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clubberia Award 2017
– アルバム部門 -

 本部門は、編集部で候補作を持ちより、そのなかからオリジナル作品のみ20タイトルを選びました。ジャンルの偏りがないよう配慮しましたが、近年のビートミュージック/ベースミュージックが多くの作品に取り入れられているのを痛感しています。また、編集部スタッフの趣向も少なからず反映されていることは、ご了承ください。順番に優劣はありませんが、タイプ別で並べてあるため、気に入った作品があればその近くの作品も気に入っていただけるかもしれません。
 
 



Burnt Friedman
The Pestle
(Latency)

ダブ、エスニック、アンビエント、ジャズ、ノイズ……様々な要素を取り入れ実験的なエレクトロニックミュージックを作り出すBernd Friedmann。1991年から2011年の間に制作されたという未発表音源を集めたミニアルバムではあるが、そのタイムラグを感じさせない作品には、さすがの一言。



Atom TM & Lisokot
Walzerzyklus
(Raster-Noton)

この音楽を例えるのに、こんな物語だとどうだろう。Raster-Notonが開いた電子音舞踏会。そこで聴衆の注目を集めたのは、彼らだった。ロシア人女性シンガーLisokotのボーカルとAtom TMのミニマルなマシーンミュージックが1.2.3. 1.2.3…とワルツを舞う。豪華なドレスではなく、ユニークなドレスを着ているが、その姿は気品に溢れていた。



Rone
Mirapolis
(InFiné Music)

Michel Gondryが手がけたジャケットのパンチ力が半端ない…。ジャケ買いの勝率は低いが、本作は大金星だ。近未来を描いた短編映画集のサントラにもってこいと思うほど、曲ごとのストーリーが際立っている。Battlesのドラム、鬼才チェロリスト、仏デスメタルのメンバーなどが参加しており、それをまとめあげる、フレンチ・エレクトロニカの至宝Roneは、やはり恐るべし!


Mount Kimbie
Love What Survives
(Warp Records)

ポストダブステップ以降の重要エレクトロニックアクト、Mount Kimbie。James BlakeやMicachuをフィーチャーした楽曲も話題に。King Kruleによるラップも徐々にスクリームに化す、バンドサウンドならではの新しい一面も。クラブミュージック好きが好きになる、エレクトロニックなライブバンドサウンド。



LCD Soundsystem
American Dream
(Columbia Records)

ニューヨークのアンダーグラウンドシーンのカリスマ、James Murphy率いるダンスパンクバンドLCD Soundsystem。7年ぶり、ファン感涙の復活&新作は、全米アルバムチャートでも1位を獲得している。暗い歌詞も多いが、そういった状況だからこそ、アートワークのように、太陽、青空が妙に美しく映る。1曲目の「oh baby」のように聴き入ってしまうバラードもあれば、フロアで流れたらバカになれそうなダンサンブルの曲も多い。バンドのグルーヴ感満載の演奏もたまらない。



Kuniyuki Takahashi
Newwave Project
Mule Musiq

エレクトロニックミュージックを聴くときの指標のひとつに、ひとつひとつの音にどれだけ敏感にさせてくれるかがある。本作はニューウェイブといった彼が影響を受けた初期の音楽にフォーカスを当てているようだが、初期衝動的な荒々しくもありながら、それぞれの音が整って聴こえて怖いくらいだ。彼のなかでの昔と今を見事に同居させた作品だ。



James Holden & The Animal Spirits
Animal Spirits
(Border Community Recordings)

1999年、当時19歳でテクノ/ハウス系のスターDJとなったJames Holdenは、2017年スピリチュアルジャズを奏でていた。編成は、ドラム、パーカション、アルトサックス、コルネット、そして自身が演奏するシンセサイザーによるカルテット。展開は作らずにフレーズのループによるグルーヴは、トランスミュージックそのものだ。


Four Tet
New Energy
(Text Records)

作品を象徴する音として存在するハープ。オリエンタルな雰囲気とエレクトロニックミュージックを品よくミックスさせた作品。ベース系のサウンドは身を潜め繊細さは増しているが、フロア向けの楽曲も。作品を通して世界観そのままにカラフルに仕上げている。



Bonobo
Migration
(Ninja Tune)
 
1月28日に発表される第60回グラミー賞にも2部門でノミネートされている本作。繰り返し、繰り返し聴いても飽きることのない音楽。それは、日常に似ている。劇的な変化はないが細やかなことに幸せを感じたり、その逆もあったり。聴く者のためのBGMとして鳴っているかのようだ。普遍的な音楽というのは、Bonoboのように控えめにも日常を少し美しく照らし出してくれるものなのだろう。


Petit Biscuit
Presense
(Petit Biscuit Music)

