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Melt! Festival(7/13-15)

Melt!
Simeon Paterson @ Melt! Festival, Grafenhainichen (near Berlin), Germany, 13th-15th July.

あぁ、やってしまった…。今から48時間にもおよぶテクノ、エレクトロニカ、ドラムンベース、ロック、ヒップホップ、エレクトロ、エクスペリメンタルの祭典Melt! Festivalへ向かうというのに、既に二日酔いで頭が痛い…。昨日の晩はゆっくりしようと思っていたけれど、結局ベルリンのクラブに遊びに行ってしまった。まぁ、ベルリンにいるのに夜遊びをしないなんて、到底無理な注文だったってことだ。ちなみにベルリンのパーティーシーンは非常にクリエイティブで、フレンドリー。クラブのチャージもロンドンや東京に比べて断然チープ。しかもクラブ以外でも街の至る所からクールなテクノが流れている。そして何よりも、ベルリンのクラバーはとにかくクレイジー。ベルリンのクラブが盛り上がり始めるのは明け方近くだし、最高潮を向かえるのはサラリーマンが会社に出勤するような時間なんだ。クレイジーの一言に尽きるね。そんなクレイジーなドイツで行われるMelt! Fesivail。これはとてつもない体験が期待出来そうだ。

パーティーレポートを始める前に、Melt!フェスティバルについて少し説明しておこう。Melt!は1997年にスタートし、今年で10年目を迎えるドイツを代表する野外フェス。(2003年は開催されなかった)3年目以降からは、会場を現在のFerropolisにある石炭採掘跡地に移動しての開催。Ferropolisはベルリンから特急で1時間程の小さな街Grafenhainichenにあり、会場にはフェスの象徴とも言える巨大な採掘機がそこら中に転がっている。しかも会場のすぐ横には人口湖まであるという、最高にクールなロケーション。出演者はロックやヒップホップ、ポップなどのバンド系と、クラブ系アクトがいい感じにミックスされたラインナップ。セットチェンジで音が止まることもないし、エレクトロニカ/ダンス系アーティストも沢山出演していることもあって、他のフェスに比べるとレイブに近い感じ。そしてダンス系アーティストもDJだけはなく、ライブアーティストも大勢参加。ま、冷静になってみればそれも納得。だってこれはテクノの先駆者Kraftwerk、そしてスーパークールなミニマルテクノを生んだドイツのフェスなんだから!サウンド的にはDJ Maruri主宰のMetamorphoseとFuji Rock Festivalを足して2で割った感じ。ただ会場の雰囲気を言葉で表すのは非常に難しいが、とりあえず頑張ってみるとしよう。

会場についてはさっきも少し触れたが、元石炭採掘地。とにかくこのロケーションが有り得ないくらいカッコいい。人口湖の隣にある会場内には、高さ100m、重さ数千トンもあるようなクレーン車や採掘機など巨大な機械が至る所に置かれている。そして巨大な機械の下にはステージが設置されている。明るいうちは粗々しく見えたステージや巨大な機械も、夜になるとカラフルなライティングやプロジェクターそして無数のミラーボールで美しくライトアップされ、見事なアートワークと姿を変える。そして僕たちはアートワークの周りで踊る小さな蟻の集団のようだった。その光景があまりにも圧巻過ぎて、ついこんなことを考えてしまった。数千年後、自然破壊や地球温暖化によって人類が絶滅した。そして無人となった地球にエイリアンが着陸し、Melt!の跡地に辿り着いた。そこでこの光景を目にした彼らは「地球にはこんなに巨大でパワフルな機械があったのに、なぜ人類は滅亡していまったんだろう?」と不思議に思うに違いない。もしくは「人間はこの巨大な鉄の塊を神のように崇拝し、踊りの儀式を行っていたのか?」と考えるかもしれない…。暑さとビールの飲み過ぎでフラフラしてたとはいえ、こんな無謀なことを考えさせられる位、壮大な場所だったということだ。

そして会場と同じ位驚かされたのがチケットのプライス。前売りで買えば、2日間通しチケットがたったの60ユーロ(約10000円)+ブッキングチャージ。Melt!に比べると、日本やイギリスのフェスはまさにぼったくりだろう。実際この財布に優しいプライスと、豪華なラインナッでMelt!の集客は毎年増えて行っている。1997年にスタートした当時は2000人しか集まらなかったが、今年は16000人を超える大規模フェスに成長した。しかもオーディエンスの質も最高で、2日間で本気の酔っぱらいを見たのはたったの一度きりだった。他の人たちも別に気にする訳でもなく、みんな笑顔で彼に接していた。セキュリティー・スタッフの数も非常に少なく、また警察やドラックのディーラーの姿も全く見かけなかった。喧嘩やスリ、テント荒らしの被害に遭ったという話も一切耳にしていない。日本では当たり前のことかもしれないけど、ヨーロッパのフェスに慣れてる僕にとっては、Melt!では全てがフレンドリーすぎて少し不安を覚えたくらい。ドイツはホント不思議な国だ。モチロン良い意味で。

