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2017年虹色の旅
Rainbow Disco Club 2017


取材・文:Yanma
写真:Ken Kawamura、Masanori Naruse、Suguru Saito : Red Bull Content Pool

 

「今年さ、レインボー行く? 一緒に行こうよ」
「レンタカー抑えた? チケットは?」
「行く途中にある、ここ寄らない?」
 
 2015年から毎年3月ごろにこんなLINEが飛び交うようになった。それは今年も変わらない。変化があるとしたらレインボーに関する、あらゆることに慣れてきたこと。GWの渋滞にも動じなくなったり、このときにしか使わないテントも綺麗に張れるようになったり、会場近くに行きつけの食事処や温泉ができたり…。Yahoo知恵袋やNevarまとめでレインボーに関する項目があったらお役立ち情報を投稿できそうだ。そんな私はもともとキャンプスタイルの野外フェスが苦手だった。お金と時間がかかり、雨が降ったらキツイし、帰りたいときに帰れない。これがクラブだったら、使ったとしても一晩1万円、天気の心配はないし、帰りたくなったらHey Taxiができるわけだ。そんな私だったが東伊豆の会場で開催された初年度のレインボーに参加してから、友人と行くレインボー2泊3日の旅が楽しみでしょうがなくなった。


 
 レインボーの魅力は大きく3つあると思っている。ラインナップ、ロケーション、規模感だ。ラインナップはハウス、テクノ、ディスコを中心とした世界的なアーティストが揃う。今年の外国人アーティストだとFRED P、FLOATING POINTS、SADAR BAHARなどが特に有名で、日本人アーティストだとDJ NOBU、KUNIYUKI、SOICHI TERADAなどだ。なかでもFLOATING POINTSのDJセットは、3日間のなかでベストアクトだった。2日目の13時〜16時に出演した彼は、一定のリズムを保ったハメるグルーヴではなく、さまざまなジャンルを行き来し感情を揺さぶるようなグルーヴで見事に会場を沸かせていた。また、友人からすすめられたMISOのライブは、いいアーティストを知ることができたと友人にお礼を言ったほど。サウンドの特徴はドリーミーなビートミュージックで自身で歌うこともできる。レインボー終了後にアメリカツアーへ旅立った彼女、まさにこれからが楽しみなアーティストだ。

 
 
 音楽フェスなのでよい音楽が提供されることは最低条件であるが、それでもロケーションが良いと無条件で気分は良くなる。“美しいものを見ないと鬱になる”、知り合いがそんな持論を展開していたが、一理あるかもと思える。レインボーの場合は会場に行くまでには海岸線を通るため、そこから眺める太平洋は格別。それに会場に着くと新緑の自然に囲まれた空間が待ち、そのなかで楽しそうにしているオーディエンスやアーティストが目に入ってくる。
 
 さらに恵まれているのはストレスを感じないこと。テントサイトからメインステージまでも近く(場所によるが徒歩0秒〜5分)、飲食物の購入やトイレにもそれほど並ばなくてよい。推測で2000〜3000人が会場内にいるが、多すぎず少なすぎずの規模バランスが居心地の良さ感じるのだろう。大型のフェスのようにライブを楽しむにも人が密集し過ぎて立つしかなかったり、アクトが終わるたびにオーディエンス大移動が起こったりすることはまずない。“◯◯したい”と思ってから目的を達成するまでのスムーズさは非常に高い。強いてネガティブなポイントをあげるとすれば、早朝、一斉に鳴き出す鳥たちの鳴き声は超強力な目覚まし時計となってしまうので来年は耳栓を持っていこうかと思っている。ご参考までに。
 
 レインボーの魅力は大きく3つと言ったが、そこにひとつ加えたいものがあった。それは3日目、Rush Hourのアーティストたちが一日を彩る日だ。これまで、3日目は余裕をもって帰るために午前中に帰り支度を済ませ、メインステージで少しのんびりし、正午前には帰路に着いていた。ただ今年はじっくり3日目を過ごしてみた。Rush Hourは今年設立20周年を迎えるアムステルダムのシーンを作ったレーベル/レコードショップだ。アンダーグラウンドなハウス、テクノ、ディスコなどさまざまな曲がかかり、DJのもつアート性が存分に楽しめる。ここでいうアート性だが、私の主観ではあるが、自身の曲を演奏するライブとは違い、人が作った曲を主に使用し、その選曲性やミックス方法で人々を感動させる行為をさし、それはDJならではのものだと考えている。Rush Hour のSan Properは「レインボーとRush Hourが表現しようとしている音楽は同じだし、俺たちはファミリーなんだ」とお互いがリスペクトし合っている関係性を取材で話してくれた。彼らのパフォーマンスをみているとフェスティバル側とアーティスト側がまさに一体となって空間を作り上げている様がひしひしと伝わってくる。その温かさがオーディエンスにも伝わるのだろう。素敵な時間だなと思う時間もつかの間、そろそろ出ないとレンタカーの返却に間に合わない…。来年は近くで宿でも取って次の日に帰るのもありだなと思えた。その選択肢もご参考までに。