clubberiaを御覧の皆様こんにちは!
さて先日、渋谷道玄坂を拠点に展開するミュージック・ブランド“OIRAN MUSIC”より、Sakiko OsawaさんのNEW EP「Chronic」がリリースされました。
Sakiko Osawaさんは “Wired Clash”や“ENTER.Sake”にも出演している気鋭女性DJ
でもって、この「Chronic」には、CD HATAもTechno Remixと、Dope Ambient with Namakopuri Remixで参加しています。
今回はこの「Chronic」が制作された様子をSakiko Osawaさんにお伺いすることになりまして、そしてなんと同じレーベル“OIRAN MUSIC”からもソロアルバム「Technoca」をリリースしている大先輩 watusiさんもお招きして機材話に華を咲かせました。
watusiさんは、COLDFEETをはじめアンダーグラウンドなクラブミュージックをその足場に、中島美嘉さんやBoAさんなどのプロデュースでJ-POPの領域でもヒットを飛ばす、そのキャリアは40年近くの大ベテラン
ホントためになるお話をいっぱい聞かせてもらいました。
いやぁー凄かった!ここに書ききれないくらい沢山なのでもうさっそく、Sakiko Osawaさんが「Chronic」をどんな感じで作っていったか聞いてっちゃいましょう。
ではでは、渋谷のウォーム・アップ・バー〈しぶや花魁〉からお送りします。
Sakiko Osawa「今、ハードシンセをあまり所有しなくなって、今回のキモになったシンセはTAL-BassLine-101ですね。」
watusi「俺も俄然ソフトシンセばっかりになってきたなぁ。メインのシーケンスの変調していく感じ、めっちゃカッコ良かったよ!」
Sakiko Osawa「VCOのMODを中心に、画面左下のAbleton Liveのオートメーションを使っていろいろいじってますね。」
CD HATA「TAL-BassLine-101は、Roland SH-101をモデリングしてるやつなんだよね。」
Sakiko Osawa「Roland SH-101も欲しいんですけど、値段あがってますよね。だれそれが使ってるとかあると急に値段が跳ね上がったり。」
watusi「そうなんだ。結構みんな機材を手放してってるよね。俺も最近スタジオいっぱいにあった機材を整理して少し放出したんだよね。」
Sakiko Osawa「私の部屋はこんな感じなんですけど、スピーカーはあえてあまりいいやつを使わないようにしていて、いいものを買ってしまうと贅沢な気持ちになってしまって(笑)」
CD HATA「そこは気持ちの問題なんだぁ(笑)。でもTANNOYのスピーカーいいじゃん。おっベースも見える。」
Sakiko Osawa「実は初めてHATAさんに会ったのは高校生の時で、Dachamboで岩手にライブで来てた時に前座でやっていたバンドでベースを弾いていたんですよ。」
CD HATA「おーそうなんだ!俺がwatusiさんに初めてお会いしたのは、もう10年くらい前かな?川崎クラブチッタで、じゃがたら江戸アケミさんの追悼イベントの時にwatusiさんがベースを弾いていて、確かその時のDachamboのライブは演奏時間をオーバーしちゃって、緞帳(舞台を隠すための幕)が降りてきちゃって、電源も落とされて、なんかドリフみたいな感じになっちゃってた記憶がある(笑)」
Sakiko Osawa「さすがDachambo(笑)。今年は自分で演奏したベースで曲も作りたいなぁと思ってます。」
CD HATA「これはMIDIコントローラー?ちっちゃいね。」
Sakiko Osawa「Doepfer Pocket Controlという、今の製品だとUSBケーブル一本で済んじゃうのが、これはMIDIケーブルと電源ケーブルを挿さないと動かないものなんですが、これでさっきのソフトシンセをコントロールしてます。」
