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Jesse Boykins III

 
- 何か新しく伝えたいことがなかったり、自分の中での新しいアイディアや立ち位置、物の見方を表現することもないのであれば、アルバムを出す意味がないからね。-

 
 
- はじめに、『Love Apparatus』のリリース、おめでとうございます! このアルバムは、2008年頃に制作をはじめたと思いますが、あなたとトラヴィス(マシーンドラム)は、最初の2ヶ月で9曲制作したと耳にしました。完成までに時間を要したのは、彼がベルリンに引っ越したからでしょうか?

そうだね。ほとんどのレコーディングは2010年ぐらいに終わったんだけど、ちょうどその頃、トラヴィスが引っ越したから、2013年までは、ソングアレンジやミックスを終わらせることができなかったんだ。彼の引っ越しや、お互いツアーに出ていたこともあって、活動休止みたいな感じだったんだ。

   - 実際のところ、いつ完成させたんですか?

2013年の4月にアルバムを完成させたよ。
  - 完成までに5年以上かかったわけですが、二人の間で何か音楽的なスタイルや考えにおいて変化は生じましたか?

俺たちは音楽的に自分たちがどんなことをしたいかっていう展望と本質を理解していたから、レコーディングはまったく難しくなかったよ。でも、曲を完成させるにあたっては、それぞれが異なる音楽のバッググラウンドからきているから、最終的なサウンドに関しては、歩み寄りはあったかな。お互いエゴを殺して、アルバムを仕上げるっていう目的を理解して、そこに取り掛かり続けたんだ。

  - 2人の間で音楽的なズレが生まれたりは?

いや、それはマジでなかったよ。音楽に関しては、俺たちは2人ともとてもオープンマインドなんだ。どちらもいろんな音楽のファンだし、好んで聴くものに関しては共通点も多いんだ。俺たちのどちらもクローズマインドじゃないし、音楽的にできないことはないって思っているからね。だから、オープンな姿勢でレコーディングしていたよ。

  - これはあなたにとって2枚目となるソロアルバムですよね。ファーストアルバムの『The Beauty Created』に対して、音楽面やヴォーカル面で変化したと感じる面はありますか?

うん、間違いないね。何か新しく伝えたいことがなかったり、自分の中での新しいアイディアや立ち位置、物の見方を表現することもないのであれば、アルバムを出す意味がないからね。思うに、これは革新についてなんだ。このアルバムでは、ヴォーカルアレンジメントやソングライティングにおいて、たくさんの革新があったよ。もちろん、トラックにおいてもそうだね。アルバムの多くの曲では、楽器をふんだんに使った。たくさんのベースがあって、ドラムがある。俺にとっては、このアルバムは、エレクトロニックな世界と、俺の出自でもある生演奏の音楽の世界の間のバランスを見つける試みだったんだよ。
 
- セオフィラスロンドンが"Tell Me"ではフィーチャーされていますが、セオとマシーンドラムとあなたは、みんなNORMREXというレーベルに所属していましたよね。その頃からみんな友人だったのですか? どちらと先に出会ったんですか?

俺たちはみんな2007年に出会ったんだ。セオフィラスとは、とあるギグで知り合った。俺とセオはブルックリンのグリーンポイントにあるスプートニクっていう場所でパフォーマンスしてたんだ。そこにはとても良いヴァイブがあったんだけど、セオが、彼のセットの後に近づいてきて、一緒に制作したり曲を書いたりしようって声かけてきたんだ。彼は、明るい目をしていて、エネルギーに満ちあふれて、どこか俺自身を思わせるキッドだった。俺よりちょっと若いだけだったけど。そして、彼がそのとき一緒に仕事してたマシーンドラムに会わせるために、俺をスタジオに連れてってくれて、そこでみんな意気投合したんだ。俺たちはみんな限界を押し広げようぜって感じだったから、一緒に何かしようって決めたんだ。

 
セオフィラス・ロンドンの新作からの先行シングル"Tribe"(ジェシー・ボイキンス・3世が参加)
https://soundcloud.com/theophilusl/tribe - 今回の『Love Apparatus』では、世界中の様々な都市の女性にビデオインタヴューをしている"The Woman"というプロジェクトも用意していますよね。すでにキロ・キッシュやトキ・モンスタらへのインタヴュー映像も公開されていてとても面白い試みですが、この中で特にあなたにとって印象的だった、気に入った発言や回答はどんなものでしたか?

