INTERVIEWS
バナーバナー

Calm

レコード会社の方と会って話をしたことです。最初は何か作品をリリースできればという話だったのですが、ちょうど前作を自分1人で作って、何か区切りがついた気分だったこともあったので、ちょうどいいタイミングなのかと。 最近の人たちは活動を始めて2~3年経ったらベスト盤を出したりしますが、そういった場合はシングルを集めればいいだけだと思うんです。でも、僕は頑なにベスト的な作品を拒否していたこともあって、ここまでくるとメチャクチャ曲数も多い。しかも、それら全曲はできが良かろうが悪かろうが、みんな自分の子供みたいなものなので、基本的に自分ではCD1枚にまとめられないだろうなと。中村君は僕が最初のシングルを出してから1週間くらいで、当時、僕が働いていたレコ屋に来て、パーティーでのDJをオファーしてくれたくらい初期から応援してくれているというか、それくらいから僕の活動を見てきてくれた人。だから、彼しか思い付きませんでしたね。 一切なかったのですが、未発表曲が入ることだけは伝えました。あとは曲順についてなども一言も言っていませんね。未発表曲を入れたのはレコード会社からのリクエストで、それらの2曲……「Feel My Heart(Full Ver.)」と「Sunday Sun(Live)」の音源データを最初に中村君に渡したくらいです。 2カ月くらいですね。相当、苦労したらしいです。いったん選曲して、全曲を並べた状態で最初から最後まで聴いて、さらに変更してといった作業を何度も繰り返したらしいので。本来であれば15~16曲くらい入っているのかもしれませんが、もともと曲が長めだったこともあり、実際に収録されたのは10曲。だから、この1枚でCalmの全貌をつかむといったことよりも、「きっかけ」を作るといった感じになっていると思います。 コンピレーション作品に提供した「Dubbing For The Nature #2」と「Donde Sal El Sol」は意外といえばそうですね。 曲を作るということに関しては、変なビジョンを入れないようにしています。そのときに降りてきたインスピレーションを曲にするというか。だから、最初はダンストラックを作りたいなと思っていても、制作していくとビートが抜けていったりすることもあるし、その逆もあります。ただし、最初からプロジェクトが決まっているもの……例えば、K.F.名義であればダンストラックということがテーマにはあります。それ以外のピュアに音楽を作ろうというときはテーマなどは考えませんが、DJではフロアという存在があるという違いでしょうか。 以前から僕の作品はカテゴライズしにくいと言われることがあるのですが、従来の「クラブミュージック」というキーワードだけで敬遠する人にも聴いてもらえるとうれしいですね。たとえばクラブというコーナーに置かれている作品でも、聴けるものがあるんだと思ってもらえたりすると。 来年の秋くらいにはオリジナルアルバムを出せればと思っています。あとはK.F.名義などについてはもっと自由というか、できたときに作ることができればと。 そうなってくれるとうれしいですね。個人的にも、音質面の試行錯誤やミックスしていくという両面で、今はDJをすごく楽しめているので。14年前に最初の作品をリリースしてから、周囲のリスナーたちも一回りも二回りもしていると思うので、DJという部分でも新たな人たちに聴きに来てもらいたいですね。 1枚のCDの中に20~30曲が収録されていて、次々とオイシイ部分だけがミックスされていくCDもありますが、今作はそれとは対極にあると思うんです。だからというか、慌ただしい時代だからこそ通して聴いてもらいたいですね。音楽は人生を変えるチャンスを与えてくれるものだと思っているし、今作をじっくりと聴くことがそういった契機になってくれればと願っています。 バンド時代から含めるともう20年以上活動していて、さらにCalmとしてデビューして14年あまり。さすがにそろそろ自分の活動を一度総括してもよい時期かと思いこのベスト盤に着手しました。もちろん自分が作った曲はすべてベスト。
だからこそ自分で選曲などできるはずもなく、デビュ―12インチからCalmファンを自負する、そして信頼おける中村君に曲を選んでもらいました。確かに膨大な曲数からのセレクション、そして1曲1曲が長いので選ぶの大変ですよね。自分で選ばなくて良かったなんてお気楽なことを言ってますが、苦労して選んでくれた中村君に感謝。そしてこのベスト盤をリリースしてもらうラストラムに感謝です。

