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Sam Sparro

ありがとう! とりあえずは、最大限にこの経験をエンジョイしようと務めてるよ。毎日大忙しだから、健康面に充分に注意を払いつつ(笑)。でもほんと、素晴らしいことだよね。まさに僕が長年夢見てきたことが実現したわけだし、今とてもいい場所にいると思う。人々は僕の音楽を愛してくれていて、すごく充実感があるんだよね。ただ、こういう仕事をしていると、実はものすごく狭くて自己完結した世界に隔離されて生きているから、究極的にこの環境の変化が僕にどういう影響を及ぼしているのか、自分には見えなかったりする。いい部分ばかり目に入ってしまうからね。まあ、だから気にしなくてもいいのかも(笑)。 いや、僕は特定の国にはこれといった愛国心みたいなものは感じていない。自分を極めてインターナショナルな人間だと捉えているし、ロンドンでもLAでもシドニーでも同等に居心地がいい。つまり、“旅人”みたいな存在なんだと思う。 うん!まさにそうだね。様々な異なる音楽の間を飛び回ってる。そういう音楽志向も、僕の人間性の延長なんだと思うよ。ほら、あちこち頻繁に移動しながら育つと、新しい環境にスピーディーに順応する能力を身につけるよね。新しいものを受け入れ易いんだ。新しい環境、新しいファッション……。そして最終的にはカメレオン的な大人になるのさ! ただなんとなく、ほかのどの町よりも僕を理解してくれる人がたくさんいるような気がしたんだよ。LAの音楽界って企業主導だし、ロンドンやヨーロッパやオーストラリアや日本に比べると、音楽に対してオープンマインドな人の数が限られている。許容範囲が狭いんだ。だからずっと昔から、ロンドンに行けば色々実験できて、僕を受け入れてくれるんじゃないかなって思ってたんだよ。 うん。実は素晴らしいシーンがあるんだ。虚飾に満ちたLAの業界の外側には、途方もなくエキサイティングでアーティスティックでクリエイティヴなシーンが存在していて、才能溢れるアーティストやデザイナーやミュージシャンが大勢活動している。自分が進むべき道を模索している人間には、もってこいの場所だよ。何しろLAのライフスタイルってのんびりしていて生活し易い。ロンドンじゃ食べて行くだけでも大変だからね! そうだね、やっぱり忍耐と自信がたくさん必要だった。いろんな人たちがアドバイスをくれたりもするけれど、何よりも自分の意志を強く持たないとね。例えば約5年前にも大手レーベルと契約しかけたことがあって、キャピトルとか複数の会社の人と会って話をして、その時もみんなあれこれアドバイスしてくれたんだ。でも、もし彼らのアドバイスに従っていたら、今僕はここにいなかったと思う(笑)、つまり、他人の言葉に耳を貸さないことが僕にはすごく役立ったみたいだね(笑)。そして今の成功に大きく貢献したんだよ! “君には無理だよ、ありのままの君を映したレコードは売れないし、変わらなくちゃだめだ”と言われながらも、自分の直感だけを信じたことが最終的には吉と出たのさ。 自分ではそう思ってるよ。これらのアーティストの大半はリズムに根差した音楽を作っているし、ダンス・ミュージックの要素を含んでいることも多い。つまりビートが効いていて、“動き”を感じる音楽っていうのかな。そんなわけでかなりファンキーだし、ソウルフルな音楽も好きだし……うん、とにかく過去30~40年を網羅する様々なテイストが僕の音楽には反映されているよ。 それって本当に難しいんだよね(笑)。だって一箇所に留まるってことがない音楽だからね! でも敢えて言葉で表すなら、ニューウェイヴ/ファンク/エレクトロニック・ソウルって感じ? その3つが交わる辺り。うん、そんなところなんじゃないかな(笑)。 ジェシーとはLAで出会ったんだ。彼はドイツのミュンヘン出身で、僕たちが出会う数年前にLAに移り住んできて、僕がパフォーマンスをしていたクラブで知り合って、友達になったんだよ。