インタヴューのほとんどはとても真剣かつエモーショナルで、個々人の経験についてのいろんな見解や、その経験がどのように人生の教訓になったかについて語ってくれていて、それこそが俺が目的としていたことなんだ。世界中の女性たちの間の繋がりや、もし彼女たちが、自分たちがこの世界に生命をもらたす、この惑星における神様だってことを理解したら、どれだけ力強くなれるのかっていうね。つまり、このプロジェクトは、主に女性に対する深い理解についてであって、女性を理解してあげて、彼女たちが自分をオープンにさらけ出すことによって見下されるような気分にはさせないっていう試みだったんだ。


トキ・モンスタやキロ・キッシュのインタヴューが観れる"The Woman"はこちらから
http://jbiiimusic.com/loveapp/#women - 『Love A pparatus』とは、どういう意味を込めたタイトルなのでしょうか?

このアルバムのテーマは、主に人と人との間のバランスなんだ。恋人との間のバランス、友情と友人の間のバランスとかね。そして、それら全ての関係を維持しながら、それぞれを育もうという試みだったんだけど、この時代においては、とてもハードな作業だったよ。特に、マッチョな側面だけでなく女性らしい側面もあると認識しているひとりの男性として、多くの人々に男性のそういった姿を理解してもらえるように、少なくとも受け入れてもらえるような範囲でそれらを表現することはね。

でも、『Love Apparatus』の大部分は、旅行したり、いろんな物事や異なる信念を学んだことから生まれたもので、このアルバムを書く前には知らなかったことなんだ。それらのいくつかは、自分自身に対する理解であったり、1年以上かけて自分の中で育まれ、表出したものから生まれているんだ。23歳から26~27歳くらいまでの俺の人生のメルティングポットだよ。
 
- 先にタイトルが決まっていたというストーリーを読みましたが本当ですか?

そうだね。アルバムタイトルと曲名は先に思いついた。いつもそうなんだ。ソングライターとしてや、コンセプトのあるプロジェクトを発表するのが好きな人間としては、全ての要素を密着性のあるものにして、何かしらの形でひとつにしていき、段階を踏みながらゆっくりとクライマックスへと至らせることはとても大事なことなんだ。俺はあらゆる時代の様々な音楽を聴いてきたけど、名盤と呼ばれるものはこういった要素を孕んでいるし、それこそがそれらを名盤にしているんだ。だから、俺はいつでも自分のアルバムを、自分が好きで誇りに思うようなものにするために、そういった努力を怠らないよ。

  - あなたの音楽にインスピレーションを与えるものとして、女性、そして愛という要素がとても大きいことが改めて感じられます。最近ではファレル・ウィリアムスが『G I R L』を発売し、女性を讃えるミニドキュメンタリーのようなものも発表していましたが、彼の女性に対する行動をどう思いますか? 彼のプロジェクトは上手くいったと思いますか?

『G I R L』は良いアルバムだし、全体的なコンセプトは間違いなく良いね。彼はある特定の層に届けようとしていたし、彼のファンはある特定のヴァイブのようなものを彼に期待しているから、あの作品は彼がそうあって欲しいと考えていたほどシリアスなものだとは思わないけど。俺は彼がやったこと全てを理解しているし、彼がどれだけそれを好きかも理解している。とても良いことだと思う。俺も同じく好きだよ。女性を、自分の周りにいる女性たちを力づけることは良いことだね。なぜって、彼女たちは癒やしを与えてくれるし、先生でもあるから。俺たちの子供を教育して、育てたりしてくれるんだ。俺はファレルが音楽や文化にもたらしたことに尊敬の念を払っているよ。以上だね。

  - 『Love Apparatus』のビデオインタヴューでの会話が冒頭と最後に使われている“Live In Me”は、ビートが次第に変化していき、フックも変化していく、まるで3部構成のような曲です。シネマティックな印象も受けたのですが、この曲はどういう風に生まれたのでしょうか?

もともと、"Live In Me"は2009年に作っていた曲なんだ。2010年に作業を再開して、完成させたよ。あの曲の主題は、愛する人の中にある、真実の姿を見つけることなんだよ。その人が周りに見て欲しいと願う姿ではなくて、みんなに見せるのを恐れている姿ね。その人の中にあるリアリズムを探して、君がどんな過ちを犯してきたとしても、それで君を判断しないし、俺は君を受け入れる、君をサポートするよって伝えてあげるんだ。君は俺を頼っていいし、他にいないのであれば、俺の中に居場所を見つけることができるんだ。たとえ他の人と一緒のときは本当の自分を見せれなかったり、バカなことしたり、悪態ついたり、何かに怒ったりができないとしても、俺と一緒のときはできるんだよ。俺には全てをぶつけていいんだ。つまり、これは誠実さについての歌で、その関係を認識して、周りがどう思おうとありのままの自分でいられるんだ、ってことを人々に知らせるためのものなんだ。

  - バーソロミュー・ジェンキンスというオルター・エゴがありますよね。どういう人物なのでしょうか?

