REPORTS

FUJI ROCK FESTIVAL '11 Day 3

(※2日目のレポートからの続き http://www.clubberia.com/reports/965-FUJI-ROCK-FESTIVAL-11-Day-2

 

●31日(日)
翌朝、強い雨の音に起こされるが二度寝。11時に起き支度をして会場へ向かった。
友人と、オアシスで朝食を食べる。一夜明けて明るい日差しと多くの人がいるロケーションで朝食を取っていると、ひとつの村で生活しているような感覚になった。

友人と別れ、フィールドオブヘブンへ「GOMA & THE JUNGLE RHYTHM SECTION」のライブを見に行く。ご存知の方も多いと思うがGOMAは、2年前に交通事故で高次脳機能障害を発症し、「GOMA & THE JUNGLE RHYTHM SECTION」の活動を休止していた。そして、今回のフジロックで「GOMA & THE JUNGLE RHYTHM SECTION」の復活ライブを果たすこととなっていた。フィールドオブヘブンには多くのファンが集まっており、彼らの復活ライブを待ち望んでいたのが伺える。オーストラリアの先住民アボリジニが作り出した、世界最古の木管楽器ディジュリドゥ。その楽器の出すビヨビヨという独特な音色。バンドの中央に立つGOMAの存在は心臓、彼を囲うパーカション、ドラムのリズム隊が、その音色に血流を与えて、まさに生命力溢れる音楽。ライブの最後に、GOMAが言った言葉が忘れられない。

「自分が今まで、どのように生きてきたか、このステージにどうやって来たかもわからないけれど、ただひとつ、これだけは確実に言えることがある。俺は生きてるってことやねん」

泣き崩れる彼に「おかえりー」とファンが叫ぶ。「事故に遭って、人生が終わったと思いました。みなさん、僕を待っててくれてありがとう」何度も「ありがとう」とお辞儀をする彼に、多くの拍手が注がれた。

「GOMA & THE JUNGLE RHYTHM SECTION」の復活ライブに胸を強く打たれながら、「なぎら建壱&OWN RISK」と「加藤登紀子」を見にオレンジコートへ。残念ながらキャンセルとなった「BUDDY GUY」もオレンジコート。どうやら、私はオレンジコートのアーティストが好きなようだ。

私の中で、「なぎら建壱がフジロック?なぜに?」というのが正直な印象。調べてみると「いっぽんでもニンジン」をリリースしていることにびっくりした。私は、ポンキッキを見ていた小さいころから、なぎら建壱のメロディーを刷り込まれていたことになる。ということは、私たちの多くは、"なぎらチルドレン"なのだろうか。自然とオレンジコートに足を運んだのももはや必然だったのか。。。実際に演奏を聞いてみると、彼がフォークシンガーとしての実力に納得する。そして午後3時に合う空気感、笑いを生み出すしゃべりにいい時間を過ごした。彼らの下町感溢れる和製カントリーを聴いたせいか、不思議と居酒屋(とくに焼き鳥)に行きたくなった。

パフォーマンスとパフォーマンスの間はちょうど1時間くらい。すっかり"ORANGE COURT"の住人と化してしまった私は、居眠りしながら次のアクトを待っていた。次のアクトは「加藤登紀子」。真っ赤な衣装を纏った彼女。優しそうな見掛けとは裏腹に、ハスキーで艶のある歌声。まさに和製ディーバと納得させられる印象を持った。
フジロックのテーマソングでもある"POWER TO THE PEOPLE"を2曲目に持ってきて、会場はその意外な展開に一気にヒートアップ。そして、そのままJohn Lennon「Imagine」を歌った。しかも日本語で朗読する彼女。ベトナム戦争という無意味な殺戮に対する全世界的な反戦ムードを反映し、宗教や国境、イデオロギーを巡る対立の無意味さや世界平和を歌っている曲だ。3.11を経験し、死をリアルに意識した私にとっては、最初の歌詞を3.11以降の出来事に置きかえて解釈したせいか、胸に染みた。

想像してごらん、天国なんか無いって
やろうとすれば簡単だろ
僕らの下には地獄なんて無くて
僕らの上にはただ空があるだけ
想像してごらん、全ての人たちが
今日のために生きている

口に出して言うことでその言葉には魂が宿り、聞いた者は、その言葉を心の中で成長させる。3.11で、地方へ非難しようとした「加藤登紀子」が、我が子から「お母さんには、やるべきことがあるはず」と言われ、作った曲「今どこにいますか」が歌われた。彼女のパフォーマンスは、一貫してメッセージを伝えようとしていたように思える。それが「POWER TO THE PEOPLE」しかり「Imagine」しかり「今どこにいますか」で感じた。歌で会場の心と心を繋げたパフォーマンスに、心から拍手を贈らせてもらった。

