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「Chicks On A Mission Tokyo SUMMER SESSION 2023」レポート


Text:Kana Yoshioka
Photo:Usagi

 
DJをはじめ、クラブ、音楽などのエンターテイメント業界で働く女性たちを応援する「Chicks On A Mission Tokyo(チックス・オン・ア・ミッション・トーキョー)」。「Chicks On A Mission」は、ナイトメイヤー(夜の市長)を最初にクリエイトしたMirik Milan氏により2017年アムステルダムにて開催された女性会議に参加した臼杵杏希子が東京に持ち帰り発足したコミュニテイである。80年代後半から、日本のクラブ界隈にて仕事を続けてきたディレクターの臼杵杏希子を筆頭に、クラブ界隈だけでなく音楽全般において幅広く仕事をしている嶋田ミミ、そしてDJ、プロデューサーとして活躍するナズ・クリスの3人を軸に、2019年に日本で活動がスタート。現在はクラブ界隈を中心に、各々の持ち場で働く女性たちが参加し、よりよい状況で仕事ができる環境を作り上げていこうというコミュニティとして存在してきた。

その「Chicks On A Mission Tokyo」による、「Chicks On A Mission Tokyo SUMMER SESSION 2023」が、駐日オランダ王国大使館にて開催され、コロナ渦を経た後のクラブシーンについてや、各々の今後の活動をどのようにしていけばいいのかなど、さまざまな側面にてセッションが行われた。前回、「Chiks On A Mission Tokyo/ヴィジュアルマニフェスト発表」という題目で開催されたのは2019年11月。それから約3年年を経たシーンはどのように移り変わっていったのだろうか。



ちなみに今回のセッションでは、「ラウンドテーブルトーク(円卓会議)」と言われる、登壇者と参加者が円を描くように座りセッションを進行。参加した人たちが対等な立場で議論することができる方法のひとつでもあり、誰しもが前向きに話ができるよう席が設置されていた。



「Chicks On A Mission Tokyo SUMMER SESSION 2023」
2023年7月17日(月)
駐日オランダ王国大使館/DUCTH EMBASSY TOKYO

ROUNDTABLE TALK SESSION / COCKTAIL PARTY
DJ:MOCA, Naz Chris, KATIE SE7EN, dj yumi-cco​


ROUNDTABLE TALK SESSION

 

▷ SESSION 01:東京のクラブ及び、ダンスミュージックシーンについて


登壇者:臼杵杏希子、Pi-ge(DJ、クラベリア主催)、Ririko Nishikawa(DJ)、KATIE SE7EN(DJ)、嶋田ミミ  他

パンデミック後の東京のクラブシーンはどのようになっているのか、また理想的なクラブシーンはどのよいうなものなのか……最初のセッションでは、30年以上、東京のクラブシーンに携わる臼杵杏希子からテーマが投げかけられた。「今はDJも沢山いるし、海外からもDJがくるし、パーティも多いけれど、昔から見るとシーンは盛り下がっているように見える」という意見のもとに、登壇者の意見がシェアされた。

「パンデミックを経て、パーティも始まりシーンは戻ってきた感触はある。良い面、悪い面、どこを切り取るかで変わってくるけれど、年代によっても感じ方が異なると思います。理想は、どのクラブもパンパンになることですけど、人々の遊び方も変わってきているのかなと。ミュージックバーも増えてきて、誰でもDJができるようになって、そっちの方が小箱でパーティをやるよりも人を呼べたりする。平日に地下に潜り込みたくないという若い人たちも多いので、それも時代なのかなと思いますね。だけど、その平日にフラっと立ち寄れるクラブがあるのも東京のいいところなのではないでしょうか」(Pi-ge)




「コロナが明けてパーティが戻ってきたことから、これまでクラブへ行ったことがなかった20代前後の若い人たちが『きてみました!』とクラブへ来出していることを感じます。それと最近は、『DJってどういう風にやるんですか?』と質問をされることがあって、『YouTubeから曲をダウンロードしているんだけど』とか。それは法に触れるからダメだよとは答えますけど、彼らは悪いと思ってやっていないんですよね(笑)」(Ririko Nishikawa)

