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DJ SADAA 『Oneday in Ibiza』

東京クラブシーンに咲き誇るクリエイター集団「FRACTAL」から一時離脱し、バルセロナにて活動中のDJ SADAAによるイビサレポート。

o月x日(晴れ)

夕暮れに赤く染まった山道を下って、車は海の方へ海の方へと暮れていく夕日を追いかけ ていた。90度開いた急カーブを旋回して、崖から光が差してくる。まだ夕日は沈んでいない。切り立った崖の遠くに巨大な岩が現れた。車内に勢い歓声があが る。砂利道にもかかわらずDJ SALがアクセルを思い切り踏み込んだ。
それから数分後、僕たちは波の音すら届かない崖の縁に立って、夕闇にぼぉっと浮かぶ巨大な岩に圧倒されていた。静寂の中、この崖に身体だけ置いてきざりにして岩の中に吸いこまれているみたいだった。それからすげーなんて言って。

o月x日(快晴)

フォルメンテーラ島に向かう高速船の上、雲一つない青空と真っ白い航跡のずっと奥に茶色いお城と城壁がだんだん小さくなっていく。船首がバスケットボールみたいに弾む。しぶき上がる波にTシャツを濡らしながら、船首に陣取った観光客の笑顔と歓声が気持ちいい。
貸し自転車に乗って海岸線を突っ切り、背の高い草木をくぐり、紺碧のビーチを求めて疾走する。やがて、目の前を翠色の海が覆った。今日はここにしよう。自 転車を止めて一目散に砂浜に駆け出す。20メートルほど沖に出て、透明な青と翠の上にただ浮かんで、もうそれだけで胸が躍っていた。

9月8日(晴れ)

Pachaで開催されているSubliminal Sessionで、終わらないアンコールの中Erick Moriloと二人でずっとマイクでお客さんを煽っていた。と思うとそれは夢で、Subliminal Sessionから帰ってきてから随分時間が経っていた。深く眠ってしまったせいでしばらく立ち上がらない脳味噌を揺らしながらシャワーを浴びた。もうす ぐ、9時。出かける時間だ。Costline Cafeで開催されていたCream Pre-PartyでのDJを終えてDJ XAKI & SAYが戻ってきた。

9月8日(晴れ) 4:47

DJをしている最中のTim Deluxeに話かけた。どっきりテレビみたいな心境だったのを覚えている。
「Hey man!」
「Ohhh! man! どうしてここにいるんだ?」
「今日オレは君の前にここでDJをしていたんだよ。」
「コングラチュレーション!ついにここまで来たんだね、おめでとう!」
「ありがとう!今日は最高だよ。この後ももっと踊らせてくれよ!」
「OK!きっと今日は最高のパーティーになるよ!」

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