そしてやっぱり忘れてはいけないのが音楽。ということで、ここからは少し音楽の話をしよう。金曜の晩に見たMathias Kaden vs Ounr Ozerの存在はMelt!で初めて知ったけれど、ここ最近聴いた中で一番オリジナリティー溢れるテクノだった。パーティーではいつもお酒を飲み過ぎて記憶を無くしてしまうので、今回はノート片手にメモを取っていたのだが、後日メモを見返すと彼らの名前の横に“Funky”を4回も殴り書きしていた。ただ彼らのサウンドは、ファンキーなだけじゃなく、ディープ&プログレッシブなベースラインがとってもセクシーなミニマルテクノ。彼らの音を女の子で例えるなら、けして母親には紹介できないくらい淫らでダーティー。それ程セクシーなセットだった。彼らに続いて、Alex Smoke、Abe Dubque、Troy Pierceなど蒼々たるメンツが登場。また他のステージではTiefschwarz, Autechre、Lady Sovereign、Jamie Tがプレイしているという何とも贅沢な状態。 次にメインステージに移動すると、そこではDizzee Rascalがもぎたてのトマトくらい新鮮なセットを披露している所だった。その後ステージに現れたのがロンドンの人気アクトGoldie and Mc LowQui。Goldieは飛行機会社のミスでレコードバックが空港に届かず、レコード無しでプレイするハメになったにも関わらず、ウォッカのボトルを片手にフレンドリーで素晴らしいセットを見せてくれた。プレイが終了した後は、GoldieとMc LowQuiもオーディエンスと一緒に本日のラストアクト、Richie Hawtinへと移動。出番を終えたアーティストやスタッフがRichieを取り囲んでのステージとなった。そして朝の8時、金曜日のアクトが全て終了。

2日目の土曜日はBooka Shadeでスタート。予想通り、王道ナンバーが中心のセットだった。Hot Chipのライブは、キーボードが壊れていたにも関わらず、レコードで聴くよりも数倍カッコ良かった。その後Kelisが登場。彼女はデビュー当初アメリカよりもヨーロッパで人気が出たフィーメルシンガーで、今回はちょっと音低を外した場面もあったけれど、持ち前のキュートなキャラクターで会場を湧かせていた。ちなみに彼女の荷物もGoldie同様、間違った空港に行ってしまったため、プレイ中下着は付けてなかったらしい。ベルリン出身のエレクトロ・ロック・バンドGossenの衝撃的なライブに続いて、Mouse on Mars、そしてTrentmoellerがスタート。Trentmoellerのライブは良かったけれど、エネルギーが切れかけて来た2日目の晩には正直少しハード過ぎる内容だった。そしてそれよりもハードでワイルドだったのが次に登場したUNLKE。今回のライブはエクスペリメンタルロック+ブレイクビーツのようなサウンドで、これまでに聴いたUNLKEとは全く違う音だった。今を時めくDigitalismのライブが始まると、勿論フロアーは大興奮。ヒットナンバーを次々とドロップしたTiga、そして最後は新たに2人メンバーを追加したCereal Killersによる最高のミニマル・テックのライブでメインステージはジ・エンド。その後は、他のステージでプレイ中だったドイツテクノ界のレジェンドことDJ Hellへ。それでもまだ踊り足りないハードなクラバーたちは、Sleepless Floor(眠らないフロアー)と名付けられた24時間ダンスフロアーへ移動し、足が動かなくなるまで踊り続けたようだ。

ちなみにMelt!では、昼の間音が鳴っているのはこのSleepless Floorという小さなフロアーのみなんだけれど、これはある意味いいアイディアだと思う。フェスではどうしても「寝るのが勿体ない!」という気持ちになってしまい、ついつい寝不足になってしまいがち。だけどこうやって音を止めることでオーディエンスも心置きなく休息をとることが出来る。そしてMelt!のようにブレイクタイムを設けてアーティストの数を必要以上に増やさないことが、チケットの値段を安く抑える秘訣なのかもしれない。今後、他のフェスもこのシステムを是非導入して欲しいものだ。

2日間のミュージック・ジャーニーを終えベルリンへ。しかし帰りの電車は各駅停車の上にエアコンなし。お陰で車内の温度気は35度を遥かに超えて蒸し風呂のようだったし、疲れは極限に達していた。でも僕の心の中は、世界屈指の素晴らしいフェスを体験したという清々しい満足感で一杯だった。

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