「今と昔で言うとDJの立ち位置が変わってきていて、クラブに属しているレジデントDJがいない。“クラブ“という場所が、“箱”になっていて、そこにオーガナイザーが入り、自分たちのコンセプトでパーティを行いDJを入れるようになってから、クラブシーンは変わっていったのかなと思います。いい側面ではオーガナイザーが育ってきたことで、フェスのカルチャーも育ったこと。フェスのシーンが大きくなったことから、クラブシーンが衰退していったと思いますが、移り変わりという意味ではポシティヴに捉えています」(嶋田ミミ)

「個人的にですが、周りの話を聞いているとめちゃめちゃドロドロしているんだなと思うことがあります。クラブやオーガナイザーの人たちの中でも、DJはできなくてもいいから、20代そこそこのイケイケのDJを使いたいだとか、そういう話を実際に聞くこともあるし、その度に疑問を感じます」(KATIE SE7EN)


 
 

▷ SESSION 02:フリーランスの今後の活動、女性の活躍の未来


登壇者:Naz Chris、入江のぶこ(東京都議会員)、田中雅史(一般社団法人 日本ミュージック・バー協会代表理事)、瀬野泰祟(弁護士) 他

今年は11月よりインヴォイスシステムもスタートすることもあり、パンデミック後のエンターテイメントの世界で活動するアーティストたちの経済状況が変わってくると予測し、クラブシーンを軸にさまざまな場面で活躍をするナズ・クリスを軸に、フリーランスで活躍する人たちの未来について意見交換が行われた。

「10月1日より、東京都芸術文化相談サポートセンターが開設されました。フリーランスや小規模の皆様のさまざまな問題……契約、申請、経費に関して、パワハラなどの問題など、さまざまなことを相談できる窓口及び、情報提供できるサポートセンターになります。行政のやることは敷居が高いだとか、格好悪いイメージがありますが、コロナを経て気軽に行政へ相談できるように皆様もなっていると思うので、是非活用していただければと思います」(入江のぶこ)




「フリーランスとして相談を街の行政に話したことはこれまでなかったのですが、この3~4年、コロナ禍の中でフリーランスを支援することに関して“ナイトクラブ“という言葉を使って行政の方々と話をすることができました。一緒に時間を過ごしてみて、以前よりもサポートも増えたのではないかと感じています」(ナズ・クリス)



「六本木、渋谷を中心とした箱を支援していますが、この3年間はコロナの影響もあり活動ができず、僕らが仕事ができないイコール、フリーランスで活動している人たちの声が届かない状況にありました。フリーランスは世間的には、勝手に好きなことをやっている人たちなんでしょうと見られがちなところで、ないとシーンが戻ってきたこともあり、支援を続けていきたいと思います」(田中雅史)




▷ SESSION 03:プロフェッショナルの流儀


登壇者:臼杵杏希子、深山恵子(絵描き、イラストレーター)、中市好昭(VJ、映像作家、SYMBIOSIS Inc.代表、株式会社alphaspace代表)

プロフェッショナルとはどういうことなのか……長期に渡り活躍する2人アーティストを招き、彼らの活動を元に、プロに対する意識を改めて確認をした会。フリーランスとして25年以上、絵描きとして活躍する深山恵子は、2019年に開催された「Chicks On A Mission Tokyo 9つのアートとマニフェスト」にて、作品を描いたアーティストの1人である。そして中市好昭氏は、アパレル業界やストリートカルチャーをはじめ、多くの企業の作品を制作し、またクラブシーンではUltraMusicFestival JAPANや、EDC JAPANなどのビッグフェスの映像から、さまざまなパーティの映像を手掛けてきた日本を代表するVJ、映像作家だ。先日、闘病の末他界された中市好昭氏のメッセージをここで受け止めて欲しい。

