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世界的ラムブランドがアートをサポート
“Over The Border” 既成概念を超えて

取材・文:Yanma(clubberia)
写真:Shigeo Gomi、Koichicks



 世界的ラムブランドBACARDÍがカルチャープロジェクト「BACARDÍ “Over The Border”」始動させ、そのローンチパーティーを6月29日に東京・Tabloidで開催した。このプロジェクトの軸はふたつ。ひとつはクリエイターの創作活動の裏側や彼らの生の声からクリエイティビティの着想について触れていく“オリジナルメディア”の運営。ひとつは音楽フェスティバルとアートミュージアムを融合させた“体験イベント”の開催。私は今、この“体験イベント”に来ている。
 
 会場となったTabloidは都心の湾岸エリアにある複合施設。タブロイド紙の印刷工場が改装され、今では、さまざまなイベントが開催されている場所だ。会場に到着するとオープンして間もないがエントランスには多くの人集りができていた。理由は、大小のミラーボールを組み合わせるMIRRORBOWLERと、ゴミから独創的なアートを生み出すR領域、両者の作品が飾られていたこともあり、多くの人がカメラを向けていたからだ。撮影の邪魔にならないように、取材の受付に向かうと「インフルエンサーの方ですか?」と嬉しくなる間違いを。「メディアです。取材申請した…」と、平常心を装いつつ手続きをして中に入る。
 
 フロアに入るとまず目に入ったのは、フロアの中央に吊るされた大きな卵型のミラーボール作品。そこにライティングエンジニアのAIBAが光を当て、幻想的な空間を演出していた。ここでも多くの来場者がカメラを向けていた場所のひとつであり、私もその一人。BACARDÍのイベントということだけあり、飲み物はラムを使ったカクテルがメイン。例えば、モヒート、キューバリブレ、ラムハイボールなど。そういえば、昔、バーでアルバイトをしていたころ、夏のシーズンになるとモヒートをよく作っていたなと思い出す。工数が多いためオーダーが入ると大変だった。グラスにミントの葉とライム、砂糖を入れ、ペストルで潰す。クラッシュアイスをグラスに入れ、ラムを入れステア。最後にソーダを入れてステアし完成。その頃の大変さがあったせいか、モヒートをあまり飲まんだことがない。いい機会だから改めて飲んでみると、これがまた美味い!みんながモヒートを頼む理由にも納得。






 モヒートを片手にNaoki SerizawaのDJを聴く。続くのはEi Wada’s Braun Tube Jazz Band。オーディエンス、出演アーティスト、あの場にいる全員が釘付けになっていたライブだった。Open Reel Ensembleの和田 永によるソロプロジェクトで、2011年7月24日のアナログ放送電波終了に伴い不要となったブラウン管モニターを集め、楽器として演奏するパフォーマンス。画面を叩いたり、さすったりすることで音がでるようになっており、5つのブラウン管テレビを太鼓のように扱っていた。その場で録音しシーケンスを組みながらライブは進んでゆく。「ブラウン管の電磁波を浴びてハイになってください」と和田もMCで盛り上げた。
 
 ここから女性陣のアーティストが最後まで続く。Questloveにも認められたDJ SARASA、ロンドンを拠点に活動し19歳でデビューしたAnna Straker、BrainfeederからリリースするTOKiMONSTA、今年のグラミー賞にノミネートされたSofi Tukker。Sofi Tukkerも多くのライブをこなしているのか、シンガー/ギタリストのSophie Hawley-WeldとトラックメイカーのTucker Halpernの息もピッタリ。最後は代表曲「Drinkee」でこのパーティーをキレイに終わらせた。この日、一番胸が熱くなるものがあったのが、TOKiMONSTAがパフォーマンスだった。それは彼女のライブの途中に先日亡くなったMobb Deepの「Shook Ones, Part 2」をかけてKendrick Lamarの「Alfight」へとつなげた瞬間だった。
 
 このOver The Borderの取り組み、今後は地方公演も予定されているとのこと。またメディアもスタートするとのことなので、音楽を含めた、まだ見ぬアートを紹介してくれることに期待したい。

■BACARDÍ “Over The Border”公式サイト
http://bacardi-overtheborder.jp