- 今までの僕の曲を聴いて少なからず評価してくれている人たちにとって意外性があって、賛否両論が生まれるものが作りたかったんです。 -
- 今作を聴かせていただきましたが、BPMやジャンルの幅広さ、聴きやすいという意味でのポップさがあってとても面白い作品だと思いました。以前はもっとハウス中心だったと思うのですが、今作の変化の背景には何があるのでしょうか?
もともと好きな音楽の幅が広いんです。DJがかけるようなミニマルなダンスミュージックも大好きで、今までそういった音楽を作ってきたんですけど、それと同時進行でプライベートでは日本語ラップやR&B、エレクトロニカとかもすごく好きでよく聴いていました。
今回、自分のアルバムを作るというアイディアが生まれた時に選択肢が2つあったんです。いわゆるDJやクラブシーンの人たちに評価されるような今まで作ってきたトラックのような作品か、もしくはもっと自分のパーソナルな部分を打ち出すような作品か。で、やっぱり自分がリスナーとして人のアルバムを聴く時に、EPで出ているようなトラックをまとめたDJツール集みたいなものは絶対に聴かないなと。そういうアルバムは、聴いていて僕自身つまらないし、周りからも「よかったよ」って流されるだけだと思うんです。であれば、今までの僕の曲を聴いて少なからず評価してくれている人たちにとって意外性があって、賛否両論が生まれるものが作りたかったんです。せっかく大変な思いをしてアルバムを作ったのに、良いとも悪いとも言われないのが1番辛いですから。場合によっては、セルアウトしたなって思われるくらいのことだとしても、自分の好きなものがそこにあるのだとすればそっちの方面を出していった方が後々後悔しないし、新しいファンを作るという意味でもいいかなと思って。自分がリスナーとして聴きたいのがどっちだったかが、今回の結果だったということですね。
- 今後も作品を作っていかれると思うのですが、EPでリリースする機会があったらクラブトラックよりになるかもしれないということでしょうか?
大沢伸一さんがよく自分は音楽的多重人格者だってインタビューなどで仰っていて、それには僕もすごく共感するのですが、たぶん誰だって少なからずそうだと思うんです。誰でもクラブでかけているような曲ばかりを毎日聴いているわけではないし、いろんな音楽が好きだと思うんですよ。だから大沢さんがああやってJポップだったりいろんなジャンルをやりつつ、クラブ界隈のレーベルがリリースするようなEPを作るっていうことは、極めて普通のことなのに、なんでそれが異端とされているのかが不思議です。アーティストたちが自分で制限を作ってしまっていると思うんですよね。1つのジャンルで自分が評価されたからといって、その枠からはみ出ないように曲を作っている感じがして。もっと自分が本当に興味のあるものとかパーソナルな部分を出していってもいいんじゃないかなと思います。
- 日本のシーンは、いろいろなことをすると周りから言われそうですよね。
いろいろ言われちゃうと思いますよ。それが特に日本のアンダーグラウンドなダンスミュージックシーンに閉塞感を漂わせている理由の1つだと思うんです。やっぱりクラブでしか機能しない音楽っていうのは絶対にあって、そういう音楽だけを作っていてもクラブに来る人とDJにしか響かない、ということはお客さんの絶対数が増えないということじゃないですか。でも作品作りとDJを分けることでもっといろいろな人に自分の存在を知ってもらったり、クラブに来るお客さんの数を増やせるかもしれないのに、変に格好つけていわゆるツール的なものしか作らないのはすごくもったいないと思います。
- 今よく聴いている音楽はありますか?
プライベートではmabanuaさんとかPUNPEEさん、ちょっと違うところで言うとEmi Meyerさんとか。トラックメイカーとして興味があるのはやっぱりPUNPEEさんとかですね。mabanuaさんもPUNPEEさんも自分で曲を作って自分で歌っているという、僕にはできないことをしているし、メロディーセンスがずば抜けていていますよね。それから音の質感が他にはないオリジナリティがあると思います。ただ自分が音楽を聴いている時っていうのは、制作者ではなく単純にリスナーとして聴いているので、気持ちいいとか気分をあげてくれるというとことしか考えていないです。
- YOSA君のアルバムを聴いていて思ったのですが、ギターが好きなんですか?
