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SonarSound Tokyo day2

【SonarClub】Battles, Rovo, Kode9, Takagi Masakatsu, DJ BAKU, Seefeel, Open Reel Ensemble
【SonarLab】dot i/o, DE DE MOUSE, DJ Yogurt, Sabi, Bflecha
【Red Bull Music Academy presents SonarDome】Dorian Concept, sauce81, Mweslee, Hiroaki OBA
【SonarComplex】大竹 伸朗 x 畠中 実 (ICC主任学芸員) talk session, 松武 秀樹 (LOGIC SYSTEM / MOTION±主宰) x 畠中 実 (ICC主任学芸員) talk session, Shuta Hasunuma produced by Kenichi Aono (BEAMS), Itaru Yasuda

 

前日の「SonarSound Tokyo」から少しの睡眠を取り、どうしても見ておきたいアーティストがいたのでオープンから足を運んだ。それは、アリーナのオープンニングアクトを務めた「Open Reel Ensemble」だ。旧式のオープンリール式磁気録音機を現代のコンピュータとドッキングさせ、「楽器」として駆使して演奏するプロジェクトである。オープンリールとは簡単に言ってしまえば、大きいカセットテープ、映写機にセットする大きいフィルムのようなもので、彼ら以外にも2008年のLOOPのアニバーサリーに出演したUKのGreg WilsonもDJに使用している。「Open Reel Ensemble」は、出演が発表されたときから絶対に見たいと思っていた。YouTubeに公開されている映像は見ていたものの、想像以上に感情を剥き出しにした、理詰めというより感覚的なパフォーマンスに驚いた。オープンリールでスクラッチのような音を出したり、声や楽器の音をその場でオープンリールに録音し使用していた。旧式の機器を使用しての前衛的な表現に、何を使うかではなく、何をどう使うかの重要さを目の当たりにした。

「Open Reel Ensemble」のパフォーマンスを終えて、次の「高木正勝」までの空いた時間は、Red Bull Music Academyがホストを務める"SonarDome"の「sauce81」のプレイに足が止まった。ディスコ、ハウス、ヒップホップ、といった心地よい揺れ感のあるトラックをプレイし、みんなをゆっくりウォーミングアップさせるかのような粋なプレイに酔いしれた。またその音は、自然光を採り入れた明るいBOXフロア内の雰囲気とも合っていた。

このとき「高木正勝」のスタート時間が頭の中で隅に追いやられていたので、やばいと思いながらアリーナに引き返した。真っ暗なアリーナでは、彼にのみスポットライトが当てられて、グランドピアノの音が神聖に鳴り響いていた。普段の"ageHa"のイメージとは対極にある音と、もっともシンプルな演出に、コールアンドレスポンスはなくても、彼の音楽を共有しみんながひとつに繋がっているように思えた。しばらくすると、映像作家としての顔も持つ彼の映像がバックに映し出される。細かい粒子の集合体が集まり、イメージを模っていく映像は、我々の記憶のような抽象性と儚さを思わせた。今日よりも明日、明日よりも明後日というように彼のパフォーマンスは、日々、私たちの中で熟成されいく、そんな世界観だった。

「高木正勝」が終わり、トークセッションや先端テクノロジーを駆使した、オーディオビジュアルライブなどが予定されている"SonarComplex"へ移動した。お目当ては、アンビエントミュージックの先駆者"Brian Eno"を敬愛する芸術家「大竹伸朗」と、東京オペラシティタワー内にある"NTT インターコミュニケーションセンター"の学芸員「畠中 実」が、アンビエントとは何かに迫るトークプログラムだった。
70年代の音楽、WIREやDAFなどのパンク、ニューウェイブから始まり、「大竹伸朗」と"Brian Eno"との出会いや、"Portsmouth Sinfonia"に代表される、音楽的偶発性への実験的取り組みなどの話が聞けた。ロック全盛期にアンビエントという新しい音楽を提唱した"Brian Eno"のすばらしさを改めて知った。

トークセッションが終わり、この日、もうひとつのお目当てのアーティスト「Dorian Concept」のライブが"SonarDome"で始まった。彼のキーボードさばきを一目見ようとパフォーマンス、前方からすでにパンパンの"SonarDome"。彼がブースに姿を現すと、その期待感を表すような大きい歓声が上がった。わかっていても圧倒されるキーボードスキル。硬質なエレクトロニカサウンドを出すシンセサイザーにはジャズの要素が含まれており、ソウルを感じた。文句のつけようのない天才のプレイを楽しめた。

先ほどトークセッションが行なわれていた"SonarComplex"へ戻り、シンセサイザーエンジニアとして、YMOに参画されていた「松武秀樹」と「畠中実」のトークセッションを聞いた。目の前に置かれた通称「タンス」といわれていたMOOGシンセサイザー。簡単なシンセサイザーの説明から始まり、実際に音を出しての実演、YMOとの仕事のこと、最終的には1人1人の異なるDNAを利用し、音をならすシンセサイザーを作りたいという夢のことなど盛りだくさんの話となった。

アリーナへ戻ると「KODE 9」がプレイしていた。ダブステップとはここ数年で注目を浴びるようになったジャンルである。非常に太いベース音と、リバーブのかかったドラム。"ageHa"のアリーナのサウンドシステムでダブステップのような低音を前面に押した音楽をきけるのは、やはり贅沢なことだとアリーナの中央に立ってみて思った。今回のセットは、攻撃的な音楽というよりも、オリエンタルな世界観も混ぜつつ、ドラムンベースからヒップホップと全体に色気のある選曲だったと思う。

そして、最後に「Battles」のライブがやってきた。昨年、Tyondai Braxtonの脱退し、新生「Battles」となってのライブに注目が集まった。ポップさは以前よりもなくなった反面、より"硬派"なサウンドになったのではないかと思った。4月27日にアルバムのリリースを控えてたのもあり、多くが初めて聞く曲でセットが組まれていた。アリーナの最後方にいたのだが、ドラムとベースの音に心臓が押さえ込まれるほどの強さと、楽器を掻き鳴らす様に、改めて肉体派のバンドだと思った。新生「Battles」のアルバムも楽しみにしたい。

2日間に及んだ「SonarSound Tokyo」で、普段よく聴く音楽とあまり聴かない音楽とを両方聞いて回った。不思議なもので、15分くらい真ん中でじっくり聴いてみると、普段聴かない音楽の魅力が少しわかってくるように思えた。私にとって新しいものとの出会いやその刺激が、私の容量をぐっと広げてくれる。「SonarSound Tokyo」は、多くの体験を私たちにさせてくれた。一時は、地震の影響で開催されるかどうかすら危ぶまれていたが、私たちを元気づける内容となったことは間違いないだろう。

Text : yanma

Photo : Masanori Naruse, Tadamasa Iguchi

Photo : Masanori Naruse Photo : Tadamasa Iguchi
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