「山本寛斎の元で社員として働き、退社後は25年間フリーランスで絵を描いていますが、何をプロフェッショナルにするかはその人次第ではあるけれど、お客さんを喜ばすことができる、お客さんのいいところを引き出すことができる作品を創る、ということが端的に言えることなのではないかなと思います。フリーランスで活動している期間が長いと、『何をやっている人なんですか?』と聞かれることも多いし、居場所のわからない人みたいに捉えられることも多かったのですが、きちんと自分の立ち位置を言葉にすることで前進できることを、最近は強く感じています」(深山恵子)




「コロナ禍では、何が自分たちでできるかと考え、オンラインに焦点を当て、メタバースやXR LIVEなどの最新技術を取り入れクラブシーンを盛り上げてきました。プロフェッショナルの流儀とは何かと言うと、楽な道はないということですね。納期を守る、クライアントの意見を聞く、そしてそれを継続できること。そこにアーティストとプロの分岐点というものを感じます。自分自身は、20代はとにかく頑張って、それに人々が注目してくれて、20代を経た30代はそう簡単にはいかない。本当に実力が発揮されるのは30代で、自分の表現を突き詰めるのか、それとも相手と一緒に物事を創り上げていくのかで、アーティストとプロフェッショナルは分かれる。僕にとって、DJという存在はアーティストなんですが、その人なりの感情を一晩で出せるスタイルのDJが好きなんです。コロナ渦で、そういうことができる日本のDJも増えてレベルが上がったと思うので、この先の日本のクラブシーンには期待したいですね」(中市好昭)



▷ SESSION 04: ADE(アムステルダム・ダンス・イベント)


登壇者:Meindert Kennis / Director of ADE (Amsterdam Dance Event)  

毎年、オランダ/アムステルダムで開催されるダンス・ミュージックの祭典「アムステルダム・ダンス・イベント(ADE)」。ここ数年は毎年、世界各国から50万人もの人々が集まる、国をアムステルダム市を巻き込んだビッグイベントとなっている。ちなみに、Chicks On A Missionの発足もアムステルダムである。世界でもトップクラスとなったADEの魅力について、アムテルダムよりリモートでADEのディレクターでありMeindert Kennis氏が登壇、ADEについて話をしてくれた。

「ADEはアムステルダムにて、1996年にスタートしました。音楽を制作するアーティストや、パーティをオーガナイズする人たちを巻き込み、最初は200人くらいの人々が集まる小規模なものだったのですが、27年という月日をかけてオランダで最大規模の、世界各国から約50万人もの人々が参加する大きなイベントになりました。どうやって人々にエレクトロニック・ミュージックに関して教育することができるのか、また若い世代の人たちにチャンスを与えることができるようやっています。助成金を受けて、数百ユーロあるので、それを元に良いコンテンツを考えています。コロナ最中は世界的にいろいろなことが足止めを喰らいましたが、経済もまた動き始めているので嬉しく思いますね。是非、ADEへ遊びにきてください。ダンスミュージックにおいて、さまざまなセッションをしましょう」(Meindert Kennis)


セッション終了後はカクテルタイム。オランダ大使館が振る舞う軽食とともに、Chicks On A Missionが推薦するフィーメールDJたちをバックに、セッションに参加した人々がそれぞれの活動や思いを交流し合う場へ。更に交流を深める会へとなっていった。以下、今回のサマーセッションをプロデュースした、Chicks On  A Mission Tokyo代表の臼杵杏希子さんよりメッセージが届いたのでお伝えします。 「ナイトメイヤー(夜の市長)という言葉と活動を生み出した発案者のMirik Milan氏とアムステルダム市が始めたことが世界中のニーズとなり、今でも毎日、夜の活性化についての討論が行われています。2017年、アムステルダムで行われた会議から生まれたChicks On A Mission Tokyoですが、コロナも明けてこのような会を開催することができ、みんなで意見交換できたことを本当に嬉しく思います。今後も人同士が会って話していろんな意見を交換し合えるラウンドテーブル会議を続けていきたいと改めて思いました。それが次のナイトシーンの活性化につながることと信じています。改めてオランダ大使館のみなさま、参加していただいた皆さま、本当にありがとうございました」(臼杵杏希子)