ちょっと前まではそんなことはなくて。でも歳を重ねるごとに速い曲とか1曲の中で目まぐるしく展開が変わる曲が聴けなくなってしまって。それよりワンループで、そのワンループがすごくグルービーで心地よい曲がすごく好きです。ディスコ、ファンクっぽい、印象的なリフを繰り返すっていうところで、今はギターという楽器がすごく好きです。
- ギターの音がすごく耳に残りました。前面に出てるというよりは、バックで鳴っている。少し山下達郎さんの曲のような気持ちいいグルーブ感があってすごいと思いました。
僕も山下達郎さんがすごく好きなんですけど、音楽的なことは別にして、1個のリフで全部持っていけるJポップを作れる彼はすごすぎます。本当に好きだし尊敬しています。いわゆるクラブミュージック/ダンスミュージック的なループ感を持ってあの規模でJポップとして成功した唯一の人なんじゃないかと思います。
- フロアでかけても違和感ないですもんね。
そうですね。今再評価もされていているのは彼がずっとブレずに音楽を作ってきたからだと思います。
- 匿名性のある音楽が良しとされているというのがアンダーグラウンドの前提なのは分かりますが、それだけじゃやっぱりクラブに来ている人やDJにしか響かない。だからアルバムを作る時などは、もっとパーソナルな部分を打ち出して、作っている本人を好きになってくれる人を増やす努力をするべきなんじゃないかと思います。-
- もう1つYOSA君の曲の特徴だと思うのがボーカルです。以前からボーカルの素材選びがうまいと思ってたんですが、今回も面白くて。
今作に関してはクラブでプレイされることを全く想定していない作品なので、自分が聴きたい曲の中に、インスト意外でもっと人の声の魅力とか、歌詞とメロディーのアンサンブルとか、今までEPでやれなかったことをやろうとは思いました。正直始めのほうの日本語ラップとか、結構勝負ですよね。今までクラブミュージック中心でやってきた人間にとっては。でもあえてそれを先の方に出すっていうのは自分の意思表示でもあります。
- 普通に考えるとイントロがあってその後にヒップホップのリードトラック「Coin Laundry feat. TOKYO HEALTH CLUB」がくると思うんですけど、ダウンビートのインストがきてびっくりしました。イントロを経て、まだじらさらる(笑)
そうですね、イントロとアウトロは自分の家をイメージしたんです。イントロでガチャっという鍵を閉める音で始まって、エレベーターを降りていくっていう。自分の家から出て、帰ってくるまでの等身大をテーマに作ったんです。夕方が1つのテーマとしてあったので、1曲目の最後に公園で遊んでいる子供たちの声をサンプリングしたんです。子供たちが学校帰りに遊んでいるところを横目に見ているシーンから始めるっていう物語性も含んでいます。
- その物語性はすごく伝わりました。個人的には4曲目「SSAW feat. nagasaka, DONCHI & nonchi from ALT」が好きでした。
このアルバムの中で1番ポップな曲ですね。この曲はALTっていう、普段はもっとゴリゴリなエクスペリメンタルヒップホップというか、Rage Against the MachineとPortisheadを足して2で割ったようなグループです。たまたまライブに行ったらすごくかっこよくてオファーしたんですけど、いつもと同じことをフィーチャリングでやっても意味がないので普段はコーラスで歌っている女の子をサビに持ってきてもらって、ALTとは全く違う感じでやってもらったんですけど、すごくハマりましたね。女の子のボーカルが修正の必要が全くないくらいうまくて。生声なのにエフェクトがかかったような声質で、音程もばっちりだし、すごい人でした。
