
 毎度定番ではあるが「Listen to the Music」のフレーズが忘れられないトラック「Small Talk」でフロアは大爆発。
 両アーティストともサイケデリックミュージックの奥深さを感じる素晴らしいパフォーマンスであった。

■LOUD "Small Talk"@Main Stage / O.Z.O.R.A. Festival 2016 [August 2nd]
 
■8月3日
 この日も朝からメインステージに出勤(笑)。出勤前にはアーティストエリアに立ち寄り、撮影したデータの整理や、日本との仕事のやりとりをしながらアーティストたちと情報交換をする。コーヒーとシンプルなサンドイッチをパクついてOzorian Prophetに目を通す。
 
 
 Ozorian Prophetとは通称“O.Z.O.R.A.新聞”のこと。オゾラでは前日のニュースが翌日には新聞としてリリースされる。しかも毎日だ。タイムテーブルの変更なども載っているのでオーディエンスにとって重要な情報源である。

 Ozorian Prophetは独立したウェブサイトも運営しており、サイケデリックシーンのニュースやトピックスを日々発信している。会場で配布されるOzorian Prophetもこのサイトで読めるので(英語ではあるが)興味がある人は是非チェックしてほしい。
https://ozorianprophet.eu/

  翌日の見出しを会議中のOzorian Prophet編集部 フロアでもOzorian Prophetが配布される

 こういった抜かりのないオーガナイズにこそ、オゾラが地域からも信頼され、長く進化し続けるフェスティバルであることの秘訣があるのだろう。

 アーティストエリアからメインステージに降りていくと、Grasshopper Recordsのユニット、Disk Junkyがプレイ中。気合いの入ったDJをカマしていた。
 
 
 2013年に私が初参加した年、Grasshopper RecordsのDJ Hattaも初めてのオゾラはこの朝の時間帯にプレイしていた。彼ら初参加の日本勢がここで得たものを日本に持ち帰り、また来年、そしてその次へと繋げていってくれることだろう。そうしてシーンは着実に面白くなっていく。

 そしてこの日、日本でも絶大な人気を誇る、サイケデリックシーンのオリジネーターShpongleのライブがあり、そのShpongleに正式メンバーとして迎え入れられたSaori Kandaによるライブペイントが最大の注目となった。

 Saoriさんはなんと、今回、生まれたばかりのお子さん、月丸くんを連れて旦那さんと共にオゾラに初参加。パフォーマンスの模様は後日、動画のリポートが本人から公開されると思うので是非期待して待ってほしい。
 
 
■8月4日
 中日となる4日目。この日ぐらいから、1日が過ぎるスピードが急に速くなっていく。ともかく毎日見所がいっぱい。
 前日から日をまたいだ夜、Grasshopper Recordsのボス、DJ Hattaがメインステージに登場した。夜00:00のフロアは、オープニングセレモニーの夜を思わせるほどの人の入りで異様な盛り上がりを見せていた。

DJ Hatta @Main Stage / O.Z.O.R.A. Festival 2016 [August 4th]
 
 これまで、とかく夜は寝てばかりで昼型の我々であったが、今年のオゾラは昼がそれほど暑くなく過ごしやすかったので、夜も十分楽しむことができた。
 
 
 トランスフェスの夜の面白さを映像で伝えるのは難しいが、ともかくこれは参加してみなれば分からない。クラブにこの面白さを持ち込めないものだろうか? 「O.Z.O.R.A Tokyo」で伝えようとトライしていることの重要な部分はオゾラの夜にあることは間違いない。

 明けて日中、メインステージでは1200 Micrograms、System7、Juno Reactorなど日本でもよく知られた豪華なラインナップが続いたこの日ではあるが、私は敢えてそこを外し、PUMPUIステージやチルアウトドームを中心に過ごしてみた。
 
 
 前編でも触れたが、PUMPUIステージのオーディエンスは圧倒的にタフで足を踏み入れる度に心が震える。そして、日本ではなかなかお目にかかれない、DJ自身の高いテンション。それらが生み出すグルーヴ感。このムービーは日本でもSon-Kite/Minilogueとして知られるSebastian Mullaertのパフォーマンス。是非オゾラでこそ体験してほしい。

Sebastian Mullaert @Pumpui Stage / O.Z.O.R.A. Festival 2016 [Augast 4th]

ハンガリーでBeMassiveというレーベルを運営するDJ Metha。ローカルアンダーグラウンドの実力に恐れ入る。

Metha @Pumpui Stage / O.Z.O.R.A. Festival 2016 [July 31th]
 
 そして今回特に驚嘆したのはDragon Nestステージで展開されるライブのクオリティーの高さである。特に23:00から1:00ごろにかけて、私たちが寝床につこうとすると、聞いたこともないカッコいい音楽が聞こえてきて、いてもたってもいられなくなる。名前も知らなかったアーティストが、聞いたこともないようなサウンドをかき鳴らし、オーディエンスが吠えまくっている。普段、クラブイベントの現場でDJモノ、録音モノばかりを聴いていると感覚が鈍ってしまうが、やはりライブは圧倒的にリアルだ。音楽が生まれる場所、生まれるその瞬間に立ち会う喜びがそこにある。
 
My Baby @DragonNest Stage / O.Z.O.R.A. Festival 2016 [August 5th]