バーソロミュー・ジェンキンスは俺の心の声のようなものだよ。彼はより勇敢なジェシー・ボイキンスって言えるかな。彼はちょっと単刀直入なタイプで、みんな彼のことが本当に好きじゃないんだ。彼はいつも真実を口にするからね。真実ってのは、往々にして受け入れられないんだ。けど、彼は全く気にしない。彼は恐れを知らないんだ。
 
- この『Love Apparatus』の中でバーソロミュー・ジェンキンスが反映された曲はありますか?

バーソロミューは、『Love Apparatus』の曲の多くを書いたよ。実は、俺が書いたのよりも多いんだ。例えば"Greyscale"って曲だけど、彼があの曲を書いたんだ。"Live In Me"や"A Matter Of The Heart"、"4 U 2 B Free"のような曲でも、バーソロミューが言いたいことを言っているんだよ。ジェシーは自分自身の奥深くをさらけ出すのをちょっと恐れているし、傷つきやすいからね。だから、俺は彼に、俺の代わりにそういったことをやってくれるのを頼っているんだ。

   
- あの経験は、人生を変えてしまうようなものだったよ。音楽を作っている間は、まったく何も恐れることがなかったんだ。-
 
- 2012年にはメロー・Xとのコラボレーション・アルバム『Zulu Guru』をリリースしましたが、他にもセオフィラス・ロンドンとの『Paris 96』、シンデンとの『Chartreux』といったコラボ・ユニットの話も耳にします。それぞれどんなプロジェクトなのでしょうか?

んー、『Paris 96』も『Chartreux』のどちらも、実は今はペンディング中なんだ。『Love Apparatus』がたった今、集中しなきゃいけないことだから。来年かそのくらいまでは、これに集中しているつもりだよ。


セオフィラス・ロンドンとのユニット「Paris 96」の曲"Afternoon"
https://soundcloud.com/paris96/paris-96-afternoon
- 最近はセーヴ・マネーやオッド・フューチャー、プロ・エラなどクルー/コレクティヴで活動し脚光を浴びるケースも多いですが、たとえばロマンティックムーヴメントでアルバムをリリースするといった可能性はあるのでしょうか? 『Zulu Guru』はある意味でそういう作品だったとも思いますが。

それこそが、俺がああいった方法で『Zuru Guru』をリリースした理由なんだ。俺が尊敬しているアーティストたち、つまり俺の仲間たちによるコラボレーションアルバムのようなもんだよ。とても変わったものだから、人によっては理解するのが難しいし、理解の仕方もわかんなかっただろうけど、1年後か2年後に、それを聴き返したときに、その良さがわかるって確信してるんだ。



メロー・Xとのコラボ・アルバム『Zuru Guru』からのシングル"Perfect Blues"オフィシャルPV
  - 『Paris 96』や『Chartreux』以外で進めているコラボレーションはありますか? また、あなたが今コラボしてみたいと思うアーティストは?

いや、今のところは、リリースできるコラボレーションプロジェクトはないよ。今は、マジで自分自身のことや、制作してる曲を向上させることに取り掛かっていて、次のプロジェクトがどんな感じのものになって、この世界に何を与えることができるかってことを掴もうとしているところなんだ。誰と一緒に仕事したいかっていうと、アンドレ3000、カニエ・ウエスト、ジョン・レジェンド、リトル・ドラゴンのユキミかな。

  - あなたはレッドブルミュージックアカデミー(RBMA)のサポートも受けていますよね。今年は東京で開催されますが、あなたは2011年のマドリッドでのアカデミーにも参加しています。初めて顔を合わせるアーティストとコラボレーションしたり、先人からレクチャーを受けたりと、あなたにとってどういう体験でしたか?

