ドイツを代表するフェスティバル、Fusion Festivalをクラベリアベルリン支部が取材いたしました。ノンコマーシャル、クリエイティブ、ラブ&ピース…フェスティバルに重要な要素を全て兼ね備え、本当の意味で成功を収めているこのフェスティバルの様子をお楽しみください。
ドイツを代表するフェスティバルFusion Festival
1989年。ベルリンの壁が崩壊し、東西冷戦が終結。当時のドイツ及びヨーロッパには歓喜の渦が巻きおり、まるでパーティーのような多幸感が人々を包んだ。そのダイナミックな歴史の変動のエネルギーに感化され、時同じくしていくつものパーティーが始まった。
それから19年。その崩壊の現場の宴に集っていた者たちの懐古的な気持ちを呼び覚ます、ドイツを代表するフェスティバルが、今年も6月末に開催された。
Fusion Festival。名前も秀逸だが、その中身は実に独特な、\'味\'のあるギャザリングだ。
会場は旧ソ連軍の秘密飛行場跡
会場はベルリンから北へ160kmほど行った、当時の東西国境近くにあ る、旧ソ連軍の秘密飛行場跡。オーガナイザーは既に、この場所をフェスティバルの収益で購入している。冷戦の境目にある秘密基地跡ということで、この場所 でどんな飛行が行われていたのかは容易に想像がつく。 さらにこの会場には上空から発見されないように土をかぶせて草を植えた小高い山のような、大小の格 納庫が合わせて20個ほどあり、それらはステージやクラブ、時にはキャバレーやシアターとして利用されている。 野外、室内、テントもあわせてオフィシャ ルで17個、今回筆者が発見しただけでも2つのシークレットステージがあり、その他同時多発的におこるパフォーマンスとエキジビションは数えきれないほど だ。水もあり電気もあり、下水道まであるこの広大な会場は、開催時には一つの町となり、六万人ものパーティー・ロイテ(ドイツ語でPaty People)で埋め尽くされる。そしてこのフェスティバルに集う人々は受け手でもあり、また表現者でもあるのだ。
ノン・コマーシャルフェスティバル
Fusion Festivalについて、ラインナップの話を持ち出すことにはあまり意味を感じ無い。なぜなら、このFusionはノン・コマーシャルフェスティバルで あり、事前に出演アーティストの発表をせず、またスポンサーやメディア、プレスなどの関係者とも一切関わりを持たないため、ビックネームが名を連ねるその 他のフェスティバルのラインナップとは比較されるべきではものではないらだ。
(告知されるのはドイツ国内のあらゆる町中に貼られるポスターと、会場へ入場する際に配布されるリストバンドの裏に、翌年の開催日が印刷されている情報のみだ。)
多種多様なステージ
今年の一晩目はMagdaやSteve Bugらがボランティア出演し、昨年の一夜目に行われた、Minus Nightを継承したものだった。もちろんその他にも国際的に活躍している出演者は数多いが、このフェスティバルはやはりそれのみでは語れない。
テクノステージのTurm Buhne、ロックステージのHanger Buhne(フェスティバルの象徴、鉄製のロケットのオブジェはこのステージの上にある)、そしてトランスステージ。この三つを核として、Dub station, Seebuhneなど、その他中小のステージや、パフォーマンス、映画館までが四日間(時にはそれ以上)、同時多発的に開催される。
多種多様な楽しみ方
筆者にとって昨年に続く二度目のFusion Festivalだったが、今年はあえて大きなステージに留まらず、裏の小さなステージや出し物を中心に楽しんだ。
グラフィティゾーンがあり、時間限定でひっそりシルクスクリーンを行う店もある。夜しかやらない見世物小屋や、ツリーハウスのある森のステージ、360° スクリーンのアンビエントテント、フリークショウに阿片窟のようなBarまである。夜には人工満月が用意され、お金も引き出せるし、日曜雑貨も購入でき る。さらに、なんとArbeitsamt(独語で労働局)があり、現地で労働力を募集している。(もちろん、有給!)
Fusion Festivalの神髄
それぞれのハンガーは上れるようになっており、会場全体を俯瞰で 見渡せる。ダンスフロア以外のエリアにも新鮮な感動と新しい出会いが、所狭しと用意されている。音楽だけではなく、さまざまなアートやカルチャーを融合さ せたFusion Festivalの神髄はそこにある。 日が暮れると、デコレーションのタワーや、山の上のロケットが日光を切り抜く。共産テイストにデザインされた会場 の中で、夕暮れにその光景を見ると、まるで戦争を終えた後の平和の宴が、未だに続き、これからも終わることなく続いていような気がしてくるのだ。
進化するギャザリング
国境を超えてジャンルを超えて時間を超えて、歴史を刻みながら、出会いを媒介して進化し続けるこのギャザリングは今年で12回目の開催だった。
来年も、またあのロケットの下で。