その後、夕暮れと曇り空にその静寂と轟音が共存した「MOGWAI」、そしてそのMOGWAIのレーベル"Rock Action Records"から作品をリリースする日本のポストハードコアバンド「envy」、一貫してストイックな演奏に陶酔させられた「YMO」、戦えと本能に訴えかけてくるような狂気の音楽だった「ATARI TEENAGE RIOT」を立て続けに見て回った。

そして、21時半からヘッドライナーである「The Chemical Brothers」が登場するわけだが、その真裏で苗場食堂に出演した「WILDBIRDS & PEACE DRUMS」をどうしても見ておきたかった。自分のタイムテーブルを作るときに、YouTubeで知らないアーティストを片っ端から聴いていた中で、一番鳥肌がたったアーティスト。男性ドラマーと女性ボーカリストという、いたってシンプルな構成。ただ、このビデオ http://www.youtube.com/watch?v=xtR82-sGyig を見て、その魅力に一瞬で取り付かれた。なんといってもボーカルのMariam Wallentinの声にやられてしまう。ジャズシンガーのような繊細さと、大胆さの両面を兼ねそろえた歌唱力。裏が「The Chemical Brothers」ということもあって、苗場食堂はもちろんオアシスからも人がいなくなる。せっかくいいアーティストなのにと、少しもったいなく思うが40、50人で彼らをゆっくり見られている状況は、贅沢な時間だと思う。「The Chemical Brothers」のために15分しか見ていないが、少しでも見ておいてよかったと思えるアーティストだった。こういった新しいアーティストとの出会いがフェスの楽しみ方のひとつだと思う。

そして急いでグリーンステージへ向かう。「The Chemical Brothers」が出す音と、歓声はすぐに聴こえてきた。ステージが見え、背面の映像の光で私たちからは逆光になり、彼らのシルエットしか見えないが、それがまた神々しい。「The Chemical Brothers」のライヴを体験するのは初めてだった。音楽がカッコイイのはもちろんだが、映像、照明演出に惹きこまれていった。PVで使用した映像を使った「Horse Power」、「The Swoon」も手を加えられ新しいバージョンへ。とくに「The Swoon」から「Star Guitar」への展開は、ミックス部分が気持ちよくはまっており、両曲のトラックの良さが引き立っていた。

実際の映像はYouTubeにアップされているが、やはり生での体験に勝るものはないと、あとで見直していて痛感する。約3万人もの人が一箇所に集まり、歓声と両手を上げて踊っている空間を体験したのとしていないのとでは、残っているものがやはり違う。これは、あの現場に居合わせた人にしか共有できない特権だと思う。
構成は、新しいアルバム「Further」からの曲が多めだったが、やはり「Star Guitar」、「"Hey Boy, Hey Girl」、「Saturate」、「Block Rockin' Beats」といった往年の名曲たちが盛り上がっており、私自身も「Saturate」に一番高揚した。映像が好きだったというのもあったが、簡単に口ずさめる曲調がここまでハイにしてくれるというマジックが、魅力的な曲だと思っている。終盤でかかった「Saturate」を聴きながら、一気に思い出が30日の朝からがフィードバックしてくる。もうすぐ終演ということを予感させられると、悲壮感が湧いてくる。その悲壮感とともに「Block Rockin' Beats」を聴いて「The Chemical Brothers」のパフォーマンスは終了した。

ヘッドライナーが終わり、スペシャルゲストである「THE MUSIC」の出演時間が、複雑な心境が交錯しながら近づいてくる。「THE MUSIC」は、8月5日に地元リーズでのコンサートを最後に解散する。7月は、日本ツアーを行っており、日本での彼らの最後の公演に「FUJI ROCK FESTIVAL」のグリーンステージという最高のステージが用意されていた。
「THE MUSIC」の歴史は「FUJI ROCK FESTIVAL」と共にあったといっても過言ではない。初来日となったのは2002年。「THE MUSIC」の代表曲「THE PEOPLE」が収録された1stアルバム「THE MUSIC」のリリースもこの年だった。この曲は、普段ロックをほとんど聴かない私でも知っている。この年、ニューカマーの彼らがどれほど注目を浴びていたかというとレッドマーキーに入場規制がかかったといえば想像できるだろう。それ以降も、2003年は、グリーンステージとレッドマーキーに2デイズ出演。2005年は、グリーンステージ。2008年にはホワイトステージのトリを務め、「THE MUSIC=フジロック」というような親密な関係性が見えてくる。

彼らのライブは、日本でやる最後のライブというだけあって鬼気迫るものがあった。そんなに飛ばして大丈夫か?と思っていた。ただ、ボーカルのRobert Harveyの動きや振り絞る声、ギターのAdam Nutterの零れ落ちる汗を目にし、私のようにライトなファンでも心掴まれるものがあった。曲が終わるたびに、MCでRobert Harveyが「アリガトウゴザイマス」と毎回言っていた。まるで2002年から2011年の9年間を含めたお礼を言っているように聞こえた。そして、彼らの代表曲「THE PEOPLE」がかかったときに、会場にいたフジロッカーは終演を感じていただろう。大合唱と声援が惜しみなく注がれ、私たちからの「アリガトウ」も彼らに届いていただろう。ステージから消えた4人を本気でせがむオーディエンスからの「アンコール」が響いたが、フジロックの主催者である日高氏がステージに現れ「彼らは、フジロックで散りたいと言っている。アンコールはありません」と伝え、彼らが再びステージに上がってくることはなかった。

