平戸(以下H):ありがとうございます。自分たちとしては「ジャズで踊る」っていうのはこのバンドが始まった当初からの目標です。それは制作面にでもライヴにおいても同じなんですよね。僕らの中では、楽曲の制作とライヴはとても深くリンクしていて、制作、録音はライヴも見据えて作っているところはありますね。楽曲制作とライヴ、そして僕らの重要なテーマの「ジャズで踊る」っていう部分は常に意識しています。
H:そうですね。丁度ファースト・アルバム『oneself-LIKENESS』が出た頃は、低音を意識してキックを強調したり、クラブで機能するグルーヴを出すっていうところが前面的に出ていると思うんですよ。そして、セカンド・アルバムの『The Land of Freedom』、今回のサード・アルバムの『SOUNDS OF PEACE』ともちろんクラブ・ジャズ・ファンの方々にも広く聴いてもらいたいっていうのもありつつ、更にそのクラブ・ジャズの枠から外に、クラブに行ったことがない方や、ジャズを聴いたことがないっていう方にも訴えかけたいっていう思いもあって、どんどん枠が広がっていってますね。
松岡(以下M):まさか来てくれるとは思いませんでしたよ(笑)。
M:「Dance Of The Children」についてはオリジナル・ヴァージョンを歌っているDonald Smith自身にオファーしてみようって案もあったんですけど、やっぱりDwight TribleはBuild An Arkの作品での存在感って抜群だったじゃないですか。もう、これは満場一致で彼に頼もうと。で、やっぱり彼に依頼して正解。最高でした。
H:そうですね。オリジナルよりは踊れて、なおかつストリクトでキラーな感じに仕上げたかったっていうのはありますね。オリジナルよりちょっとBPMを上げたり、ソロをコンパクトにしてみたり、オリジナルの構成とは進行をちょっと変えたり。この曲のオリジナルはベースが引っ張っていっている曲なんですよ。なので音に厚みを出してみたり。どうやったら踊ってもらえるかなっていうのを自分たちなりに意識しました。
M:これはクラブ・ジャズ・クラシックでもありますし、スタンダードなジャズからみてもクラシックの要素があって。それにとても疾走感のある楽曲なので、これならquasimodeらしさもだせるんじゃないかと。
M:曲順に関してはプロデューサーの小松さんにもアイディアを頂きました。前作で最初と最後を派手に決めて、途中スピリチュアルなジャズといった感じだったんですけど、今回は前半をガッと攻めて、後半はよりディープな感じになっていくという。この後半の2曲の歌もの「Midnight Flower」とか「SOUNDS OF PEACE」とかはかなりディープですよね。でもこのあたりの曲は、コアなリスナーの方とか大御所のDJの方とかにとても評判がいいんですよ。
平戸:この歌もの2曲に関しては、僕たちのオリジナル楽曲です。「Midnight Flower」はDwight Tribleに、「SOUNDS OF PEACE」はCarmen Lundyに歌ってもらったんですけど、録音自体はトラックを送って歌を入れてもらって送り返してもらうという形だったんです。こういう感じでって、ある程度こちらからは意向をお伝えして。でもそれ以上のものが返ってきました。素晴らしいですよね。
H:そうですね、どんなジャンルの音楽でもそうだと思うんですけど、音楽のスタイルとして、他のバンドがやっているところを取り入れても仕方ないので、刺激を受けるっていう意味で、例えば、このバンドは今こんな感じのことをやっているのかぁとか、そういう聴き方はしますけどね。でも、やっぱり僕らとしてはquasimodeはこれだっていうのは持っておかなければいけないと思うんです。うん、意識的に差別化をしているとのは別で、やっぱりうちらのサウンドはこれだっていうのがありますからね。そういった状態でどのバンドもお互いに刺激を受けつつ、個性を発揮して、いい関係ですよね。
H:アルバムのリード・トラックとして「Finger Tip」をメインにしたシングルを出させて頂いたんですけど、これは制作の段階から本当にquasimodeの曲だなって思っていたんです。完成して、これこそquasimodeが提示するフロア・ライクな楽曲だって、皆様に踊ってもらえるって自信を持って作った曲です。そして、Flower Recordsの高宮さんにエクステッド・ヴァージョンを作って頂いて。
M:「Dance of the Children」は、quasimodeのスピリチュアルな部分とダンサブルな部分が上手く合わさった楽曲ですよね。それこそ、クラシックとされている楽曲のカヴァーですし、DJの方からの評判も凄く良い楽曲です。で、「Catch the Fact」は、以前からレコードで出ないんですかってご意見をいっぱい頂いていて。フル・レングス・ヴァージョンとしては初出になります。やっぱり、アナログはクラブ文化の象徴でもありますからね。今後もアナログはリリースして行きたいです。
M:どの曲も、ヴィジョンとしては出来ていても具体化するのが大変でした。時間があれば出来るわけでもないし、練習すれば出来るわけでもないし。一日中やって全然ダメな日とかもありますもんね。でも、ちょっとしか出来てなかったのに、何かのきっかけから一気に作業が進む時もあるし、仮メロを付けている作業の中で「これだっ」て、スラっと出来ちゃう場合もありますしね。その何かきっかけが出来るまでが凄い大変で。難産といえば全ての曲が難産でしたね。
H:楽曲でいえば「Rumble in the Jungle」は、ホーンもパーカッションもオーヴァー・ダブさせているんですけど、今までになくそういったオーヴァー・ダブで世界を作っていく作業があったので、難産であったともいえるし、作業も楽しめましたね。あと「Midnight Flower」でストリングスを入れたりもしました。ストリングスは凄い刺激になりました。スタンダードなオーケストラル・ジャズとはまた違った、スピリチュアルに響くアレンジに出来たと思います。
M:僕は個人的にブラック・スピリチュアルなものが凄い好きで。quasimodeとしてジャズをやるときに、もちろんジャズを聴いたことがない人が入りやすい部分も大切にしたいんですけど、それだけじゃなくってジャズが持つ根底のスピリチュアルな部分もやっぱり譲れないっていうか。そういったスピリチュアリティーは各曲のタイトルやアルバム・タイトルにも込めた部分もあって。それで「Dance of the Little Children」とかは、子供に人生を説いているような歌詞なんですけど、そういったところにも繋がってくるかなぁと思うんです。例えば、アルバムの最初と最後に収められている「Take the New Frontiers」はブラック・スピリチュアリティーな言葉でもあり、quasimodeとしても「新たに切り開く」といった意味で、ダブル・ミーニング的な要素もあります。でも、スピリチュアルなものに寄り過ぎてしまうと難解なものとなりがちですし、「ジャズで踊る」といった面ではマイナスに働いてしまう場合もありますからね。だから、そういった面も提示しつつ、ダンサブルな部分を損なわないようにバランスは取っています。
H:そうですね。僕もジャズをやってきて、一部の人のものとなってしまっているような状況を変えたくってquasimodeを始めたので、みんなで楽しめるようなジャズをやっていきたいですね。今回のサード・アルバム『SOUNDS OF PEACE』も、クラブという側面からも、ジャズという側面からも、どっちからでも入れて、そして深く掘り下げていけるアルバムが出来たと思っています。ですので、クラブ・ジャズを聴かれている方はもちろん、ジャズ・ファンの方やクラブ・ミュージックが好きな方、普段クラブに行かれない方も、是非このアルバムを聴いて、クラブやライヴに足を運んで頂いて、僕たちの提示する「ジャズで踊る」ということを感じて頂けたらと思います。
INTERVIEWS