watusi「Doepferは昔からの定番だよね。Roland TR-808も持ってるんだ。TR-808とかTR-909のリズムのグルーヴって独特で、キックはジャストだけどウワモノはめちゃくちゃモタるんだよ。それがディープハウスなんかにちょうどいい感じなんだよね。自走して走らせて、そのタイミングに他の音を差し替えていったりする、ディープハウスグルーヴ製造マシーンとして使ってるよ。こないだTR-808の生みの親である梯郁太郎氏が他界してしまったよね。最近自分のTR-808も完全メンテナンスしたところなんだ。」
Sakiko Osawa「このTR-808はガリが出ちゃうんでですけど、逆にそのガリも含めてサンプリングして使ってるんですよ。TR-808のサンプル素材って世の中に沢山ありますけど、ガリが入ってるものは無いじゃないですか(笑)。それが面白いかなと思って。」
CD HATA「確かにガリが入ってるサンプル素材って無いよね(笑)。そういえば昔ヒップホップのローファイな音のサンプリングCDを買ったことがあって、それをCDプレイヤーで再生してサンプラーに録音して取り込んでってやってて、すごい歪んだ音でカッコイイなと思って使ってたんだけど、実はそのCDプレイヤーが壊れてて、他のCDプレイヤーで再生したら意外とクリーンな音でアレ?みたいな(笑)。でも壊れたCDプレイヤーで再生された歪んだ音の方がカッコよく感じたんだよね。」
watusi「とあるレコーディングをしている時に、いろいろな録音方法を試していて、ある時、これ凄くいい音で録れてる!って時があったの。でも実はその時YAMAHA NS-10Mのツイーターが飛んでたんだ(笑)。でもそこで初めて俺はこういう音を求めてたんだ!って気がついて、それまで苦労して録音していたものを全部こういう音に録り直してくれって言ったら、エンジニアにそんなこと言ってるとwatusiさん友達いなくなるよって言われたことがあった(笑)」
CD HATA「昔サンレコのwatusiさんの記事で、何十万円もするマイクで凄いクリーンに録った音を申し訳ないなぁと思いながら過激に歪ませちゃってって記事を読んだことがあります。」
watusi「歪んでる音ってかっこいいよね。プラグインのサチュレーター系もそうだけど、例えばビートルズで有名なアビーロードスタジオのモデリングとかもあるけど、ああいうのって結局何をしているかっていうと、THD(全高調波歪み)を増やしてるんだよね。へたにEQで作っていくより、サチュレーターを上手に使った方が、音を球面体で捉えた時の位置がくっきり出てくるよ。」
CD HATA「なるほど、為になります!」
watusi「ソフトシンセは4年くらい前まで全く使ってなくて、ソフトシンセってきちんと録音されたものに比べて倍音構成が違っていて、奥行き感がないんだよね。だから一回外に出してあげるだけでもだいぶ変わるよ。」
Sakiko Osawa「ベルリンに行った時にフランクミュラーのスタジオに行ったんですが、彼も一回オープンリールに録音したものをまたサンプリングしてという作業をしてると言ってました。そういうアナログっぽい質感にトライするのも試してみたいんですけど、なかなか機会がないんですよね。」
watusi「単純にオーディオインターフェースのOUTから出してINに入れるだけでも変わってくるし、ビンテージワイヤーケーブルとか使えるとさらにいいけどね。家でも出来ることはあるからいろいろ試してみるといいよ。」
CD HATA「ですよね。俺も昔あえてチープなミキサーに一回入れて質感を変えてみたりとか試してました。これTR-808の下にオモチャ類が並んでる?」
Sakiko Osawa「NANOLOOPっていうゲームボーイの内臓音を操作するシーケンスソフトがあって面白いんですよ。ゲームボーイカラーとか今のゲームボーイでも動くものもあって、いろいろ聞き比べもしたいなと思って。ヤフオクでゲームボーイの初期型を10何台もまとめて出品しているのを落札したことがあって、一時期ゲームボーイが10台以上家にありましたよ。」
CD HATA「ゲームボーイでオーケストラができちゃうじゃん(笑)。その下のBeeGees Rhythm Machineって書いてあるのも気になるんだけど。」
watusi「DISCOとかPOPってボタンが気になるなぁ(笑)」