“昼は現役高校生、夜はDJとして活動を続け、珠玉のドリーミーエレクトロミュージックを紡ぐ神童” の触れ込みで話題となった作品。総ストリーミング数3億回を超え、彼の人生を大きく変えるきっかけになった代表曲「Sunset Lover」も収録。小気味よいボーカル使いがビートやメロディーとの相乗効果で独自の心地よさを作っている。



FKJ
French Kiwi Juice
(Roche Musique)

ラウンジでFKJの曲をかけたら、あのカワイイ娘が、僕を見てくれるかもしれない…。そんな淡い期待を持ってしまいかねないほど、爽やかに甘い作品。モロにセクシーではないのが良い。日本を席巻する塩顔の俳優の様なとでもいうか、からりとしたヒップホップ、R&B、アンビエントに、多くの人の琴線に触れる可能性を感じる。本作がきっかけで、「いろいろな音楽を聴くようになった。」と言う人が出てくるのではないかとも思う。


Ebhoni
Mood Ring
(Independent)

カナダ・トロントのR&Bシンガーソングライター。本作は17歳での作品だが、初めて自作曲を発表したのは12歳のときにサウンドクラウドでというから驚きだ。トラップなど要素を取り入れながらも、アンビエント感も感じられるため、歌がしっかり入ってくる。また彼女の歌声も素晴らしい。



Goapele
Dreamseeker

(Empire)

うっとりするような神秘的な歌声だけで、もはや十分。1曲目の、ほぼアカペラの曲だけで、お気に入りを押す。その歌声を、“Sadeのような”と形容するのは、どうしても避けたくなる。デビュー曲となった01年の「Closer」、そのDJ Spinnaリミックスは名盤になったり、Drakeがほぼカバー状態でサンプリングしたりするほど。もちろん本作も時を超えて受け継がれるべき名作。


Talib Kweli
Radio Silence
(Javotti Media)

20年近いキャリアを誇るトップリリシストの新作。作品内でAnderson .PaakやRobert Glasperといった“今”を感じさせるアーティストともコラボしているが、どこか90sのような懐かしさも感じられる、メロウなヒップホップ。どんな音にも、ラップで見事に舞ってみせる、これぞベテランの妙。


Thundercat
Drunk
(Brainfeeder)

客演陣のネームの豪華さかから、彼が受けるリスペクトを感じられるが、それでも一聴すればThundercatだと分かるのが、彼の作品の凄さなのだ。誰の色にも染まらない。それは、自身の作品の中では一貫してそうだし、それがオリジナリティだと思うし、彼の作品が毎回ベストだと思う理由はそこにある。



Jamire Williams
EFFECTUAL
(Leaving Records)

Robert Glasper Trioのメンバーとしても、その名を轟かせる鬼才ドラマーのソロ作。耳の中、いや頭の中がドラムの音に侵食されていく。スネアが暴れ、ブラシが這い回り、バスドラが突進してきたり。長時間、聴くとおかしくなりそうな危うさがある。が、中毒性もある。ほぼ自身のドラムと電子音のみで構成されているドラム純度の高さも、中毒性の高さの要因かも。



Richard Spaven
The Self
(Fine Line Records)

やけにドラムの音が生々しくて、際立って聴こえる作品だなと思ったら、ドラマーによるアルバム。タイトルのズバリさにも納得。いわゆるドラムンっぽいが、そうではなく、ドラムをフォーカスした音楽に仕上がっている。しかし、ここに選ぶわけだから、曲ありきで良い。前述したJamire Williamsの作品とは、違う良さなので、2枚一緒に聴いてみてほしい。



Arca
Arca
(XL Recordings)

本人曰く「これは僕の声であり、僕の内面の全てだ。自由に判断してほしい。」という本作。光神しいとは、本作のような世界観を言うのかもしれないが、私は畏怖する。どちらかというと拒絶に近い。凡人が決してたどり着くことができない領域、それがARCAというアーティスト性なのだ。だからこそ触れてみたくなる。



坂本龍一
Async
(commmons)

8年ぶりとなるオリジナルアルバム。タイトルは非同期を表すasynchronizationを略したもの。同期を検索すると、“2つ以上の信号や処理のタイミングが合うこと”と出てくるが、本作はまさにそうだ。各楽器のレイヤーが縦に並び時間軸にそってヨーイドンで鳴っていくという音楽ではない。三次元的空間に各楽器をいろいろな場所に配置して鳴らしているよう。次聴くと、違う音がなるのではないか?とも思わせるほど、繊細に曖昧に、その場で音が佇んでいる。


Ethereal Logic
Tales From an Extraordinary Trip
(Slow Life)
ベルリン拠点のアンダーグラウンド・ハウス・レーベルSlow Life。その看板アーティスト、Sergio MoreiraとIndi Zoneによる新ユニットEthereal Logicによるファーストアルバム。複雑に音の素材が絡み合ったアンビエント作品となっている。

 




 

なお、26日(金)にclubberia Award 2017 - フェスティバル部門 - を公開予定です。そちらもお楽しみに!