この国の9人のDJ、そしてムーディーマンとの勝負を終えたムードマン。10番勝負の並外れた激戦を闘ってこれたのもDJの奥義を極めんとす、そのなみなみならぬ探究心からである。そしてついにムードマンには"LIQUIDLOFT"に伝わる奥義の封印を解く秘法が明かされることになった。
出意路絵居(でぃじぇい)……古代中国の皇帝に代々使えた楽士の名門:出意路(でいじ)家に伝わる奥義。出意路家中興の祖とも言える出意路絵居(でいじ・えい)が大成させ、その敬意を込めて彼の名前で呼ばれるようになった音楽技法。当人は演奏せず、世界中から集めた歌手、演奏者を自らが決めた順番で演奏させ、皇帝の催す宴を盛り上げた。口述のみの伝承だったため、いまや出意路絵居の本来の姿はいかなる文献にも現存していないという。しかしその名残りとして、一部がシルクロードからヨーロッパに渡り、自ら演奏せずさまざまな演奏者を立てて演奏することをディージェイと呼びようになった。英語圏に到達したころ、その宛て字としてDとJが使われた。録音技術の発達とともに録音物をチョイスしてプレイする職業にも自ずとこの名前が当てられた。これがのちのDJである。-DJの紀元-明民書房刊『世界の音楽起源異聞大全』
この“出意路絵居”が残した奥義は、いまから遡ること1200年もの昔、奥義を極めたひとりの“出意路絵居師”が遣唐使船によって日本海を渡り、流れ流れて、武蔵野国の荒れ野であったここ恵比寿の地に辿り付き、奥義とともにそこに眠っているという。この奥義の封印を解くには、その“出意路絵居”の魂を受け継ぐDJの10番の手練たちとのガチンコ勝負、そして最後にはそれをくぐり抜けたDJの長時間の単独演武が必要だという。そしてこの奥義を極めんとするDJが、21世紀のとある夜に、この封印に立ち向かう! 果たしてムードマンはその奥義を手に入れられるか?
2008.12
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SAT