Sakiko Osawa「これはもう音が出なくなっちゃったんですけど、クラフトワークが使ってたりもしたらしいですよ。凄い太い音してたんで、もう一回直して使いたいんですよね。」
CD HATA「鍵盤がAから始まるっていうのも斬新。なんか一つ目小僧みたいな(笑)。もしかしたらAマイナースケールって白鍵盤だけでいけるから、それを2オクターブ分コンパクトに収まるようにしてるのかなぁ?っていうかBeeGeesのステッカーを貼っただけってわけじゃないんだね(笑)」
Sakiko Osawa「なんかBeeGees関連のグッズって当時いろいろあったみたいですよ。オーディオインターフェースは、このRME Babyfaceを使ってるんですが、これ懸賞で応募したら当たったんですよ。 漆塗りらしくって、真っ黒のままだったらカッコいいと思うんですけど、ニワトリさんが…(笑)。剥がそうかとも思ったんですけど限定品だからそのうち高く売れるかなと思ってそのままにしてあります。」
CD HATA「他に音源はどういうの使ってる?」
Sakiko Osawa「Native Instruments Maschineも使ってるんですが、Maschineでシーケンスを組むんじゃなくて、シーケンスはAbleton Liveで組んで、音源としてMaschineを鳴らすって使い方をしてます。その前はNative Instruments Batteryを使ってたんですけど、最近はMaschineばっかりですね。」
Sakiko Osawa「その横のNative Instruments Traktor Kontrol S4は古いタイプのものですけど、モーリーロバートソン氏から受け継いだ機材なんですよ。」
CD HATA「トラックの名前の付け方とか結構きちんとやる方?」
Sakiko Osawa「作業中はそんなに気にしないでやっちゃうんですけど、この曲はリミックスをしてもらうって決まったら、リミキサーの人がわかりやすいように各トラックに名前を付けて書き出しますね。」
CD HATA「なるほどね。そういえば俺、名前を付けて書き出す時にシンバルのスペルが本当はCymbalなのに、Symbalだと思ってて、ずっとSymって打ってて、ある時エンジニアさんに指摘されたことがあった。」
Sakiko Osawa「たまに間違えることありますよね。クラッシュがLなのかRなのかだったり(笑)」
watusi「ライドもLなのかRなのかだったりとかね(笑)。俺は海外の人と一緒にやる機会が多かったから、そこで叩き込まれたな。外人相手に説明する時に音楽用語をきちんと意識しざるおえないから海外方式を植え付けられた。あとトラックの並べ方は上からベース、リズムとか法則性をもってやってるよ。」
CD HATA「プロジェクトの名前の付け方とかどうしてます?リミックスとか最初からタイトルが決まってるものは、そのタイトルを最初から付けるけど、自分で作ってる曲なんかは、だいたい最後にタイトルを決めるじゃないですか。」
watusi「作業中はあまり考えないで1とか2とか適当にしてるな。今はもう笑い話にしてるけど、中島美嘉の一番最初のシングルをやった時に、打ち合わせで顔合わせしたんだけど、その時にミカだかミキだか名前を覚えられなくて、曲の仮タイトルにミキって付けちゃってたこともあったなぁ(笑)。」
Sakiko Osawa「え−wそんなこともあったんですね。毎年、年の初めにプロジェクトの名はきちんと付けとかないとって思うんですけど、そうしないと後で探しづらいじゃないですか。でもなかなか…、まぁでも探すなってことなのかなとも(笑)」
CD HATA「過去は振り返るなと(笑)。最初の方に付けてた仮タイトルをプロジェクト名にしてたりすると、後でどの曲のことかわからなくなったりするよね。」
