- メンバーのキャリアを調べていくと、みなさんすごいですよね。なぜこれほどまでの人を集めることができたのでしょうか?しかもあなたがリーダーを務めてるんですよね。ERIMAJを作った経緯を教えて下さい。
人柄だろうな。俺が素晴らしい人間だから自然に人が集まってくるのさ(笑) 。
まじめに言うと、みんな家族みたいなものなんだ。兄弟というか、長年のパートナー、昔からの友達みたいな。ずっと同じ仲間と何年も仕事をしてきたけど、みんな、アーティストとしても人間としても素晴らしい仲間だよ。そのおかげで自然でオーガニックな雰囲気を演奏に反映することができるんだ。ずっと仕事をしているけどとてもいい関係だし、順調に進んでいる。こうやってみんなと友達でいることを誇りに思うよ。
俺の右腕といえるCorey Kingとは10歳からの長い付き合いで、ほとんどの楽曲を一緒に作っているんだけど、一緒に育ってきたことで育まれた特別なエナジーを感じるんだ。Alan Hamptonとは同じ高校に通っていて15年の付き合いで、同じ時期にニューヨークに移った。Matthew StevensはChristian Scott作品の時から10年くらいの付き合いだけど、出会ってすぐに打ち解けたよ。みんなとはこれくらい深い仲なんだ。音楽的にも精神的にもね。だから今もこうして一緒にいる。
- ERIMAJの音楽は、優雅であり怪しくもあり、ジャズでありジャズ以外の何かでもあるように思いました。ジャズを普段聞かない人にも興味を抱かせる自由な作風です。ERIMAJというプロジェクトの根底にあるもの、目指すものは何なのでしょうか?
俺が自分で書いたような質問だな、ほぼ質問の通りだよ(笑)。俺が目指すのは、自分が影響を受けたり楽しいと感じたあらゆるジャンルの音楽を、有機的に融合させたような音楽なんだ。とても自然で、わざとらしくないような、自分らしい音楽。今まで自分が参加してきたジャズレコードのカタログを見て、自分をジャズドラマーという型にはめてしまう人が多いけど、それじゃあ満足できないんだ。アーティストとして真のミュージシャンとして、自分のあらゆる面を表現したいし、レコードに映画のような要素も取り入れたいんだ。どんな環境でもその曲を流せばみんなの心に触れることができるような、ミュージシャンや本当の音楽好きだけに向けた音楽でもない、普段遊んでいる周りの友達にも感動してもらえるような音楽をさ。なにより俺が自分で聴きたい曲を作っているよ。それに関しては目標を達成しているかな。
- 「Nothing Like This」はJ.Dillaのカバーになりますが、なぜこの曲を選んだのでしょうか?
J.Dillaはとても素晴らしいアーティストで、ずっと影響を受けている。みんなJ.Dillaといえばヒップホップのスタイルを思い浮かべるけど、俺は「Ruff Draft」がすごく好きなんだ。荒っぽくて生々しくて、カセットの音源のような音を聴いてピンときた。J.Dillaのこの曲をカバーしようと思う人なんていないし、やってみようと思った。みんなが選びそうなカバーはしたくなかったからね。結果すごく美しい曲になったよ。
- The Tony Williams Lifetimeの「This Night,This Song」のカバーもされていますね。やはり同じドラマーとして影響を受けたのでしょうか?
もちろん。ドラマーでTony Williamsの影響を受けなかった人なんて聞いたこと無いよ。彼のことを知った時からずっと影響を受けている。当然ドラマーとして尊敬しているけど、何よりLifetimeのバンドリーダーとして、あの時代に音楽の枠を壊すような、常識を覆すようなことをしたなんてすごいと思う。彼がやったことはまさに俺がやろうとしていることなんだよ。彼への敬意を表して「This Night,This Song」をギタリストのMatthew Stevensと一緒にアレンジしたんだ。
- あなたは自身でミュージシャンよりアーティストとおっしゃっていましたが、アーティストに必要なものを挙げるとすると?
