自分たちのライブセットにルールがあるとすれば、"Loud & Fast"ということ。それは「Quaristice」のライブセットだろうが「Oversteps」だろうが変わらないよ。でも"Loud & Fast"といった点では「Move Of Ten」にはそれが少しだけ反映されていると思っている。自分たちの出番の後、もしくは前に出演するDJが「Move Of Ten」をプレイすることが想像できる。今回のライブセットの世界観に合っていると思う。だけど今回のライブセットはあくまでも「Oversteps」のライブセットであって「Move Of Ten」と直接的に繋がっているかといわれたら、答えはノーだよ。共通点はもちろんあるけどね。
そうだね。今回のライブのアイディアは複雑で。といっても、すごくシンプルなものにもなり得るのは説明したとおりだけど、「Move Of Ten」との共通点はさっき説明したとおりだよ。「Move Of Ten」はまだ発売されてないから、まだみんな聴けていないと思うけど(*オウテカのオフィシャルサイトで1曲試聴可能 http://autechre.ws/move-of-ten/)「Move Of Ten」の発売後に今回のライブを経験した人は、ライブセットが「Move Of Ten」に直結されていると思うこともあるだろうね。自分たちとしては今回のライブセットは「Oversteps」仕様のもので、「Move Of Ten」はセットに組み込んでいるわけじゃないからね。ちなみに誤解を避けるために説明したいんだけど、「Oversteps」のライブセットといっても「Overstepa」に収録されているトラックをそのまま使うわけじゃないよ。今回のライブセットの目的は、まだ自分たちが達していない次のレベルに行くことなんだ。
簡単に言うと「Oversteps」とライブはまったく異なったものになるといえるね。「Oversteps」は意図的にシンプルに、ビートを少なくしたけど、ライブはすごく複雑にも、反対にすごくシンプルにもなり得たり、"Loud & Fast"だしね。ライブでは最高のサウンドシステム(6/4のディファ有明では、今回のステージのためにFunction-Oneが導入される)でヒートアップさせて、ハイになったオーディエンスに自分たちも対向したいんだ。何より重要であり、こだわっていることは、自分たちがライブをしながら楽しむこと。それでお客さんが楽しんでくれれば最高なんだ。反応を見ていると今回のツアーではそれがすごくうまくいっているようでうれしく思ってるよ。
Claudeには何回か会ったことがあって、彼は本当にすごいと思ったんだ。Juan Atkinsに関しては彼はデトロイトテクノのオリジネイターでありながら、エレクトロのオリジネイターでもあるよね。会ったことはないんだけど、多分みんなの理解もそうだと思うけど、僕は彼のことをいろいろな新しいことを始め、異なった世代を繋げてくれた人だと思っているんだ。最初彼の音楽を初めて聴いたときは彼がそんなに年上だとは思いもしなかった。新しいサウンドだったし、本当にかっこよかったから、自分と同じ世代のアーティストだと勝手に思い込んでいたんだよ。彼はジャンルにおいても、テクノ、エレクトロのリスナーのみじゃなく、ディスコやほかのジャンルのリスナーもコネクトさせた人物だと思う。すごく尊敬しているよ。僕は彼の作品に感化され、行動する理由をもらったと思っているから、彼にはすごい借りを作っているといってもいいかもしれないね。残念なことに最近はそういったレジェンドに対してより、見たことがあるDJに対しての注目のほうがすごかったり、実際にパーティーでは人が集まったりするよね。でもJuanのプレイを体験して興味を持ち、家に帰ってJuanのことを調べ、たとえば「Cosmic Cars」とか、彼の音楽を何曲か聴いたりしたら、彼の音楽のスペシャルさが今の人たちにも届くと僕は思っているよ。
ライブ中に自由が利くから、抑えるところは抑えたりしてライブセットを今まで以上に美しいものにしたいとは思っているよ。今までどおり緊張感を保ちながらね。今回は今までよりメロディーがあったりするという意味で、音楽的といえるかもしれないけど、やっぱり今回のライブセットは会場、サウンドシステム、クラウドのリアクション、僕らの調子、僕らのひとつ前のライブ、さまざまな要因でまったく異なったものになるからね。はっきりとこんな感じのライブになるとはいいにくい。今回のライブセットアップは本当にフレキシブルなものだから、言ってしまえば大体何でもできてしまうんだ。だから実際最初の音を出す数分前に新しいアイデアが思いつけば、それを入れたりする場合もあるんだよ。
いつもは大体ビートから始めるんだ。だけどまだわからないな。日本はテクノが好きでしょ。そういったことも含めて、自分たちがやっておもしろいと思える実験的なことはもちろん今回もやりたいと思うよ。でも今回のライブツアーに関しては毎回毎回実験的なところがあるからね(笑)
暗闇でのライブは音に集中するのにいいと思う。ビジュアルってけっこう強烈なものだから、注意がそっちに持っていかれてしまうしね。それに変なことだとは思うけど、僕達のような音楽は暗闇で聴くことによって、僕のような人間には逆にシネマティックに感じられたりするからね。何も見るものもないし言葉はもちろんないけどね。ビジュアルに取り組もうと思ったことはもちろんあるけど、やっぱりすごくエネルギーが必要だから、今のところはすべてのエネルギーを音だけに注ぎたいと思ってるよ。