- ボーカルに関しては「Something」もすごく好きです。Shigeoさんの声というかリズム、一小節に乗せる言葉の数がすごく特徴的だと思いました。あと同曲のアコースティックバージョンもよかったです。
アコースティックバージョンは配信限定なのでCDには入ってないんです。iTunesとCDで内容が違って、リミックスバージョンはiTunesに入っていないんですよ。個人的にはCDに収録されている12曲と配信限定の1曲で完全版という感じがしています。
Shigeoさんは僕ら世代のヒーローなんです。Steady&Co.直撃世代なんで。昔から好きで、ここ1年くらいでご一緒することも多くてオファーを受けて頂いたんですけど、やっぱり自分の曲で歌って頂くからには僕がイメージしているShigeoさん像を表現したかったんです。これまでのShigeoさんのフィーチャリング曲を聴くと、ちょっとコーラス的に歌わせるようなイメージだったんですけど、もう少しボーカルを前に出して、リズミカルなメロディーで歌ってくださいとお願いして。そこはさすがプロの方なんで、少し話しただけで全部わかっていただきました。
- 今作でフィーチャリングされているアーティストさんたちとの関係性について教えてください。
今回このファーストアルバムを作るにあたって、今まで自分が音楽活動を続けてきた中で出会った人たちと作りたいという思いがあったんです。PVとかCDのアートワークもそうなんですけど、全く接点のない人にお願いするのではなくて、自然な形で出会った、自分が好きな人たちが今作のフィーチャリングのラインナップになっています。
- ボーカルものを入れる時って、こんなトラックにのせてくだい、というようなオファーをするんですか?
そうですね、今回はほぼ全てトラック先行でした。歌ってもらって、そこで少し足し引きする作業はありましたけど、トラックができた段階でこの曲はこの人がいい、って浮かんでそれぞれにお願いしました。
- 歌詞カードはついていますか?
ついてないです。歌詞にメッセージ性がある音楽ではないですし、全体のふわっとした雰囲気を感じてもらいたいので。僕は特に世界に対して言いたいことはないし、強いメッセージがあるわけではないんです。これを聴いて、ものすごく元気が出たりものすごく落ち着いたりっていうよりは、どんなテンションの時でも気持ちを少し上げてくれるような雰囲気に共感してもらえるように作りました。
- たしかにさらっと聴けるアルバムという印象でした。
リスナーとして、心構えして聴くアルバムって疲れるんですよね、いいんですけど。例えばSigur RósとかRadioheadとか、大好きなんですけどいつでも聴けるわけじゃない、そういう気分になった時じゃないと聴けないっていう。それはそれでアートなんですけど、僕なもっと生活に密着して、かけていたら気持ちが良くて何回も聴いてもらえるような作品を作りたかったんです。変にアーティスト性を押し付けるような作品じゃなくて、雰囲気と世界観に共感してもらえればと思ってます。
- それは今の心境ですか?それとも昔からそういう思いがあったのでしょうか?
そこに関しては昔からあまり変わらないですね。音楽でテンションを上げるっていうのは自分の生活の中ではあまりないです。それはやっぱりクラブとかライブで機能するものだと思っているので。CDを自分で聴くってなったらそういうものよりも、もっと等身大のほうがいいと思います。
- 今作はポップな要素が強いですが、今出演しているパーティーとのギャップがありますが別物として捉えられているのでしょうか?
