REPORT:「CABARET RECORDINGS 10TH ANNIVERSARY」
TEXT : Riku Sugimoto
Photo : Junpei Kawahata
Photo : Junpei Kawahata
「Cabaret Recordings」の10周年を記念する3カ月連続パーティーが渋谷WOMBにて開催され、2回目となる11月3日にはNicolas Lutzがゲストに招致された。ウルグアイ出身のNicolas LutzはBinhやdj masdaと並んで2010年代以降のミニマルから派生したテクノ/ハウスシーンの旗手として評価の高いDJで、自身のレーベル「My Own Jupiter」から数多くのウルグアイ出身プロデューサーを世界に紹介してきた。dj masdaは渡独直前の2015年に主催したパーティーでもNicolas Lutzを招いており、ベルリンに拠点を移してからも世界各国で頻繁に共演を重ねてきた間柄だ。
メインフロアではdj masdaがオープンを担当。欧州解釈のアシッド・エレクトロやディープなプログレッシブハウスなども用いつつ、集まってきた人々のテンションを徐々に上げていく。エッジの効いたトラックだけでなく、dj masdaがミニマルハウス主体の選曲だった時期を思い出させてくれるような、タイトなグルーヴを用いていたのも印象的であった。オープンから1〜2時間経った頃には既にメインフロアは人でいっぱいになっており、期待の高まりを感じさせた。
Nicolas Lutzはウルグアイ発のテクノを世に知らしめた人物だが、そのセットはウルグアイ出身アーティスト/レーベルのトラック一辺倒ではない。レコードディガーとしても厚い信頼を置かれる彼ならではの幅と深みを感じさせる選曲で、見落とされがちな2000年台初期のジャーマンテクノや、ミニマルハウス全盛期にリリースされた骨太なテクノなども用い、手数やフレーズに頼ることなくフロアの熱を高めていた。もちろん要所要所で近年のウルグアイ産テクノらしい闇の奥で煌めくようなトラックも投下したが、セット全体のムードやテンションを急変させることはなく、ひたすら没入して踊らせる匠のスキルを見せてくれた。中盤には90年代中期と思わしきシカゴスタイルのミニマルテクノもプレイされたが、WOMBのサウンドシステムと相性の良いパワフルな鳴りを体感できた。
後半はdj masdaとNicolas LutzのB2Bも自然と始まり、特徴的なベースラインやグルーヴの変化で絶えずフロアを揺さぶり、全く飽きさせることなく夜明けまで駆け抜けていった。メインフロアがクローズした後も、4階ではKabutoとSatoshi Otsukiによる B2Bが続いており、まだまだ遊び足りない面々に向けて、アグレッシブなフレーズも用いつつ余分なサウンドや展開を省いた、磨き抜かれたセットを披露しパーティーを締め括ってくれた。
先鋭的なミニマルハウス・テクノを好む客層はもちろん、ここ最近の渋谷らしくインバウンドの客層も多く見受けられたが、音楽に対して意識が散漫としている様子はなく、前のめりに熱中していたようだ。「Cabaret」がパーティーそしてレーベルとして体現してきた、質実剛健さと遊び心を両立したような一夜であった。
■CABARET RECORDINGS 10TH ANNIVERSARY
12月1日(金)23:00-4:30渋谷WOMB
チケット:ADVANCE ¥3000/DOOR ¥3500
/MAIN FLOOR
EVAN BAGGS, SO INAGAWA -LIVE-, DJ MASDA
4F VIP FLOOR
YAMA’, LICAXXX, CELTER
1F WOMB LOUNGE -MR. HO WITH COWBOY FAMILY-
MR. HO, WADA YOSUKE, TAKASHI HIMEOKA
SOUND DESIGN: RYOSUKE TSUCHIYA
チケット購入はこちら
https://womb.zaiko.io/e/cabaret-recordings-10th-3
イベント詳細はこちら
https://www.womb.co.jp/event/2023/12/01/cabaret-recordings-10th-3/