1.Feel My Heart(Full Ver.)
最新アルバムのイントロ的な曲のフルレングスバージョン。アルバムだとビートも入らずさらっと終わる短い曲ですが、元々はこれくらい長い曲でした。最新なのに意外に初期の曲にイメージが似てますね。こういったきちんとした形でリリースできることに感謝。

2.Dubbing for the nature #2 Waltz for the virgin forest
Beams Recordsのコンピ用に作った曲だけど、いまだにライブで演奏し、かつ常に盛り上がる曲。こういったワルツ調の曲は好きでよく作るけど、その中でもピカイチで勢いがあり、自分で言うのも変ですがいい曲ですね。

3.Donde Sal El Sol
こちらもアメリカのUbiquityのコンピレーション用に作った曲。自分の中ではラテンジャズ?的な解釈でのダンスミュージックを作ったつもりですが、ラテンというよりはスパニッシュ的な響きになりましたね。Calm的なダンスミュージックといえばといった感じですかね。

4.Light Years " Live "
Calmといえばこの曲ってくらいみんなに言われますね。元々はシンセサウンドのサンプリングですが、ライブをやるにあたってどうしてもそれをジャズ的にピアノに置き換えてやってみたかった。そしてこれがそのピアノバージョンで初めてやったライブの音源。当初想像していたよりも更にすばらしいできになってます。初期衝動がすごいですね。

5.White Breath
バンド解散後独りになって、そんで自由奔放に作った初期衝動全開のCalmサウンドですね。ヒップホップやハウス、そしてジャズなど、自分の中で消化→未消化→消化と繰り返し繰り返し作った楽曲。今作れと言われても絶対作れない楽曲だと思う。

6.Music is Ours (Saxmental Version)
セバ君 a.k.a. Nujabesの訃報を聞いたときのショックは相当なものでした。人は必ず死というものに直面しなければいけないけれども、それでも志半ばで若くしての死というものは神を恨みさえするかもしれないくらい強い衝撃を与える。ツアー中に聞いた訃報で、ツアー前にアルバム全曲出来ていたんだけど、ツアーから帰ってきて2日で作りあげた楽曲。きっと横にセバ君がいてくれたんだと思う。彼の才能へのリスペクトを常に心に持って。

7.Pharoah(The Sun)
Calmがクラブミュージックに限定されないのはこういった楽曲があるからかもしれない。だからこそレコ屋のコーナーも置き場が難しいのかもしれないけど。このリフが出来たときにはすでに自分はここにはいなく、遠いどこか、そして妄想の世界に入っていた。Pharah=Pharah Sandersでもあり、エジプトの神でもあり、そして自分の音楽に対する愛情でもある。

8.Noon At The Moon
星野之宣さんの「2001夜物語り」にはものすごく影響を受けた。SFという形態を取りながらも、人はなぜ産まれたのか、どこへ行くのか、この宇宙は何故存在するのか……。そんな哲学的な深いところまで思いをはせてしまうくらい素晴らしい読み物だと思う。その「2001夜物語り」からインスパイアされたアルバムからの楽曲で、暗くどこまでも続く宇宙世界というよりは、もう少し楽観的な快楽的な部分での未来/宇宙を表現できればと思って作った楽曲。あくまでもバーチャルなんだけど何故かリアルに感じるというそんな世界を。

9.Authentic Love Song
身近な愛を分かりやすい言葉で歌うラブソングも良いけれど、本当の愛ってなんだろう?そんなところが出発点な楽曲だと思う。ダライラマが説く「愛」という言葉の意味とある意味近いかもしれない。愛とは男女の恋愛だけではなく、家族に、友達に、隣人に、この地球というものに、それら存在するすべてのものへ抱く自分の素直な気持ち。本当の愛を知って、それをみんなで分かち合いたい。「Music is Love」

10.Sunday Sun(Live)
自分の中では日曜日はすべての終わりでもありすべての始まりでもある。「自分にありがとうが言えますか?」昨日までの自分を見つめ直し、これからの自分のことを考え、今一瞬一瞬を一生懸命生きる。ヨシエちゃんも普段とは違って優しく唄ってくれている。このライブバージョンでは歌が入らないけれども、皆の演奏がそれ以上に美しさと高揚感を与えてくれる。最新のワンマンライブからの未発表音源。
https://www.pioneerdj.com/ja-jp/landing/ddj-wego4-and-wedj/