もちろんです。DJとしては今自分がいるシーンが最高だと思っているからこそ出演しているわけです。それに、好きだからこそもっとよくしていきたいと思っています。今僕がいるシーンってアンダーグラウンドなハウス/テクノシーンになると思うんですけど、やっぱり矛盾や、嫌だと感じる部分もあります。
さっきも言ったアーティストが作る曲のことなんですけど、今自分で曲を作る日本人が増えていて、それはそれですごくいいことだと思うんです。でも海外のレーベルや有名レーベルからレコードを出しましたといっても、それって日本では正直響かないんですよ。いくら有名なレーベルからリリースしようが、それでそのアーティストにお客さんやファンが増えるかといったら、たかが知れていると思うんです。それはそれで1つの作品発表の場であるとは思うんですけど、1つの大きなシーン、あるいはビジネスモデルと考えた時に、たぶん、このままだと何も変わらずマンネリが続いていくだけだと思います。
僕も19歳のころから海外のレーベルからリリースしたり、いいレーベルからリリースさせていただいたりしてきましたけど、どこか突き抜けられない壁が日本にはあると思うんです。そう考えると石野卓球さんやKEN ISHIIさん、大沢伸一さんのクラスに入れない下の世代の人たちがゴロゴロいるわけです。
それはすごく当然のことで、自分から発信したりパーソナルな部分を見せていないからだと思うんですよね。匿名性のある音楽が良しとされているというのがアンダーグラウンドの前提なのは分かりますが、それだけじゃやっぱりクラブに来ている人やDJにしか響かない。だからアルバムを作る時などは、もっとパーソナルな部分を打ち出して、作っている本人を好きになってくれる人を増やす努力をするべきなんじゃないかと思います。バンドとかヒップホップってそうじゃないですか?作っている人の音と言葉を聴いて、PVを見て、その人のことを好きになって、それでライブに行く。卓球さんとか大沢さんのDJはもちろん素晴らしいけれど、彼らを見に行く人たちは、音はもちろん、彼ら自身のことが好きで見に行っていると思うんですよ。それって卓球さんが電気グルーヴでやっていることや、大沢さんがアルバムでやっていることの世界観や考え方が好きだからだとと思うし、それがファンじゃないですか。僕も含め、彼ら以降の世代にはそういうものが足りなすぎると思ったんです。格好つけ過ぎなんですよね。
- 海外の人たちは自分たちが作っている音楽と似たような音楽を作っているだけの人になんて興味がないわけですよ。そんなのは自分の国にも腐るほどいるわけだから。-
- 人に聴いてもらうためにどういうやり方でアウトプットするかという問題かもしれないですね。
本当にその通りです。今回PVを作るっていうのが僕にとってすごく大きなことで、アンダーグラウンドで活動しているDJがPVを作るっていうのは意外とないことなんです。ヒップホップとかロックをやっている人たちは、どんなに売れてなくてお金がなくても自分が作った曲のPVはきちんと作るんですよね。そういう当然のことをテクノ・ハウスのDJたちはやっていない。でもお客さんが増えないって愚痴ってる。それは当然の結果だろうということです。だから僕みたいな人間が1人いて、PVを作ったりしたらディスられることも多いかもしれないですけど、何かしらの起爆剤というか、少しでもシーンに動きを与えられればいいなと。もちろん大前提としてそういう活動が好きっていうのがあるんですけど。
- 今の時代YOUTUBEがここまで浸透していて、映像って本当に大事だなと思います。
本当にその通りです。この前も動画のアルバムトレーラーと音源のトレーラーを作って、いろいろなニュースサイトに載せて頂いたたんですが、動画の方が音源よりも明らかに再生回数が多いんですよ。ということは、みんな音楽は聴かないかもしれないけど、動画だと知らないアーティストでもとりあえず見るんですよ。そこだけでも大きな差があるのに、それすらやらないで結局自分の首を締めているんですよね。
- 19歳のデビュー当時は海外にいたのですか?
いや、もう日本にいました。16歳から18歳までは海外にいました。
- 留学されていたんですよね?場所はどちらですか?
フランスとロンドンです。
- どんな高校生活でしたか?
サッカーばっかりやってました。でもずっと音楽は好きで。フランスにいた時は、当時まだ日本で火が着く前のKitsunéとかを聴いていたり普通にバンドの音楽も聴いていました。イギリスに行った時に黒人の友達にいわゆるStones Throw系のヒップホップを教えてもらって。その子がDJの機材を持っていたんでDJのカルチャーに入っていくきっかけにはなりました。
- それ以前は音楽活動はしていなかったんですか?
