INTERVIEWS

KENTARO TAKIZAWA

これに着手する前に、現在制作中のオリジナルアルバムの話が去年からあって、個人的には今度のアルバムはよりメロディーの強い作品を目指そうと思っていて。そこに至る過程で"じゃあ、いいメロディーってなんだろう?"って疑問が出てきたんですね。それなら"いいメロディー"とはなにかを学ぶためにカバー作品を作ってみようかと。 そうですね。だから今回はメロディー以外の部分も高宮(永徹)さんの指導の元、じっくり制作しました。 色々な表情を持っているシンガーだと思います。アダルトな面も持ちつつ、キュートな雰囲気も出せる、という。個人的にも大好きな歌い手さんです。 いや、今回はJADEさんの声云々というよりも、自分の好きな楽曲を今の自分のフィルターを通して作りたい、って基準で作りました。 実はこの制作に入るまで、彼女とは2~3度ほどしか面識がなかったんですよ。国籍も違うし、はじめはそれこそ"EQUALONE"じゃなかった。でも僕のトラックにJADEさんが歌を入れた瞬間、 "来たっ!"ってニヤけちゃいましたね。その瞬間に"EQUALONE"になったと思います。 "遊び"の要素を入れよう、っていうのは強く思っていて。その意味で今作のインタールードはすごく重要なんです。実は個々の楽曲の流れを意識して配置してありますし。 福富(幸宏)さんの『equality』のインタールードですね。中盤にLori Fineさんのポエトリーがあって、その後のアンビエントからガラッと展開を変えていくあの構成にはすごく衝撃を受けたと思います。 実はあまり時間をかけたわけではなくて(笑)。特に"FAINTLY"は15分くらいで作りました。実は、作業に行き詰まったときに現実逃避する場所なんですよ、インタールードは(笑)そういった意味で、肩の力が抜けたものが多いかもしれないですね。 僕が思うに、そういった部分って選曲して制作に入る段階で実は解消されていると思っていて。なので、その心配はありませんでした。ポイントはその先で、"カバーした楽曲をいかに完成度の高い作品にするか"。今回選んだ曲は名曲ばかりだったので、プレッシャーはすごくありましたね。 そうですね。DJ活動は自ずと反映されています。長年プレイしてる曲も多いですよ。 EBTGは今のシーンにも影響を与えている重要なアーティストだと思っていて、これを機に彼らの3枚組のベスト盤を聴き直したんですよ。その中からJADEさんの声質と僕のやりたい方向性がフィットしたものを選んで。でも素敵な曲がたくさんあるので、かなり迷いましたね。 あぁ、そこはかなり気を使いました。いい曲なのにDJでいい時間にプレイしても映えない曲って実際あるんですよ。それが勿体無くて。それを伝えたいっていうのも今作の根底にありますね。 ですよねぇ。EBTGとAnita Bakerの両方の曲でハマる声質のシンガーなんてなかなかいないですよ。僕、初めてこの曲を聴いたのが原曲ではなくて、カバーだったんですよ。しかもM BEATってアーティストのジャングル・カバー(笑)。そこから遡ってオリジナルに行き着くんですけど。これは収録されているアルバム『Rapture』自体もすごく好きで。レコードで3枚持っているくらい好きです(笑)。中古屋で見ると買っちゃうんですよね。 これこそDJの時に使い勝手が難しいレコードですね。サビは踊れるけど、イントロがゆったりしていて。。。だからこの曲は構成もズバッと変えて、サビを頭にして。これはBobbie Humphreyにしては珍しいディスコ・タッチの楽曲で、そのディスコ度をカバーではさらに増長させました。あとはオリジナルが持っている独特の雰囲気を壊さないように注意しましたね。 "パーティー感"でしょうね。歌詞でも"パーティー"って連呼しているので、そこを損なったら原曲とかけ離れちゃう。 JADEさんがArethe Franklinの大ファンだったみたいで、すごく嬉しそうだったのが印象的でしたね。 僕の場合、ジャズだったり、ジル・スコットとかエリカ・バドゥなんかから影響受けているかもしれない。あとはChilli Funk(UKの老舗クロスオーバー・レーベル)から出ていたレコードってB面の2曲目がR&Bっぽかったりするんですね。そういうのを聴いてハウスをメインに活動しているプロデューサーが作るダウンテンポな曲っていうのに魅力を感じていたんですよ。それが滲み出たんじゃないかなと思います。 彼らこそメロディーが素晴らしいグループですよね。今回の収録曲でいちばんリアレンジ度が高いです。僕、SLYをちゃんと聴いたのって20歳くらいで、すこし遅めなんですよ。触手が伸びなかった理由は……いなたかったから(笑)。それが従姉妹に成人祝いでSLYのベスト盤を貰って、その時聴いてみたらすごく新鮮で。大人の苦味が分かったような気がしました(笑) それが白人音楽なんですよね。The Policeとかも大好きだし。ただ、ブラックミュージックの魅力を改めて今作で感じたので、今後に影響するかも知れませんね。 それは、、、秘密です(笑)。音的には自分の信じたものを作っていきたいですね。それは次にリリース予定のオリジナル作品にも言えることなんですけどね。とにかく今作は08年のKENTARO TAKIZAWAの通過点ですね。でも内容は譲らないぞ、と。そういう自信はありますね。