で、趣味が似ていたから音楽の話をよくしていたんだ。当時彼は自宅にある小さなスタジオで音楽作りをしていて、僕は僕で自宅のベッドルームであれこれレコーディングしていて、最初の2年くらいは仕事抜きの純粋な友達だったんだけど、最終的にはコラボレートするようになった。それ以来、本当に一緒にやっていて楽しいよ。ふたりで作った音楽で世界を変えようとか、大それた目論見は全くなかったしね。 やっぱりそれぞれ担当がある。僕は音楽寄りで、曲を書いて実際にキィボードとか楽器を弾いて音を構築し、ジェシーは技術面が得意だから、どちらかというとエンジニア的な存在だね。細かい技術面の作業とかミックスとか録音とか編集のプロセスは、彼が主導しているよ。だからすごく相性がいいんだ。ひとりが自分の担当の作業を終えたら、もうひとりがそこから引き継ぐっていう流れだからね。 うん、スペシャルな曲が書けたという実感があったよ。今振り返ってもはっきり覚えてる。いい曲、スペシャルな曲が生まれると、書き上げた瞬間から頭について離れなくて何度も繰り返し聴きたくて、何度も歌って、完璧な形に仕上げるべく延々と細部を磨き続けることになる。『Black And Gold』もまさにそういう曲だった。短時間で書き上げたんだけど、その後かなり長い時間を費やしてサウンド作りに取り組んだよ。納得がゆくまで。あれから何千回とこの曲を聴いたはずだけど、今も大好きだし、それっていい兆しだよね(笑)。 ああ。当時はすごくフラストレーションを感じていて、そして……すごく孤独でもあった。もちろん友達なんかは大勢いたけど、人生において確かな人間関係を必死に探し求めていたし、ミュージシャンとして成功を掴めないことに焦りを感じていたし、いつも貧乏で家賃やなんかを払うのもやっとっていうギリギリの生活を続けることにも、イライラしていたし……。そんな日々の中でふと、「果たして僕の人生にはこの先、何かマシなことが起きるんだろうか?」と疑問を感じたのさ。そう問いかけている曲なんだ。 一応僕の中では全体像があったんだけど、制作の過程であまりにもコロコロと変わってしまったから、今となってはどうでもいいよ(笑)。それにレーベル契約をしてからは、言うなれば“大勢のシェフが同時にキッチンで料理をする”状態に陥ってしまって。最初は僕とジェシーのふたりだけで気負いなく楽しくやっていたのに……そう、いい意味で口を挟む人が大勢加わったってことだね。だからといって僕たちは、自分たちが望まないことを強制されたわけでもなんでもない。ただレーベルの人たちは、あくまでいい意味でいろんなサジェスチョンをしてきたんだよ。よりいいアルバムを作るためにね。だから結果的に大変なハードワークと化してしまって、そして何とも奇妙なプロセスでもあった(笑)。だから完成した時にはぶっちゃけ、いい作品が出来たか否かってことはどうでもよくって、とにかく終わったことがうれしかったんだよね(笑)。 うん!(笑)まさにその通りで、中にはかなり古い曲もあるよ。5年くらい前に生まれた曲もあるし、だから現時点での“ベスト・オヴ・サム・スパロー”だね。 そうだね。ほかにもアルバム全体を総括できるタイトル候補を挙げてみたんだけど、最終的には、これはイントロダクションみたいなものだし、あまり考えすぎずにシンプルに“Sam Sparro”と命名するのが最も相応しいという結論に達したんだ。 (笑)まあ、そんなところだね。書いたのは数年前で、僕は20歳か21歳くらいだったかな。自分の存在意義について深く考えていた時期だったんだ。自分と向き合って問答を繰り返していた、当時の僕の混乱状態を映している曲だよ。“誰かが僕に教えてくれなかったことがあるんじゃないか?”と問いかける箇所があるだろう? でも、人間誰もがこういう時期を経験するものだからね! そうだね。この曲はいわゆる“意識の流れ”的な成り立ちの曲で、現代のクレイジーな生活について歌っているのさ。