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8ronix

いや、そこはレーベル側の努力も大きいと思いますよ。インディーズで、しかもこんな新人のデビュー作なのに、ホント、申し訳ないくらいですよ。僕は作ることはできるんですけど、売る才能は全くないですからね。その部分を誰かが担当してくれるのは本当に有り難い。自分でミックスCD作って売ってたときなんか、内容には自信があるのに、まったく売れなかったですからね(笑) ああ、そこは意図的じゃないですけどね、結果的にはそうなりましたね。 いや、それはないですね。いわゆるクラシックと呼ばれるような曲はいまでも好きで聴いてるし、最近のメジャーでキャッチーなものでも普通に楽しんで聴いてますから。そもそも、他人の作ったビートを聴いて「つまんないなぁ」とか思うこともなくて、それを聴いた途端に「自分なら、どう作るのかな……」ってことを先に考えちゃうんですね。そこで結果的に「斬新なものを作りたい」っていう欲求が生まれることはあります。いや、新しいモノを作りたいっていうよりも、自分が素直に楽しめる音を作りたいっていう気持ちが強いのかもしれないです。あとは自分がDJやるときに「こんな曲あったらいいな」っていう思いで作ってますね。 それ、最近よく言われます。怖い人かと思いましたって。 そうなんです。全然おとなしい人間なのに。 そうなんですかねぇ。 うーん、たぶん天然ですね。あんまり考えてないです。ドラムが組めれば7割方は完成だろう、っていう意識で、あとは上モノを足したり引いたりして遊びながら完成形を探す感じですね。 レコードに対しては、そんなにハード・ディガーじゃないですけどね、何でも聴いてます。そこからネタを探して作ってますけど、やっぱり曲を作るときって、最初から完成形をイメージしてないんですよ。逆に言うと、完成形のイメージがないから“どこで終了させるか”が難しい。 始まりは5年くらい前ですかね。渋谷のクラブで「BOP CITY」っていうダンサー主体のイベントがあって、そこでDJをやってたんですよ。ジャズ系のダンスイベントだったので、生っぽいジャズとかブロークンビーツとか、そっち系の音をメインにプレイしてたんですね。 そうです。でも個人的にはヒップホップが好きだったので、ヒップホップの要素が含まれていて、なおかつジャズダンサーが喜ぶような曲を探してたんですけど、理想的な曲は意外と少ないんですね。それなら自分で作ってしまおうと思って。それが最初のシングル曲“BOP CITY”ですね。 そうですね。で、当時つくってたミックスCDに、その自作の曲を入れて配ったりしてたんですけど、それをいまのレーベルの人が聴いてくれて「ウチから出しましょうよ」と。 学生時代の友人とDJやったりトラック作ったりしてましたけど、まあ、時間を見つけて少しずつやってました。 ははは、そうですよね。B面は英語の曲だったし。 ああ、なるほど。そうかもしれないですね。 それでもね、このアルバムに入ってる曲は、自分の中では全部ヒップホップなんですよ。インストも歌モノもラップもあるし、いろんなビートを使ってるけど、すべてヒップホップのつもりで作ってますよ。 そうですね。自分が「おもしろい」と思える音楽であれば問題ないと思ってますし、世間的な解釈が分かれてもいいですね。 それはたぶん、エンジニアとしての仕事が生きてるんだと思います。普段はレコーディングエンジニアとして、いろんな人の音楽に客観的に接していて、そこでは好きとか嫌いとかいう感情を捨ててますからね。その音楽から学ぶことや参考になることを見つけやすいんだと思いますよ。あと、自分はヒップホップが好きだけど、ヒップホップに対する責任感とか、そういう気持ちはあまり強くなくて、もっと広い意味でのブレイクビーツミュージックだったりダンスミュージックが好きなんですね。だから聴いた人が「これはヒップホップじゃない」と感じたとしても、罪悪感とか悲しさはないです。グレーゾーンでいることが心地よいのかもしれないですね。 かなり苦労しましたけどね(笑) まず、レーベル側から「アルバム出しましょうか」って話をもらったのが2008年の8月だったんです。その時点でシングルを2枚出してたから、合計4曲しかなかった。で、締め切りはいつですか?って訊いたら「10月だから」って言われて(笑) はい。だから頑張って残りの曲全部を2ヵ月で作りましたよ。すでに完成が近い曲が2曲くらいあったんですけど、フィーチャリングものとかは完全にゼロから作ったので、大変でした。 時間がかかったという意味ではG Rinaさんに歌ってもらった“I Cant Wait”ですね。まあ結局、締め切りを伸ばしてもらっいましたけど。 嬉しいことに、知らない人から話しかけられる機会が増えましたね。昨日も渋谷でDJやってたんですけど、このアルバムを買ってくれてた人が感想を語ってくれたり。あと友達とかがブログで紹介してくれたりして、クチコミで意外なところまで拡がっていて驚いてます。自分が行ったこともないような土地の人から突然メッセージが届いたりして。本当に嬉しいですね。