INTERVIEWS

Prins Thomas

凄く良かったよ。基本的にはステージ上でプレイするより、オーディエンスと同じ目線でプレイする方が、よりパーティに参加してる感じがして好きなんだ。
ヨーロッパだとオーディエンスはDJを観るって言うより、お互い向き合ってダンスするのが普通だから、初めて日本でプレイした時はとにかくビックリしたよ(笑)。
でも日本でプレイするって言うのは…とにかくスペシャルで毎回楽しみなんだ、音も良いしね。ただ昨晩(代官山UNIT)は、音が一方からしか出なくてね…完璧なセットでは無かったんだけど、僕にとってはクラウドとよりコミュニケートする方が大事だから、それはそれでまぁ良かったと思うよ。 お互い別々にいろいろやっているワケなんだけど…『MUSIC PLAY GROUND』とでも言うか、とにかくスケジュールさえ合えば“ジャム”するって感じだよ。
今回はサウンドをよりアコースティックにしたくて生楽器でたくさんの試みを重ねてみた。特にドラムなんかもそうだけど…お互い向き合って、実験的に何かしらの楽器を演奏する事で生まれる、1人では決して創り出せないライヴ感と言うか…感覚の『コミュニケーション』を大切にしたよ。 んんん…とっても民主的なんだけど、指揮者と演奏者の役割をシェアしてるとでも言うのかな。お互いバックグラウンドが違うから、お互いの足りない部分を補完するって感じ。得意な楽器も違って、僕はドラムかギターを、そして彼はキーボードだ。で、彼はレコーディングエンジニアで、僕はファイナルエディター。どっちかがアイデアを用意してる時なんかは、どちらかが指示に従って演奏するワケなんだけど、まぁ基本的にはとにかく即興でジャムってるんだ。もちろん最終的な作業行程の中においては、デジタルなツールを駆使してるんだけど…(苦笑)今回のレコーディングは、とんでもなく長いLIVEをしていたような感覚だったな…。MIDIを使わなかったおかげで、ピッチがアップダウンしたりしたんだけど、それがまたオーガニックで良かったりもしたよ。 そんなに違いって言う違いは無いと思うんだけど…そもそもノルウェーにシーンなんて無いし、ただ知り合い同士がワーッ!と集まってくるだけなんだ。
まぁノルウェーにはメジャーな産業も無ければ、ヒーローも居ない。ボクに「ヒーロー」は居るけど…ボクの言う「ヒーロー」って例えば『Ricardo Villalobos』みたいに常にインスピレーションを与えてくれる存在が在るってコト。
日本も外の国からインスピレーション取り入れているんだろうけど、それってNYもベルリンもノルウェーもみんな同じなんじゃ無いかと思うなぁ。敢えて何かシーンの違いが有るかと言えば、ノルウェーのアーティスト達は皆、DIY精神を強く持っていて、楽器もプレイ出来ればレコーディングも出来て、DJも全部1人でやってしまうんだ。 やぁ、アレはただ純粋に自分がやりたくてやった個人的なプロジェクトだよ。これは個人的な意見なんだけど、NEW DISCOシーンに関わる人達はとにかく視野が狭いと言うか…或る決まった特定ののスタイルしか取り入れないないんだ…誰かが『良いよ』って言わない限りは、とにかく親しみすら持たない。だからと言ってでは無いケド、とにかく僕のアイデアを何か完全に違うモノとマージしたかったんだ。とにかく僕の持つアコースティックな部分とミニマルを合わせてみたいのも有ったんだけどね。