あの経験は、人生を変えてしまうようなものだったよ。音楽を作っている間は、まったく何も恐れることがなかったんだ。自分の人生で経験しようとしていることを既に経験している人々に囲まれて、彼らが、それは人生にはつきもののことで、ちゃんと正しい方向に進んでいるし、君の成長が止まってるようなこともないって自信を持たせてくれるんだ。本当に力強い経験だったよ。間違いなく俺を後押ししてくれたし、音楽への情熱に関して、生まれ変わったような気分にさせてくれたよ。そのときちょっと悪い感じにハマりこんでしまっていて、越えようとしていたジャンルの壁のことや、自分のキャリアにおいて成し遂げてきたいくつかのことが認められていなかったから、落胆していたし、ネガティヴな感じになっていたんだ。だから、マドリッドにいた2週間、RBMAで自分が認められたときは、まるで中学校の合唱部にいたような感じだったよ。俺と同じくらい音楽が好きなキッズたちの集団に囲まれていたり、ソロをゲットするためにオーディションを受けていた頃のような感覚だね。お互いのことは知らなかったけど、みんな音楽が大好きだったから、知り合いたいって思ってたんだ。そういったエネルギーに四六時中包まれていることは、たぶん何よりも素晴らしい感覚だろうね。だから、RBMAではそんな瞬間に立ち戻れて、間違いなく俺を鼓舞してくれたよ。

  - これまで、ザ・ジェット・エイジ・オブ・トゥモローやザ・インターネット、キロ・キッシュから、mabanua、Yoshi Horikawa、フル・クレイト、ゾディアック、ブランドン・ウィリアムスまで多彩なアーティストの楽曲にワールドワイドに参加してきました。自身の作品と、ゲストとして参加する作品で制作のプロセスや意識において違いはありますか?

間違いなく違うものだね。バランスをとらなきゃいけないんだ。誰かのアルバムのために何か制作をするっていうときは、彼らが欲しているものや、アルバムの方向性がどんな感じなのか、そのプロジェクトにおいてどのようにコミュニケーションを取ろうとしているのかを知らなきゃいけないんだ。俺は、その時の感覚を自己中に曲として書いたりはしたくないんだ。なぜかって、その曲は俺についてのことじゃないからね。だから、俺は誰かとコラボレーションするときはいつも、彼らと話をして、彼らについて知って、彼らの人生について理解したいんだ。だから、彼らの家族についてや、その交友関係、文化といった、俺が歌詞を書いたりメロディを模索する過程でインスピレーションを与えてくれるような物事について彼らと話をして、俺が作ったものを必ず気に入ってくれるようにしたいんだ。あと、誰かと制作するときは、より忍耐強くならなきゃいけないね。特に、取り掛かってる作品にめちゃくちゃ情熱を注いでいる人と制作する場合はね。


mabanua – until you know (ft. Jesse Boykins III)
https://soundcloud.com/jesseboykinsiii/mabanua-until-you-know-ft - プリンスと過去にプライベートでディナーをしたと聞いたのですが、どうでしたか?

マジでクールだったよ。プリンスはリヴィング・レジェンドだし、自分の音楽や自らのイメージ、一貫性の保護において、彼は間違いなく俺が尊敬している人物だよ。可能な限り秘密主義で隠遁していて、俺の世代やその前の世代ともずっと繋がりがあるんだ。彼は、俺たちの次の世代とも繋がろうとしているよね。彼が体現しているアーティストとしての長命さには、本当に感謝しているよ。だから、彼との夕食の席では、俺はほとんど無口だったよ・・彼のほうを見ることができたかすらわかんないな。わかんないんだよ! でも彼はとても歓迎してくれていたし、心を開いてくれていたね。だから、そういった姿をアーティストから垣間みれたのは良いことだったよ。だって、アーティストって概してそういう感じじゃないから。みんなマジでビクビクしていて不安げだろ? でも彼はそれとは正反対だったよ。彼はキングだよ! だから、彼と一緒にいれてよかったよ。

  - 今年もこれからさまざまな国の音楽フェスに出演するようですが、今後日本へ行く予定は? またあなたのパフォーマンスをぜひ観たいです。

そうだね。2015年の春にツアーを行おうと思っているんだ。できればアジアや、日本にもまた行ってみたいね。

  - Release Information -

アーティスト:JESSE BOYKINS III
タイトル:LOVE APPARATUS
発売日:9月17日
価格:2,160円

■Amazon
http://www.amazon.co.jp/LOVE-APPARATUS-%E5%9B%BD%E5%86%85%E7%9B%A4-%E8%A7%A3%E8%AA%AC%E4%BB%98-%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%83%8A%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF3%E6%9B%B2%E5%8F%8E%E9%8C%B2/dp/B00LWVO66A

■iTunes
https://itunes.apple.com/jp/album/love-apparatus/id852670557
https://www.pioneerdj.com/ja-jp/product/software/wedj/dj-app/overview/