モノに溢れてたくさんのことが起きていて、新しいメディアやインターネットで誰もがつながっていて情報が行き交っている、今の僕たちの生活をね。世界は小さくなっているけれど、同時にものすごく繁雑でクレイジーで緊迫感に満ちた世界でもあり、最新のマシーンや様々な製品やらで溢れていて、豊かに見えるものの、その反対側では未だ戦争が起きていたり貧困に苦しむ人たちがいる……。いかに21世紀の世界がクレイジーかってことを伝えているんだよ。 それはいい質問だね。まず今の音楽業界は世界的に非常に苦しい状況にある。例えば先週のCDセールスは史上最悪記録を更新したらしいし、それってマジに悲しいことだよね(笑)。そんな中、アメリカではCDを売るために音楽以外の要素も取り込んだものすごく大掛かりなキャンペーンを展開するようになった。ミュージシャンは単に歌うだけじゃなくて、TV番組を持ったり、ブランドを経営したり、靴やら飲料やらを宣伝したり、何層にも厚く構築されたマーケティングが行なわれている。だからメインストリームな世界には面白い音楽はほとんどないよね。でも――僕はその反動だと思ってるんだけど――裏ではアンダーグラウンド・シーンが猛烈な勢いで成長している。本当にエキサイティングなアーティストが大勢登場していて、こんなこと、過去にはなかったと思うんだ。みんなあまりお金は儲かってないかもしれないけど(笑)、YouTubeやMySpaceでいつでも面白い音楽に接することができる。片や英国には、元から才能に溢れたミュージシャンが数多く活躍しているし、人々もユニークな音楽に対してすごくオープンで、それは素晴らしい。でもみんななぜかデビューして表舞台に出てくる頃には個性が薄まってしまう傾向があるんじゃないかな。 一度もないんだ。だから今から待ちきれないよ! 大勢いるよ。ビョークとかデヴィッド・ボウイ、アギネス・ディーン(注:英国人の人気モデル)、グレース・ジョーンズ、ロイシーン・マーフィー(注:元Molokoのヴォーカル)……。みんなものすごく大胆で派手で個性の強烈なスタイルの持ち主だよね。僕もそういうのを目指してる。ブランドならジェレミー・スコットやTSUBIが好きで、ほかにもお気に入りの面白い若手デザイナーが何人かいるよ。だから日本でショッピングしたくてたまらないんだよね。日本人のファッションってすごく個性的だし、ただ通りを歩いて道行く人々を眺めているだけですごく刺激を受けられそうな気がするんだ。君はどこから電話してるの? 日本? そりゃヤバいね(笑)。あもうほんと、待ちきれない! 世界中で一番行ってみたい場所なんだ。 半年くらい前に、いきなり僕のMySpaceのアカウントにメールをくれたんだよ。マークは誰よりも早く僕の曲に注目してくれた人物の一人で、自分のラジオ番組で随分前からプレイしてくれていてんだ。彼の音楽の趣味は最高だし、常に巷の動きに耳を傾けていて新しい音楽を察知する能力に長けているよね。で、僕たちはMySpace上でしばらくメールをやり取りしていて、コーチェラにダニエル・メリウェザー(注:マークのアルバムで『Stop Me』を歌ったヴォーカリスト)が行けないってことが判明した時に、「一緒に来てくれないかい?」と誘ってくれたんだ。もちろん大喜びでイエスと返事したよ。そしてリハーサルの際に初めて対面したのさ。本人も本当にステキな人だったよ。 そういう話もしたよ。今は僕もツアー中だし、お互いにあまりにも忙しいから無理だけど、将来何か一緒にできそうな気が、僕はしてる(笑)。すごく楽しいだろうし、きっとウマが合うと思うよ! そうだな、何よりもまず楽しんで欲しいよね。それに、どんなシチュエイションにも聴ける音楽だと思うんだ。朝起きた時、電車に乗ってる時、夜パーティーに出かけようとしている時……。そんな風にして生活の一部になれるアルバムだと思う。そして、オープンな心で受け止めてくれたらうれしいし、曲を聴いて色々考えてくれたらいいなと思うし……と言いつつ、基本的にオバカな内容の曲も多いから(笑)、とにかく楽しんで欲しいね。