してないですね。ハイスタのコピバンとかはやってましたよ(笑)。遊びでしたけど。いわゆる振り返りたくない過去ってやつですね(笑)。
- 中学生くらいから曲作りとかされているのかと思ってました。
そういう人がずごくうらやましいですよ。例えば楽器できなくても昔からDTMで曲作ってましたっていう人が最近多いじゃないですか?そういうの全然ないし楽器もできないし、今だに音楽的なこと、キーがどうとか全くわかんないんです。それを補うDTMの技術、コンプレッサーがどうとかEQがどう、みたいなことも一切わからないしそこにあまり興味がないんですよね。クリアで綺麗な音を作る、というところに無頓着なんですよ。今だに製作環境とかインターフェイスも使ってないし、Mac Bookにヘッドフォン直挿しでやってるんで(笑)。音質の良し悪しよりも曲の質感、雰囲気という部分の方が僕にとっては重要なので。
- 音楽を作り始めてから7年くらいですか?
そうですね、18歳からいわゆるダンストラックを作り始めて19歳でデビューしたので。
- デビューがすごく早いですよね。
すごくラッキーだったんですよ。しかもその曲がヒットしたんです。その1曲が売れたことと、Steve LawlerっていうイギリスのDJがBBCのRADIO1でかけてくれたこと。あとはカナダのオープンエアーでDJをやっている動画がYoutubeにあがっていて、僕の曲がかかった時にすごく盛り上ってたんですよ。それまで、音楽って僕にとっては音楽的な素養のある人が最高の機材とスタジオで作る高尚なものだと思っていたけど、ただのワンルームの部屋でヘッドホンで作った曲をメールで送ってリリースされて、その翌週、翌月にはDJの手にわたって、日本の反対側の人たちを躍らせることができるなんて、こんなに面白いゲームはない、と思いましたね。そこからダンスミュージックにのめりこみました。
- なるほど、そういったきっかけがあったから、ダンスミュージックに集中していたんですね。
そうですね。楽しくてしょうがなかったです。そこからリリースが続きました。
- 日本でブッキングが増え始めたのは何歳くらいの時ですか?
20歳くらいですね。ライブもやっていたので、そのころからコンスタントにブッキングをいただくようになりましたね。
- 当時のライブはラップトップを立ち上げてMIDIコンで、というスタイルですか?
まさにそうです。
- パーソナルなところを人に伝える、世界観を理解してもらうために現場でのプレゼンテーションも大切じゃないですか?その方法は?って考えるとすごい難しいと思いますが。ライブのやり方なのか?DJのスタイルなのか?
こういうアルバムを出したからには、自分の見え方ってすごく変わってくると思うんです。ちなみに、この作品をDJでかけたいとは思っていないんですよ、そもそもそういう場所で活きる曲として作っていないので。DJにおいてはその場で自分が1番かけたい曲をかけて、これからもやっていくつもりですけど、ライブに関してはこれから考えていくところではあります。バンドセットなのか、クラブで演奏するのかもわからないですけど。もしフェスなんかに呼ばれる機会があれば、この世界観を表現するライブが何かを考えていきたいなって思っています。
- 今の若いシーンっておもしろいと思うんですけど、この人面白いことしているなーっていう人はいますか?個人的にはSEIHOさんが好きだったりするんですが。
SEIHOさんはもちろん音楽も聴いたことがあるし、すごいと思います。僕とは作る曲のタイプがちがいますけど普通に聴いていてアガるし、ライブ映像を見ていても、あれだけ”自分”ってものを表現していれば、そりゃ人気がでるだろうと思いますよね。それこそtofubeatsさんとかPUNPEEさんに関してもすごくおもしろいし格好いいと思います。その人たちには、ちゃんとファンがたくさんいるじゃないですか。それはやっぱりちゃんとアルバムをリリースして自分のやりたい音楽とか世界観を表現しているからだと思うんです。