それに彼(Ricardo Villalobos)は天才だし…僕からヒーローへのトリビュートでも有るね。かと言っても、いっつもミニマルを聴いてるってワケでも無いし…常に新しい音楽を自分の中に取り入れるって言うのも、特に重要な事でも無いと思う。まぁでも、DJプレイする時はエンターテイナーとして、古い物でも新しい物でも分け隔て無くプレイして人々を驚かせていたいな。例えば1967年くらいの音楽から何か良いモノを掘り出して、最新のミニマルと合わせてみるって言うのも面白いと思うんだ。 インスピレーションを与えてくれるのは家族だね。5歳と14歳の息子が居るよ。しかも上の子は僕より身長が高いんだ(苦笑)。2人とも音楽は好きなんだけど…上の子は僕の全てに反抗的で…(笑)とにかく僕が嫌いな物を彼は好きになりたいんだ。一時、彼がトランスにハマっててね、僕が言ったんだ『そんなのSHITだ!!』てね。そしたら彼は『YES!!』と言って喜んでたよ(苦笑)。また或る時は、彼が『AC/DCって良いよね』て言うもんだから、僕は『AC/DC良いよね、僕もアルバムをいっぱい持ってるよ』て言ったら、酷く悔しがってたね(大笑)。で、下の子はとてもナイーブでね…『パパがいちばんカッコ良いよ!!』なんて言ってくれるんだ。
…で、何に影響されてるか?って話なんだけど…E-mailをチェックして…電話して…スタジオに行って作業して…そんな規則的な毎日を過ごしてるんだけど…やっぱり時々、子供とLEGOで遊んでると凄くインスパイアされるよ(笑)。ただ空を見ているだけの時も良いよね…。ひたすらスタジオに居るだけでインスピレーションなんてまず涌いてこないケド…レコーディングの繰り返しで何か予期せぬ産物に出会うと強くインスパイアされるね。 まぁ…良くもあるし悪くもあるね。ビジネスで考えると悪いんだけど、クリエイティヴィティで考えればとても良い時期なんだと思うな。或る事が下へ下へ落ち込んで行くと、お金はそんなに生み出せないから…結局、最後に残るのは、本当の情熱を持った人だけだってコトに辿り着くんだ。まぁボクの情熱の大半はDJをするコトなんだけどね。
 ノルウェーでは、90年代の半ばから後半にかけて、同じような出来事が在ったよ。当時、多くのDJやクラブは所謂HOUSEミュージックでメイクマネーしてたんだけど、或る日、突然レコードのセールスが落ち込んで行ってね…みんな普通の仕事をするようになってしまったんだ。
ボクは当時DJすることを止め、クリエイティヴな事に焦点を当てた事で、より(音楽)制作に向き合うようになったんだ…同業者の多くは同じ道を選んでたようだね。きっと日本はシーンが大きく成り過ぎたんだよ…バブルはいつかは崩壊するものだしね。何事も落ちるとこまで落ちたら、必ずまた上がって行くものだって信じてるよ。
 世界でデジタルが進化して、多くの人達が当然の様にデジタルを駆使するワケで…その中で『ヴァイナルは無くなる』って言う人達もたくさん居る。でも考え方を変えれば…うんと若い世代にしてみれば見慣れたデジタルよりも、『ヴァイナル』は新しいフォーマットなのかもしれないよ。でもまぁ、レーベルは儲からないケド、ボクは稼いだお金をレーベルにしっかりと注ぎ込んでるよ。未来なんて想像したくないけど、やっぱりボクはヴァイナルが好きなんだ。もしヴァイナルが作られない時代がやって来たら、適応してかないといけないんだろうから…CDでも作るよ(小笑)。そもそもラップトップなんて良く解んないし…お酒を呑みながらDJするのが好きだからね。さすがにベロベロでラップトップでプレイするのもどうかと思うよ(笑)。ヴァイナルでE-mailのチェックなんて出来ないし、ウィルスに感染するなんて有り得ないだろうしね(大笑)。 特にって言うのは無いんだけど、日本のレコードショップは好きだよ。旅先でレコードをディグするのって楽しみの1つだしね。世界各地には良質の音楽が安価でゴロゴロ転がってるよ。あぁぁ…そう言えば『CITY COUNTRY CITY』(下北沢)は凄く良いショップだったな。