まず自由でいること。自分の弱さをさらけ出すこと。そして探求し続けること。今まで自分が影響を受けたアーティストはみんな決して自分の作品に満足せず、さらなる高みを目指して探求を続けている。そういう探求のプロセスが反映されて素晴らしい作品が生まれていくと思うし、それこそが真のアーティストだと思う。未知の領域や不慣れな環境に身を置くことを恐れずに選らんで、素晴らしい結果を残すんだ。あと成長しないことも大事だね。子供の心を失ってはダメなんだ。子供は常に研究して、質問して、何かを見つけようとしているだろ?そうやって多くの知識を得ていくんだ。
- あなたもまだ子供ですか?
まだまだ子供さ(笑)。成長しちゃダメだよ、罠だから(笑)。
- オーディエンスに対して挑戦することもアーティストに必要な要素の1つだよね。-
- 今後のプロジェクトでヴィジュアルアーティストとのコラボがあると伺ったのですが、これは先ほどお話にあった”未知の領域や不慣れな環境に身を置くこと”の一環でしょうか?
その通りだね。今回のアルバム『Conflict Of A Man』にも映画的な要素があって、いくつかアルバムに合う映像を作ったんだ。その頃から音楽だけにとどまらずアートとしてマルチメディアに作品を作っていきたいと思っていた。ヴィジュアルアーティストとミュージシャンが同じステージに立って、それぞれに興味を持った人たちを集めてみんなが楽しめるような、2つのコミュニティーを結びつけるようなことをやろうとしているんだ。
新しいプロジェクトSystem to the Redは、今までと全く違うバンドでヴィジュアルをベースとしたバンドなんだ。ステージでもバンドの前には幕があって、客席からはバンドのシルエットしか見えないようになっているんだ。その幕にプロジェクターで映像を投映して、その映像にあったサウンドトラックを即興で演奏する。だから毎回違う体験ができるんだ。
- そのプロジェクトはすでに始まっているのでしょうか?
3週間くらい前にロスでプレミア公演をしたところだよ。
- 行ってみていかがでしたか?オーディエンスの反応はどうでしたか?
素晴らしかったよ。斬新なプロジェクトだからオーディエンスは戸惑いもあったと思う。俺もなんだか不安になって落ち着かなかったよ(笑)。でもそれこそ俺がやりたかったことなんだ。曲が終わった時に「今の何だったんだ…?」「拍手するべき…?」って戸惑わせるようなことをしたかった。オーディエンスに対して挑戦することもアーティストに必要な要素の1つだよね。今まで見たことも経験したことも無いようなことを投げかけるということもとても大事だと思うんだ。
- 体験したことの無いようなものを体験させる、理解しづらいものを提案するというのはアートの領域だと思うのですが、人は日常の中でアートが必要だと思いますか?
もちろんだよ。全ての物事はすごいスピードで進んでいて、リアルタイムで物事を見ることができる状況というのは良くも悪くもあると思う。何でも簡単に手に入れたり体験できてしまうという現代に刺激を与えたいんだ。だから今回のプロジェクトのようなアートを人が気づかないうちに、みんなの日常に滑り込ませていきたい。どんな人にも生活の中にアートを取り入れるべきだと思うよ。携帯を伏せて、共有した体験について議論して、自分は現代に何を生み出せるのか考えるような有意義な時間も必要なんだ。
- Release Information -
アーティスト:ERIMAJ
タイトル:CONFLICT OF A MAN
発売日:4月16日
●トラックリスト
1. Unrest (Journey to the Land of Milk & Honey)
2. Black Super Hero Theme Song
3. This Night, This Song
4. The Day the Sun Rose Twice
5. Nothing Like This
6. Plants
7. Conflict of a Man
8. Social Life
9. Choosing Sides