- Jazztronikの野崎良太さんが言われていたことなんですけど、Jポップのポップさじゃなくて聴きやすいポップさっていうのをすごく大事にしていると言われていて。自分もクラブミュージックが好きだけど、この作品みたいなポップさもすごく好きだから、いわゆる一般の人たちに向けてアウトプットするというのは大事なんだと思います。クラブ好きもこういう音楽は聴きますからね。
絶対にそういう人はたくさんいるはずだし、逆にポップが嫌いなんていう人は信じられないです。そういう人は先入観で日本語だから無理、とか決め付けているだけで、好みはあれどメロディーのある音楽が嫌いなはずがないんですよ。場所によっては、そういう音楽が必要とされないこともわかりますけど、そういうものが好きで曲も作れるんだったら、そこも表現したらいいじゃんって思いますけどね。
でも正直言って頭が固い人って多いじゃないですか。アンダーグラウンドになればなるほど。「俺はこれをやっていくんだ」って言って、1つのジャンルを突き詰めてやっている人はすごく格好いいと思うのですが、何もしないで「人が入らない」とか文句を言ってるだけの人は、そりゃそうだろって思います。自分の殻にこもって好きな曲だけかけてファンが増えると思っている人は、その矛盾に気づいていなんですよ。別にポップスに迎合する必要はなくて、例えばミニマルなテクノが好きなら、それをどうやったら他の人にも好きになってもらえるかと考えるべきだし、行動するべきじゃないですか。いつまでもヨーロッパのDJにあこがれて、彼らが作っている音楽を真似して曲を作っていても彼らにはなれないんです。
この前tofubeats君がBBC1にゲストで出演したじゃないですか。海外の人たちは自分たちが作っている音楽と似たような音楽を作っているだけの人になんて興味がないわけですよ。そんなのは自分の国にも腐るほどいるわけだから。そんな中でハウスやディスコ、ダンスミュージックっていうものを日本人なりに昇華したtofubeats君がイギリスの国営放送に呼ばれるのは極めて当然のことだと思うんです。そっちのほうがおもしろいに決まっていますから。
- 最後に今後はどのようなスタンスで音楽活動を続けていこうと思っているか聞かせてください。
ずっと昔から思っているのは、メジャーとアンダーグラウンドの中間で活動したいということです。どこでメジャーとアンダーグラウンドを定義付けるのかっていうのはクラブミュージックをやっている限りすごく曖昧で、人によって違うと思うんですけど。
僕が思うメジャーとアンダーグラウンドの中間っていうのがあるので。ここまでいろいろな話しをさせて頂いて、アンダーグラウンドシーンを馬鹿にしているように聞こえてしまったかもしれないですけど全くそんなことはなくて。ものすごく可能性を感じているし、もっと良くなってほしいからこそ、自分で動きをつけたいんです。だから今回アルバムを出すこともアンダーグラウンドシーンで1つの話題とか起爆剤になればいいと思うし、メジャーの人たちにも少しアンダーグラウンドを見てもらうきっかけになればいいと思っています。
もちろんクラブでのみ機能する音楽にもすごく興味があるから、このアルバムは7月16日リリースですけど、来月は〈Dirt Crew〉っていうドイツのレーベルの10周年コンピ、いわゆるクラブミュージックのCDに参加します。あとIori Wakasa君っていう、僕と同い年の今頑張ってるDJのEPの曲をリミックスしたりとかもしています。どちらのジャンルもやっていきたいですね。人と違うことをしたいと言いつつ、そんな人たちが集まってみんな同じことをしている現状ですが、僕はそうじゃない、自分が思う気持ちいい場所でずっと活動していきたいと思ってます。
タイトル:Magic Hour
アーティスト:YOSA
レーベル:ANDY
価格:¥1,000-
発売日:7月16日(水)
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■HMV
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