中古がメインでJAZZとか80's HOUSEなんかが良かったかな。高中正義の『STAR WARS SAMBA』(1978)が入ってるアルバムを捜してたんだけど、やっと見つけたんだ…数百円でね!!(笑)しかも昨晩(代官山UNIT)でもプレイしたよ。 …んんん…たくさん在るな…。いつも入れ替えてはいるんだけどBARBARA STREISANDの『NEVER GIVE UP』は必ず入ってるよ。ただ、入れておきたい曲があまりにも在り過ぎるから、CDに落として持ち歩いてるよ。内容的に必ずしもダンストラックだけじゃ無くて、もはやクラシックと言われるポップソングだったりもするね。パーティの終盤は、まだまだ全然帰らない感じの人達が居るって解ってるから、凄くパーソナルで特別なトラックをプレイするんだ。確か『YELLOW』でプレイした時は朝10時までやっていたよね。『PANORAMA BAR』なんかは日曜のお昼頃が最もマジックな時間で…夕方からスペシャルタイムが始まるんだ。あぁ…夕方の3時から6時なんかは特にね。中には土曜の夜から残ってる人もいるんだよ。 今はそれなりに高額なヴァイナルも買えるようにはなったケド…ノルウェーだけでDJしてた時代はホントお金が無くて全然買えなかったね…。今は『DJ』が仕事ってワケだから、投資だと思ってるよ。時々、日本円で数千円ぐらいのヴァイナルを手に入れた時、ワイフには『これで家族を食わせてるんだから、投資だよね』て堂々と言える(笑)。そう言えばこの前ネットで"ACHIM REICHEL"の捜してたアルバムをやっと見つけてね…100ユーロぐらいしたんだけど、迷わず買ったよクレジットで!!(笑)
いやしかし、ネットショッピングだけに頼ってるDJも良く無いよ。僕にしてみれば、ヴァイナルはまず『ジャケット』。ジャケットが気になれば、裏面のクレジットとか読んで…まぁ買って帰って『ガッカリ!』みたいのもたくさん在るケド(苦笑)。そうやって音楽を学ぶんだ。ネットで売ってる時みたいに、他人の評価でヴァイナルを買うんでは無くて、自分の耳でディグしないと。で、僕はかなり枚数の多いウォントリストを持ってディグしてるんだけど、どれもまぁ、そんなには急いでないな。だいたいはクラブでプレイするような曲じゃなくて、リスニング用として刺激が有るものが良いんだけど…ロッド・スチュワートが居た『SMALL FACES』に"Ronnie Lane"て言う人が居るんだけど、彼の作品は全部良いよ。世間で言う『トラディッショナル・フォーク』てやつだ。どれも本当に素晴らしいんだけど、全てを持っている必要性も特に感じてないよ。
ヴァイナルは例えるとダイヤみたいな感じで…常に探し求めてるんだけど、そのお宝を発掘する過程にはたくさんのゴールドを見つけるんだ。時々だけど、手に入れた後になって実は特別じゃ無かったんだって気が付く事も有るね(苦笑)。 しっかりとしたスケジュールは特に無いな…僕がボスだから特に〆切なんて無いしね(笑)。まぁ、まずは12”で今回のアルバムに入ってる曲のリミックスか何かをリリースするよ。それとLINDSTROMとNEW ALBUMを今年中に作るよ。あと…ソロアルバムに…シークレットでMIX CDとコンピを作ってるかな。僕のレーベル(Internasjonal)からリミックスとか色々リリースもする。
そうだ、"THE MOLE"と一緒にアルバムを作ってるよ。THE MOLE & Prins Thomas= 『UGLY BABY』て言うユニットなんだけど…リリースはいつになるかな…?それとDJの仕事もたくさん有って、とにかく忙しいよ。おかげで重要なプロジェクトもすっかり忘れてたりね…でも『あ、そうだコレも有ったんだ!』みたいな感じが好きだったりもするね(笑)。