ドイツのみならず、世界のテクノレーベルの代表格として言及される「Cocoon recordings」。その首領であるSven Vath。クラブ、レーベル、ブッキングーエージェントなどあらゆる方向からCocoonを展開し、拡大する彼のスピリットは「One for All. All for One」(1人は全員のために、全員は1人のために)。石野卓球やToby、Dr.Shingoなど、日本のテクノアーティストとも交流が深く、 Richie Hawtinと共に出演した、渋谷のWOMBにおける2年連続してのカウントダウンパーティーでは、テクノファンのみならず、すべてのミュージックラバーに対してSvenの衰えることのないパワーを見せつけた。人を魅了して離さない彼の魅力とはいったい!?それを探るべく、さっそくWOMBへと乗り出した!
メインルームはSvenの6時間単独セット!
まず最初にメインダンスフロアへ。メインルームはSven の6時間単独セットだ。32時間という驚異のロングセット記録を持つ彼にしてみれば、もの足りないくらいであろうか。90年代前半のブロンドさらさらヘ ア、その後のモヒカン風スタイルを経て、最近ではサイド刈り上げのオールバックが板に付き、なかなか似合っている。
1時間後、まだ激込みという感じではないが、徐々に人の波が押し寄せてきて、いい具合に込み合ってきた。今回の来日は彼のニューアルバム「The sound of the fifthseason」のプロモーションツアーの一環であるため、プレイリストはやはりニューアルバムの中の曲が多かった。
しかし、いきなり「!!!」(チックチックチックと読む)の「Hello? Is This Song On?」や「Freeform」の「Eeeeaaooww」といったエレクトロクラッシュやニューグラム、ニューウェーブエレクトロロッカーな感じの、こ れまでのSvenのプレイリストとは異なる曲がかかったのには、ちょっとした違和感を覚えた。なにしろ今までの典型的ジャーマンテクノやハードミニマルの Svenスタイルとは異なり、ロックテイストのものをプレイするということはまったく予期していなかったからだ。が、そこはさすがのSven、これも1つ の戦法だったのだろう、そこでクラウドにある種のショックを与えて引きつけるのかのごとく、その後は持ち前のハードテクノでわれわれを彼の世界に導いてく れたのである。
東京でも、そういう80年代初期のUKロックなどを中心としたイベントが開催されており、ヨーロッパではその種のパーティーがかなり流行っているとは聞いたが、ふむふむ、Svenがプレイするのならその話も本当かもしれないと、やけに納得してしまった。
クラウドの高揚は頂点に!
さらに2時間後、1つのストーリーに仕上げるかのごとく、順調にプレイを繰り広げるSven Vath。日本を代表するテクノDJであると同時に彼の友人でもあるTobyが遊びにきたこともあって、Svenのテンションは一気にアガっていく。
その後はニューアルバムにも収録されている「Geht\\\'s Noch?」を披露。この曲は彼の率いるCocoonレーベルからリリースされており、彼のプライベートチャートにも1位にランクインされているほど、大 のお気に入りの曲なのだ。続いてAlter Egoの「Rocker」でどんどんアゲる(ちなみにコレもニューアルバムに収録されている曲)。そこに、今ではWOMBの特殊兵器ともなっているコン ピュータ制御のフルカラーレーザーと、窒素ガスという冷却兵器がSvenの音と交差し合い、クラウドの高揚は頂点を迎える。この2つの兵器にSvenのサ ウンドがミックスされれば、われわれはあっという間にフューチャリスティックな異次元空間へと連れ出されてしまうのである。WOMBの気合いの入れようは こんなところにも感じられる。
終盤を迎えると、Solventの「Radio Gaga」の小川に流れるようなキレイなメロディーラインが、耳に心地よく入ってくる。当然のごとく「One more tune!」とアンコールの声が響き渡り、Svenは2回もアンコールに応え、パーティーは大成功のうちに終了。Svenは自らダンスフロアに降りて来 て、クラウドと交流を図り、かなりご機嫌のようすだ。
暴れん坊大将に早変わりのSven!
その後は、場所を4FのVIPラウンジに移動して、アフターパー ティがスタート。ご機嫌になったSvenはノリノリでプレイを開始。なごやかな雰囲気の中でアフターパーティーは進行し、われわれをいろんなパフォーマン スで楽しませてくれた。まずは、お決まりのヘッドフォンをガスマスク風に縦にかぶり、象のように息を吹きかけるパフォーマンス。これは「The Sound Of the Fifth Season」のDVDの中でも披露しているので、わからない方はぜひ見てください。そして、彼が着ていたグレーのTシャツをテロリスト風に顔にかぶせた り、さらには脱ぎだしてクラウドと一緒になって踊っているではないか。これまでの愛想のよいジェントルマンという印象は跡形もなく崩れさり、暴れん坊大将 に早変わりのSven。見方によっては子供のように無邪気であると表現できなくもないが、そんな奇行乱行を繰り広げるSven様を、すでに仲間と化したク ラウドは、暖かく大きな心で受け止めていたのである。まだまだプレイし足りない(暴れ足りない?)感じのSvenだったが、時間の制約もあり、しぶしぶ終 了。たくさんの仲間に囲まれ、自宅でプレイしているような雰囲気を、Sven自身が一番楽しんでいたに違いない。