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NAKED SPACE 20周年からみる島根県松江 - 水の都の音景色 -

Text & Photo: Atsushi Harada
Photo Support: Al
Support: HAL 
Direction & Edit: Norihiko Kawai

音が会場を包み、刻々と時間が流れる。ミラーボールの閃光がフロアを一面に照らす。神々が集うとされる神話の国・島根県。美しい水の都“松江“にあるクラブ「NAKED SPACE」が20周年の誕生日を迎えた。


NAKED SPACEとの出会い


 皆様は山陰の街を訪れた経験をお持ちだろうか?

山陰はその名の由来通り自然豊かな山々に囲まれた地域であり、日本海に面した島根県と鳥取県の両県を示す言葉だ。また島根県は陸の孤島ともいわれ、未だに謎に包まれていることも多い場所である。
今回、特集するのは島根県松江市大橋の落ち着いた京店商店街に位置するNAKED SPACE。私が同店を初めて訪れたのは2019年、ハロウィンの季節だった。会場に足を踏み入れると階段に宇宙的なグラフィティーが描かれ、赤を基調としたバーカウンター、大きな瞳でフロアを眺める伝説的ジャズマン、マイルス・デイビスが描かれていた。フロアの四方向にスピーカーが設置され、フロア全体が音に包まれる。そのスタイリッシュでクールな空間に驚き、カメラマンである私は朝まで踊り、シャッターをきった記憶がある。
パーティーが終わり、朝、外に出ると日本百景に数えられる宍道湖が広がり、美しい朝日を臨むことができた。これが私の松江でのクラブ初体験だった。


NAKED SPACE @Halloween Party 


島根県松江市宍道湖からの朝日


NAKED SPACEの創設から現在まで


 NAKED SPACEは、2004年7月にオーナーのOkui Jun氏によって始動した。山陰を中心としたクリエイターの表現とコミュニケーションの場所で、島根県に存在する100人規模の集客可能な防音が施された唯一のクラブだ。

同店の新メンバーには、90年代の野外パーティーシーンで活動していたプログレッシブ・トランスやハウスに特化していたオーガナイザー/レーベルStargateのDJであり、野外パーティー『宴 -Utage -』のメンバーだったHALが企画・運営をサポートしている。HALは東京・大阪・京都・広島などのアーティストを招聘し、同店と全国のシーンを繋ぐ役割を担っている。

Okui氏はクラブ創成期80年代後半より東京を中心にDJ活動をしていた。現在もオーナー兼DJでありレコードディガーでもある。国内初のHOUSEクラブ『THE BANK』から影響を受けたと述べていた。

冒頭で述べた同店に描かれた宇宙空間 x SFなグラフィティは、デトロイトにおいてテクノを生み出したUnderground Resistanceの正規メンバーでもあるグラフィティー・アーティスト・HAQQの作品。この作品は、デトロイトにあるDerrick May創設のTRANSMAT RECORDSの事務所の壁に描かれた作品の次に大きいとのことで、マニアならこの作品を見に行くだけでも価値があるだろう。

壁画:Abdul Quadim Haqq作品(Underground Resistance) 


HAL(ex Stargate/宴)


20周年パーティー井上薫の出演


 7月20日に同店で行われた20周年パーティーには井上薫が登場した。同氏は同店で行われた『nature ground』というパーティーがきっかけで交流がスタートしたとのこと。
現在の松江ダンスミュージックシーンを創りあげている『guidance』のクルーがオープニングに登場し、日付が変わるタイミングで井上薫が登場した。 DJブースに立った時の圧倒的な存在感、約3時間半に及ぶ、ミニマルからブラックミュージック、民族的な音楽と引き出しの多さに、ただただ酔いしれた。濃密でクール、そして情緒的なセットを体感させてもらった。パーティー終了後には拍手と共に、20周年を祝う人々の笑顔でバーカウンターは満たされていた。


Kaoru Inoue 20周年パーティーにて


20周年パーティー後の場面

 