watusi「俺の場合は出来上がった曲のフォルダ管理をしっかりやっていて、どの曲がどこにあるのかそれでわかるようにしてるよ。今の人達って全部自分でやらないといけないから大変だよね。昔は楽器のプレイヤーは楽器の演奏だけやってれば良かったり、アレンジャーにしても今は録音からミックスまでできないといけないし。トラックメイカーもしかり。でもそういう一つ一つの実験が楽しいじゃん。この業界、音楽キチガイばっかりだから、のめり込んでやれる人じゃないとやっていけないよね。よく音質の追求って70年代までで止まっちゃって、それ以降は便利さを求めているだけだって言われるよね。アナログにしたって同じテープ幅でトラック数が増えて便利にはなったんだろうけど、一つのトラック幅は狭くなっていってるんだから、一つ一つの音質は下がってしまってるわけだし。デジタルにしてもどんどん便利さを追求して、よく、今までこんなに時間がかかっていたことがすぐに出来ます、みたいなのを売り文句にしているものもあるけど、時間をかけて、一見無駄に見えるような失敗の積み重ねで自分のノウハウを構築していったり、そういうのが大事じゃん。」
Sakiko Osawa「私も寝ないでキックの音やビートを作っちゃったりしちゃいますね。」
CD HATA「まさに今日watusiさんが着てるTシャツに書いてある研究の日々ですよね。」
watusi「そうそう、Sakikoも日々研究してるからこそ、こういうふうに尖った音をブレないでやれてるんだろうと思う。これからもがんばってね!」
CD HATA「Sakikoちゃんとは今度5/24に渋谷R-Loungeの“Chronic” Release Partyで一緒だね。」
Sakiko Osawa「この日は、OIRAN MUSIC レーベルオーナーのVenus Kawamura Yukiさん、もう一人のリミキサー蜻蛉 -Tonbo-くん、マスタリングエンジニアをやってくれたKoyasさんと一同が出演する豪華な一夜になるんで是非みなさん遊びに来て下さいね!」
CD HATA「楽しみだね!よろしく~!」
といった感じで、音作りに没頭しちゃうと、気づいたら何時間も経ってたって、よくあるんだけど、そんな繰り返しの日々研究で、でもそれが楽しいんだよね。 みなさんもどんどん研究をして、面白い音楽を作っていきましょう!
CD HATA
Sakiko Osawa「Chronic アートワーク:佐藤拓人 (ifax!) マスタリング:Koyas リミックス:蜻蛉、CD HATA (voice参加:ナマコプリ) Tracklist 1. A Haze of Smoke 2. Chronic 3. Chronic (CD HATA Remix) 4. Chronic (Tonbo Remix) 5. Chronic (CD HATA Dope Ambient with Namakopuri) iTunes Store https://itunes.apple.com/us/album/chronic/id1221247363?l=ja&ls=1&app=itunes |
2017.5.24 (wed) 『PHAZE』 ~ Sakiko Osawa “Chronic” Release Party Special Collaboration ~ @Shibuya R-Lounge 7F 22:00-5:00 ENTRANCE FREE (1st DRINK ¥1,000) https://www.facebook.com/phaze.rlounge/?fref=ts 【DJ】 Sakiko Osawa (OIRAN MUSIC) CD HATA (Dachambo) Venus Kawamura Yuki (OIRAN MUSIC) Koyas (psymatics) SHAKA 【Live】 蜻蛉 -Tonbo- 毎週水曜日R-Lounge 7Fにてテクノ・ハウスを軸にしたエントランスフリーのパーティ『PHAZE』 1周年を迎え2年目突入の一発目は、Wired ClashやENTER.Sakeにも出演している気鋭女性DJ Sakiko Osawaが登場! 彼女の新しいEP“Chronic”のリリースを記念して、同EPに参加したリミキサー/レーベルオーナー/マスタリングエンジニアなど関係者一同が出演する豪華な一夜になる。 フェイスブックイベントページ https://www.facebook.com/events/414454312257591/ クラベリア http://www.clubberia.com/ja/events/268052-PHAZE/ |