人生初の「FUJI ROCK FESTIVAL」は、本当に過酷だった。正直、甘くみていた。できるだけ軽装で行ったため、準備したのは、雨対策のみ。腰痛持ちにも関わらずイスすら持って行かなかった。安いだけの長靴だったので重くて歩くのが億劫にもなった。記事を書くためほぼ1人で行動していたのは、仕事といえどやっぱり辛いものがある。ただ、アーティストは私たちに感動をくれる。その感動を私たちは会場で多くの人と共に、宿舎では友人と共有し、かけがえのない時間があったことを宝箱の中にしまうことができる。こんな辛い思いをしているのに、結局最後は苗場に来てよかった、楽しかった。そしてまた来年も来ようと思っている。

今年は震災の影響もあり、私たちから見たら「海外アーティストは来るのか?」「それより、開催自体できるのか?」とすら思っていた。もちろんこれ以上に、私たちが見ることはできない部分の苦労が、主催者サイドを襲ったと思う。ただこんなときだからこそ、開催されてよかったと思うし、初めて参加した私がいうのはおかしな話だが、過去最高の「FUJI ROCK FESTIVAL」になったのではないだろうか?音楽の持つパワーを感じ、メッセージを受け継ぎ、これからの生活に生かそうと思えてくる。人間は、愚かだけれどすばらしい生物だ。感動を共有することができる。困難があれば、手と手を取り合い助け合うことができる。他人の幸せを願うことができる。そんな人間の持つパワーを感じることができた、人生初の「FUJIROCK FESTIVAL 11」だった。

Text : yanma (clubberia)

 

[GREEN STAGE]
THE CHEMICAL BROTHERS / YELLOW MAGIC ORCHESTRA / MOGWAI / FEEDER / THE KILLS / GLASVEGAS / YOUR SONG IS GOOD / Special Guest : THE MUSIC

[WHITE STAGE]
WILCO / CAKE / 斉藤和義 / eastern youth / NO AGE / BRITISH SEA POWER / トクマルシューゴ / RINGO DEATHSTARR

[RED MARQUEE]
ATARI TEENAGE RIOT / envy / BEACH HOUSE / MO'SOME TONEBENDER / WARPAINT / THE BLACK ANGELS / APOLLO 18 / oh sunshine

[SUNDAY SESSION]
くるり / TOWA TEI / SOIL & "PIMP" SESSIONS / DJヌ・マーク (JURASSIC 5) / MASAmatix

[FIELD OF HEAVEN]
DARK STAR ORCHESTRA / CORNERSHOP / TINARIWEN / DACHAMBO / GOMA & THE JUNGLE RHYTHM SECTION / Nabowa

[ORANGE COURT]
バディ・ガイ / FUJI BLUES PROJECT(木村充揮、KOTEZ、近藤房之助、団、永井“ホトケ”隆、三宅伸治BAND) / 加藤登紀子 / なぎら健壱 & OWN RISK / SION / ハンバート ハンバート

[THE PALACE OF WONDER]
ALTZ、THE BLACK ANGELS、DR. IHARA(CLUB SKA)、BIG WILLIE'S BURLESQUE、サイトウ"JxJx"ジュン(YOUR SONG IS GOOD)、The Cabaret Cats with JVC FORCE TYO、シム・キャス、ジャン・モンティ、ジョー・ピーコック

[DAY DREAMING]
MATSUSAKA DAISUKE、YODA、HIROSHI WATANABE aka KAITO、ALTZ

[Gypsy Avalon]
CONGUERO TRES HOOFERS、blues.the-butcher-590213、MANNISH BOYS(斉藤和義×中村達也)、ラキタ、SILVERBUS、KENSINGTON HILLBILLIES、大塚寛之 to Madre Tierra

[ROOKIE A GO-GO 2011]
TADZIO、ヤーチャイカ、Super Spreaders、THE XXズ、ヘルメッツ

[苗場食堂]
苗場音楽突撃隊(池畑潤二、井上富雄、松田文) and Special Guests、WILDBIRDS & PEACEDRUMS、MaNHATTAN、EKD

[木道亭]
コトリンゴ、高田漣、THE DEKITS

[PYRAMID GARDEN]
SANDII AND HULA STARS、岸眞衣子、SUNIL DEV & BABU

[CAFE DE PARIS]
レ・ロマネスク、JOJO SWING QUINTET、BIG WILLIE'S BURLESQUE