松江のシーンが持つ課題


 松江は城下町の影響からか、茶や華道が栄えた歴史があり、いわゆる日本的な文化が栄えているように思う。また、美的感覚を重視する華やかな気質を持っている人が多いのも特徴だ。街を訪れた人なら、そのエッセンスを感じたことがあるはずだ。地方都市の特性上、人と人との距離感がとても近く感じられる。人の距離が近い事や土地柄もあり、各世代・ジャンル・コミュニティが独自のスタンスでパーティーを作っており、メンバーが固定されやすい傾向も感じることもあった。パーティーごとの特色やスタイルが際立ち、パーティークオリティと集客が上手く直結しないなど、地域特有の課題を感じることもあった。

松江城天守閣からの街並み


繋がる未来


 一方でパーティーを介して、人と人の距離が近づけば近づくほど居心地がよくなるのも事実だ。そして、たくさんの素晴らしいクリエイターとの出会いに恵まれる場所へと変わっていくのは特筆すべき点だ。
私はNAKED SPACEの空間を通じて素晴らしい時間を多くのメンバーと共に過ごすことができた。同店では毎週金曜日に地元のDJが出演可能なイベントを行い門戸を開いている。


√9符和 Presents〜曇りなき空〜集合写真

 

他にもある島根の魅力的な場所


大正時代に建てられた歴史的建造物(出雲ビル)の3階にあるNUは、NAKED SPACEとも交流が深く、良質な空間を提供している。女性も足を運びやすく、若手のDJから世界的にも名高い日本人DJのブッキングも行っている。また松江を代表するプロデューサーの√9符和について、是非とも触れさせて頂きたい。ULTRA-VYBEを通じて、全国に良質な音楽を届けてているアーティストだ。沖縄を代表するラッパーRITTOxCHOUJI との共作は必聴である。



DJ Ken Ishii 30th Anniversary Tour in NU松江  

おすすめの松江のレコードショップは、東京にも支店を持つ、松江のファッションや音楽カルチャーの先駆け的な存在となるEAD。出雲のカルチャー発信スポットであり、スケーターショップ兼レコードショップのKitamuradenki Records。夕暮れの宍道湖を眺めながら温かいサウンドとおしゃれな時間を楽しめる Café PUENTE。そして多種多様な美味しいお酒が味わうことができ、出雲の地元クルーが定期的にパーティーを開催している出雲市駅近くの老舗DJ Bar “Area Due”も是非チェックして頂きたい。

EAD店内


Café PUENTE


NAKED SPACE オーナーJun Okui氏


NAKED SPACE マイルスデイビス・グラフィティー


OKUI氏は「いいモノいい音に反応する松江の人々や県内外から訪れる方々に、唯一防音設備のあるNAKED SPACEから松江のパーティーが持つ魅力をスタッフと提供し続けていきたい。そしてなにより時代とお客さんと共に育つことを大切にしていきたい」とコメントしていた。この街には特質したカルチャー、クラブシーンが存在している。記事を読んで頂いた皆さまには、ぜひとも一度、松江の空気感や魅力を体感してほしい。きっと松江だからこそ体験できる、かけがえのない時間があなたを待っていると思う。
 

◼️店舗情報


NAKED SPACE (https://naked-space.com/)
〒690-0843 島根県松江市末次本町77マツエビル3F 

NU(https://nurecords.jp/
〒690-0061 島根県松江市白潟本町 33 出雲ビル3F東側

EAD松江(http://www.eadrecord.com/special/shimane.html
〒6900056 島根県松江市島根県松江市雑賀町270

Café PUENTE(https://www.cafe-puente.com/
〒690-0843 島根県松江市末次本町36 E.A.Dビル1F

北村電機レコード(https://www.threads.net/@kitamuradenkirecords)
〒693-0004 島根県出雲市渡橋町340-3

AREA DUE(https://tabelog.com/shimane/A3202/A320201/32004588/)
〒693-0001 島根県出雲市今市町931-2