■Vlastur Full Band @DragonNest Stage / O.Z.O.R.A. Festival 2016 [August 4th]
 
 明日は今回のオゾラで一番の見所がある日。Dragon Nestの興奮を胸に、この日も早々に寝床に着いた。

■8月5日
 この日は私たちが追いかけ続け、私たちをオゾラに導いてくれたと言っても過言ではないアーティストAce Venturaが登場する。さらに、そのAce Venturaと、日本でも圧倒的な人気を誇るAstrixによる新ユニットAlpha Portalが世界初披露となる1日である。
https://www.facebook.com/alphaportalofficial/
https://soundcloud.com/alpha-portal

 残念ながらAlpha Portalに関しては、注目のライブだっただけにステージ上はオフィシャルのカメラでいっぱいで、私がカメラで入り込む余地はなかった。しかし、Ace VenturaとAstrixに関してはなかなか良い映像が撮れたので是非ご覧いただきたい。

Ace Ventura @Main Stage / O.Z.O.R.A. Festival 2016 [August 5th]

ASTRIX @Main Stage / O.Z.O.R.A. Festival 2016 [August 5th]
 
 はるか奥までオーディエンスに埋め尽くされたダンスフロア。クリアーでポジティブなバイブレーション。そして10月15日にAce VenturaがPerfect Strangerと共に日本初お目見えのPerfect AceとしてageHaに来日する。

 この映像を自分の手で撮るために、少しでも多くの人に伝えたくて、私は遥々ハンガリーまでやってきた。

 美しい景色。心優しい人々。オゾラでは毎日夕日を追いかけた。丘に登ると、眼下にはメインステージが砂けむりと共に広がり、人々が語らいあっている。そして、陽が沈む瞬間、どこからともなく歓声と拍手が沸き起こる。ただ陽が沈むそれだけで感謝の気持ちが溢れる日々。それは人間のとても自然な感情なのだということを再確認する。きっと明日も最高な1日がやってくるだろう。
 
 
■8月6日
 大阪から参加していたBuzzがメインステージに登場するので、なんとか応援に行きたかったが、朝6:30からというタイムテーブルは私たちには到底無理で、そのままこの日もメインステージにほとんど行かない。という1日となった。代わりにワークショップを覗いたり、アート作品を鑑賞したり、ゆったりと過ごした。


 足踏み鍛冶屋のワークショップ。長いけれど後半トランスが流れ出すあたりが見どころ。

"metallurgy" Another stories of O Z O R A Festival 2016
 
 オゾラの生活は不便だけれど、その全てが楽しく愛おしい。
 朝は、フルーツや飲み物を冷やすためにバケツに水を汲みに行く。飲み水は水道水が冷たく美味しいので、水を買う必要はない。シャワーは水しか出ないので、日が暮れないうちにシャワーを浴びに行き、一緒に洗濯もする。買い物はオフィシャルの商店があり、大体のものは手に入る。私たちのお気に入りスポットはフルーツショップ(八百屋)。量り売りの野菜や果物は安くて新鮮で、びっくりするほど美味しい。おまけに店員はイケメン揃い。これは、完全に狙っていると思う(笑)。ちなみに、バーやアイスクリームショップの女の子も妖精のように可愛い子ばかり。それだけでリアリティーを見失うレベル。そう。ここはパラダイスそのものなのだ。
 
 
 そして、すこしだけ日本食が懐かしくなったこの夜は、フルーツショップで買った野菜で天ぷらを揚げて食べた。白いご飯に天ぷら。至福の時。
 
 
■8月7日
 いよいよ最終日。泣いても笑っても今日で終わり。最終日は大トリのBraincellに向かって徐々に盛り上がっていく。動画を撮っているとカメラをブレさせされないし、正直楽しみきれない。だから最終日ばかりは動画を封印しよう。そう決めた。それでも、目の前に広がる景色をどうしても形に残したくて、カメラを離すことだけはできなかった。
 

 オーガナイザー、裏方たちの信頼と結束がオゾラのすべてを形作っている。それは、バックステージの雰囲気に見事なまでに現れていて、こんなにも美しいバックステージを私は見たことがない。

 サイケデリック・トランスシーンは1990年代後半から2000年前後にかけて世界的な隆盛を迎え、その後衰退した。それは日本に限ったことではなかった。しかし、それでも粘り強く活動を続け、ヨーロッパのシーンは2010年代に入り再び勢いを取り戻しつつある。オゾラもまた、2000年代中盤の苦しい時代を乗り越え、オーガナイザーの代替わりなどありながら、私たちと同じ30代中盤の世代を中心に、着実に進化し続けている。私たちは、オゾラをはじめヨーロッパのシーンから、もっと普遍的で大切な何かを学ぶことができるだろう。そして、学び続け、成長するために、私たち自身の新年を祝うために来年もオゾラに参加するだろう。

 この記事を読んで、オゾラに参加してみたいと思ったそこのあなた!!「O.Z.O.R.A.」はあなたを待っています。

 Welcom to Paradise!!!!
 
■"The Last Scene" Another stories of O.Z.O.R.A. Festival 2016
 アーティストエリア、別れの朝。 インフォメーションボードに忘れ物や次のフェスへの乗り合い情報がたくさん。 テントをたたんでパッキング。 出口付近には多くのヒッチハイカーが!! 犬を連れてBOOMフェスティバルへ向かう人。 So long farewell!!